プレスリリース 2018年4月20日

環境・社会・ガバナンス(ESG)が債券投資家にとって重要なリスク要素に - 世界銀行グループ・GPIF報告書

―持続可能な投資の促進に向けた共同研究―

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と世界銀行グループは昨年10月、持続可能な投資の促進に向けて提携することで合意しました。最初の取り組みとして、債券投資における環境・社会・ガバナンス(ESG)の考慮について共同研究を進めてまいりましたが、このたび世界銀行グループの春季会合において報告書が発表されましたのでお知らせします。

世界銀行グループとGPIFによる新たな報告書は、ESGの要素を債券投資の運用プロセスに統合することが、リスク管理の強化につながり、より安定した投資リターンに貢献し得ると指摘しています。

同報告書は、一部の投資家では、ESGを債券リスク分析の一部としてみるだけでなく、ESGと「インパクト」投資を統合させる動きもみられるとしています。その方法としては、例えば、債券などのポートフォリオが環境や社会にもたらすインパクトを測定し、さらに進んで国際連合の「持続可能な開発目標」(SDGs)と関連づける手法などが挙げられています。

債券市場におけるESGの考慮については、こうした前向きな動きがみられる一方で大きな制約もあり、一層の普及を妨げています。ESGの標準的な定義がまだ確立されておらず、特に「社会」(S)の分野に関しては様々な見解があります。データについては、精度が高まりつつあり、情報源も多様になっているものの、新興国市場を中心にまだ十分とはいえません。このほか、債券の発行体(特に国債の発行体である政府)とのエンゲージメント(建設的な対話)の推進が株式と比べて難しい、信用格付や債券指数においてESGが果たす役割が不明瞭、ESGに焦点を絞った債券投資商品の不足といった課題もあります。

本報告書は、世界銀行、及び世界銀行グループの機関で途上国の民間セクタ―支援を行う国際金融公社(IFC)と共に作成され、債券ポートフォリオ全般でESG投資を促進するための実務的な提言を行っています。例えば、ESGの要素が債券投資に与える影響についてのより一層の研究、投資家が自身の取り組みをカスタマイズする際の原則や基準についてのさらなる検討などです。また、グリーンボンドやその他、目的を特定した債券市場に関しては、供給より需要が多いという問題があります。債券による持続可能な投資に対する需要の高まりに見合う、より革新的な投資商品の開発が求められています。

報告書は先行研究を踏まえたうえで、世界の30以上の主要な投資家やESGデータ提供会社、格付け機関などにインタビューを実施し、2018年4月3日に世界銀行グループとGPIFがワシントンで共催したワークショップでのフィードバックをまとめたものです。

GPIFと世界銀行グループは、様々な資産クラスでの投資決定にESGを考慮する取り組みの推進で連携しており、本報告書の作成はその一環です。

GPIF  髙橋則広理事長コメント
「GPIFはこのたびの共同研究における世界銀行グループの知見と貢献に感謝します。GPIFは昨年10月に投資原則を改定し、すべての資産クラスにおいてESGを考慮することで、被保険者のために中長期的な投資収益の拡大を図ると表明しています。今回の共同研究の成果も踏まえ、GPIFは債券投資におけるESGの考慮について、引き続き取り組みを検討してまいります。この研究成果が、他の機関投資家や研究機関などに広く活用されることを願っております。」

世界銀行グループ ジム・ヨン・キム総裁コメント
「持続可能な開発目標(SDGs)の達成には年間約4兆ドルが必要と見込まれますが、政府開発援助(ODA)だけでは毎年1,400億ドルにしかなりません。目標達成には、民間セクター、特に機関投資家の力がぜひとも必要です。GPIFは独自の戦略を駆使して、環境・社会・ガバナンスを投資活動へ織り込む道を切り開いており、民間セクターによる途上国への投資を模索する我々の大変重要なパートナーです。ESGを投資活動へ織り込むことは、より高いリターンを確保しつつ、途上国に必要な資金を提供でき、世界の貧困削減を達成するための賢明な方法であるということを他の投資家に強く示しています。」

以上


世界銀行グループ・GPIF 共同研究報告書「債券投資への環境・社会・ガバナンス(ESG)要素の統合」

エグゼクティブ・サマリー和訳

環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素が、債券投資家にとって重要な信用リスクであることを多くの研究が示している。また、その実証結果は、ESGの統合が経済的な利益の犠牲につながるとの見解を否定し、むしろより安定した経済的な利益を得るために、包括的な信用リスク分析の一部として債券投資にESGを統合すべきことを示唆している。ESG投資は、グリーンボンドに限定された特別・特殊な活動ではなく、債券投資家にとっての一般的な投資プロセスとなりつつある。

債券投資へのESGの統合には特有の課題もあるが、株式投資での例に急速に追いつきつつあり、特に社債と国際機関債において著しい。ただし、国債、資産担保証券、私募債においては、まだ課題が多いのも現状である。また、一部の投資家では、ESGをリスクとリターンの側面としてみるだけでなく、ESGと「インパクト」投資を統合させる動きもみられる。その方法としては、ポートフォリオが環境や社会における特定の事象に与えるインパクトを測定し、さらに進んで国際連合の「持続可能な開発目標」(SDGs)と関連づける手法などが挙げられる。

機関投資家がESGを実践する際には、様々な手法がある。例えば、基準を満たすグリーンボンド、ソーシャルボンド、サステイナブルボンドの購入、ESGや社会的責任投資(SRI)のファンド設定やそうしたファンドへの投資、ESG指数に追随する投資、ESGのアクティブ運用マネジャーの採用、投資プロセス全体へのESGの統合などが挙げられる。これらの実現にあたっては、ESGに関連した様々なサービスを提供する事業者の手法にそのまま従う場合もあれば、機関投資家の独自の哲学や目標に沿ってカスタマイズする場合もある。

依然として、多くの投資家にとってESGの実践にはまだ課題があり、特に債券投資ではなおさらである。ESGについてはまだ標準的な定義が確立されておらず、特に「社会」(S)の分野に関しては様々な見解がある。データについては、精度が高まりつつあり、情報源も多様になっているものの、新興国市場を中心にまだ十分とはいえない。特に、債券については、発行体(特に国債の発行体である政府)とのエンゲージメント(建設的な対話)の推進が難しい、信用格付や債券指数においてESGが果たす役割が不明瞭、株式と比べて乏しい債券指数の選択肢、特定のESGに焦点を絞った投資商品の不足といった課題もある。また、グリーンボンド市場に関しては、供給に対する需要過多の問題もある。さらに、ESGと債券に関する概念的な分析は、信用リスクにとどまらず、流動性リスクやその他の市場リスクとESGとの関連にまで展開することが望まれる。

ESG投資は、その過程を重視するものから、その結果を重視するものへと発展しつつある。今後に向けては、まず、ESGデータをより幅広くかつ深堀りする努力を継続すべきであり、ESG要素が債券投資に与える影響についてのより一層の研究が求められる。また、投資家が自身の取り組みをカスタマイズするためには、ESGの適用とインパクト投資における原則や基準についてさらに検討する余地がある。最後に、債券による持続可能な投資に対する需要の高まりに見合う、より革新的な投資商品も求められている。


共同研究報告書「債券投資への環境・社会・ガバナンス(ESG)要素の統合」へのリンクはこちら(英語):http://www.worldbank.org/en/news/feature/2018/04/19/incorporating-environment-social-and-governance-esg-factors-into-fixed-income-investment


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