エボラ出血熱は、西アフリカ、特にギニア、リベリア、シエラレオネで猛威を振るっており、収束への兆しは一部見られるものの、封じ込めには程遠い状況となっています。世界銀行グループは10月に発表した報告書の中で、最も深刻な影響を受けている3カ国で感染が広がり続け、近隣諸国にも波及すれば、経済的損失は2年間の累積額で2015年末までに326億ドルに達するだろうと指摘しています。
世界銀行グループは、今回の危機で最も深刻な影響を受けている国々に対して約10億ドルの緊急支援パッケージの動員を決めており、これまでに国連機関をはじめとするパートナーとともに、感染を封じ込めるため、患者の治療・介護、現地コミュニティを主体とした感染者の発見、隔離や安全な埋葬、感染拡大に伴って閉鎖された基礎的保健医療サービスの再開、それらを支える医療従事者の派遣と防護服や治療器具の配布、エボラその他の感染症の再流行を防止するための公衆衛生システムの改善などの支援を行っています。また、世界銀行は、今後起こりうる感染症の流行に迅速に対応するための新しい枠組みの設立を検討しています。
このたび、世界銀行のエボラ対策緊急支援のチームリーダーを務める馬渕俊介・世界銀行上級保健専門官より、世界銀行によるエボラ出血熱対策支援についてご紹介しました。当セミナーでは、エボラ出血熱の封じ込めに向けた課題から、その対策の変遷、世界銀行の支援についてお話しするとともに、世銀では最大規模のチームをまとめて緊急投資を実現した際に心がけたことなど、国際チームで日本人が働く際の働き方、技術についても、杉下智彦 国際協力機構(JICA)国際協力専門員保健分野課題アドバイザー、参加者を交えて議論しました。
スピーカー
馬渕俊介
世界銀行上級保健専門官
国際協力機構(JICA)、エチオピア財務省/USAIDアドバイザー、国連開発計画 BOPビジネスアドバイザー(インドネシア)、マッキンゼー・アンド・カンパニー(日本、南アフリカ)マネージャーを経て世界銀行入行。マッキンゼーで得た民間経営のノウハウを活かしてナイジェリア、リベリアの保健医療システムの改革に従事。現在はギニア、リベリア、シエラレオネの3カ国に対する世界銀行のエボラ出血熱緊急対策支援のチームリーダーとして、感染症の封じ込めに向けた活動を展開中。東京大学教養学部卒業(文化人類学)。ハーバードケネディ行政大学院にて公共政策修士(学長賞受賞)、ジョンズホプキンス大学にて公衆衛生修士(上位5% ソマー奨学生、Student Recognition Award)取得。ジョンズホプキンス大学博士課程在籍中。
コメンテーター
杉下智彦 国際協力機構(JICA)国際協力専門員保健分野課題アドバイザー