特集

大規模災害から学ぶ:東日本大震災からの教訓

2012年10月2日

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概要

東日本大震災からの教訓を世界へ発信する日本政府との共同研究プロジェクトの第一段階の成果として、32件の教訓ノートが作成されました。
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目次

 

  1. 構造物対策

    1-1: 構造物による津波対策 1-2: 建築物への影響 1-3: 津波と地震に関連する水害 1-4: 多目的施設 1-5: 重要施設防御

  2. 非構造物対策

    2-1: コミュニティ防災 2-2: 防災計画 2-3: 教育分野 2-4: 事業継続計画 
    2-5: 津波・地震警報 2-6: 避難 2-7: 都市計画、土地利用規制、移転 
    2-8: 海岸林と沿岸防災

  3. 緊急対応

    3-1: 専門家チーム、NGO、NPOとボランティアによる支援と調整  
    3-2: 災害時通信  3-3: 緊急物資輸送 3-4: 自治体支援  3-5: 避難所運営
    3-6: 災害弱者支援

  4. 復興計画

    4-1: インフラ施設復旧  4-2: 復興政策・計画 4-3: 仮設住宅 
    4-4: がれき処理  4-5: 生計と雇用の創出

  5. ハザードマップ、リスク情報と意思決定

    5-1: リスク評価とハザードマップ  5-2: リスク・被害情報管理 
    5-3: リスクコミュニケーション

  6. 災害・防災の経済、財政

    6-1: 災害リスク管理の費用対効果 6-2: 地震保険 6-3: 経済への影響 
    6-4: 財政への影響 6-5: 低頻度・巨大災害への防災戦略



1. 構造物対策

1-1: 構造物による津波対策

堤防などの構造物は、津波、洪水、土砂災害等の防災に重要な役割を果たす。しかし、構造物は災害が設計レベルを上回ると機能を発揮できないため、構造物のみではすべての規模の災害を防止することはできない。東日本大震災では、構造物対策に過度に依存してきた日本の防災体制の限界が露呈した。今後は構造物と非構造物対策から成り、住民の安全な避難を確保する多重防御によって被害を抑える減災アプローチが求められる。
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1-2: 建築物への影響

2011年3月の東日本大震災の強力な本震でも、振動による建築物への被害は限定的であった。現行の建築基準に従い設計された建築物や免震建物は、良好な挙動を示した。一方、建物の構造体ではない非構造部材の振動対策は十分ではなく、天井板の崩落などの問題が発生した。東京湾沿岸の埋め立て地や河川沿いでは液状化が発生した。東日本大震災の主な教訓として、耐震設計により建物被害を減らして死傷者の軽減が図れる、耐震性能の低い古い建物の耐震補強は被害の軽減に不可欠である、建築物の非構造部材が深刻な被害を引き起こすことがある、免震構造は有効に機能した、などである。以上の教訓を途上国に適用する場合には、国ごとの技術的・社会経済的条件を考慮に入れる必要がある。
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1-3: 津波と地震に関連する水害

地震や津波は、水害のリスクを増大させる。東日本大震災後、海岸・河川の堤防等の構造物は迅速に復旧された。段階的な工事を行うことで、頻発する洪水や高潮から防御し、同時に巨大災害からの防御という長期的な目標を達成しようとしている。また、水害からの防御水準の低下を迅速に評価し、復旧の優先地域の特定、警報発令基準の見直し、水害リスクの増大についての啓発を行った。
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1-4: 多目的施設

公共施設やインフラ施設は災害のリスクを軽減する防災施設として機能する。東日本大震災では道路、高速道路、その他の公共施設は、浸水を防ぎ、また避難経路や緊急対応の拠点として機能し、被害軽減に役立った。防災機関や公共部門の機関は公共施設ができる限り多目的な機能を果たせるよう調整を図るべきである。 また、費用配分の仕組みを確立し、財政負担を明確にする必要がある。
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1-5: 重要施設防御

東日本大震災は複合的な被害を伴う災害となった。巨大地震が引き金となり、未曾有の規模の津波、さらに原子力事故が発生した。重要施設は、発生確率が低くても複合的となる災害から防御される必要がある。ひとたび災害が発生すると、被害が波及し人的・社会経済・環境など、取り返しのつかない影響を及ぼす恐れが ある。
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2. 非構造物対策

2-1: コミュニティ防災

地域社会(コミュニティ)は東日本大震災のような災害に備える上で重要な役割を果たし、災害が発生すれば、通常、真っ先に対応することになる。2011年3 月11日、地域社会に根ざす住民組織は積極的に災害に対処し、数え切れないほどの人命を救った。このような住民組織の役割を政府や地方自治体が認識し、支援することが、地域社会の防災力を強化する上で鍵を握る。
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2-2: 防災計画

日本の防災体制は、災害予防、事前準備、緊急対応、さらに復旧・復興のすべての段階に対応している。国と地方自治体の役割と責任が明らかにされ、公共部門と 民間部門の両方の関係者の関与を定めている。日本は災害により被災した経験を活かして、国そして地方自治体レベルでの防災計画を繰り返し改定してきた。東 日本大震災では、複合かつ巨大災害に対して、防災計画の弱点が明らかになった。政府と自治体はこのたびの震災の教訓を踏えて今、防災計画の見直しを始めて いる。
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2-3: 教育分野

東日本大震災では教育分野も甚大な被害を受けたが、同時に人命を守る上で大きな役割も果たした。「ハード」と「ソフト」双方で市民を守ったのである。すなわち、学校が避難所や仮設住宅として機能し、生徒は普段の授業にて災害にどう備え、どう対応するかを学んでいた。ここに、教育分野のハード面とソフト面の双 方の機能について重要な教訓を得ることができる。
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2-4: 事業継続計画

事業継続計画(BCP)は、災害時に企業の重要業務の中断により起こりうる影響を特定し、効果的な応急対応と早急な復旧対策を示すものである。東日本大震災では、BCPが一定の効果を発揮する一方、弱点も明らかとなっている。BCPは重要業務の継続を促し業務全般の復旧に役立ったが、多くの中小企業は残念な がらBCPを作成していなかった。民間企業は雇用創出と地域経済に大きな役割を果たすため、民間企業の災害対応力の強化に向け、政府と連携したBCPの更 なる普及促進が求められる。
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2-5: 津波・地震警報

警報システムによって津波など自然災害による被害を軽減し、人命および財産の損失を防ぐことができる。正確な情報をすばやく伝えられれば、高台へ避難した り、列車を停止させたりといった対策を取ることができる。ただし、警報システムは地域社会の対応に役立つものでなければならない。日本は世界一高度な津波 警報システムを開発してきたにもかかわらず、3月11日の警報では津波が過小評価され、避難行動が鈍り被害を拡大させた可能性もある。
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2-6: 避難

地域社会の避難対策は災害リスク管理の中心に据えられるべきである。歴史的に三陸地域は頻繁に津波に見舞われてきたため、地域社会は記念碑の建立や避難訓練 や啓発活動などにより、世代を超えてその知識を伝えてきた。それにもかかわらず、2011年3月の震災では巨大津波により約2万人が死亡・行方不明となった。警報やハザードマップによる津波の過小評価、人々の津波への認識不足など様々な要因が犠牲者数を増大させた。福島第一原子力発電所事故への対応については、政府、地方自治体も電力会社も事故へ適切に備えてこなかったため、避難に混乱を招いた。
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2-7: 都市計画、土地利用規制、移転

復興には、震災の経験に基づいた防災施設、避難施設、高台移転など、災害に強い社会づくりに向けて数々の対策が盛り込まれるべきである。しかし、将来の津波 が前回よりさらに大きい可能性もあるため、地域社会はこれらの対策のうちどれかひとつに頼りすぎてはならない。また、住民が転出しないよう産業を復興させ、雇用を創出する必要がある。課題は、高さと広さが十分にある移転用地を見つけること、そして低地での土地利用を規制することである。
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2-8: 海岸林と沿岸防災

日本は400年以上にもわたり、潮害、飛砂、風害、高潮、津波などの沿岸災害を軽減するため海岸林(グリーンベルト)を造成してきた。海岸林は3月11日の 津波で甚大な被害を受けたが、津波の影響を緩和し、漂流しているがれきを捕らえ住宅を保護する効果があった。地方自治体は津波対策として海岸林の復元を計画中である。海岸林は地域社会が伝統的に維持管理してきたが、地域の経済発展や都市化による社会変化に伴い、その役割が弱まってきた。
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3. 緊急対応

3-1: 専門家チーム、NGO、NPOとボランティアによる支援と調整

東日本大震災の際、国内・国際ネットワークを通じて官民を問わず多くの組織が支援活動を実施し、様々な緊急チームが動員された。このたびの経験から、防災に おける市民社会組織の役割が重要不可欠であることが、改めて明らかになった。これらの組織は、持ち前の柔軟性を活かし、被災地域に迅速に援助の手をさしのべることができる。しかし、現地には調整機能が存在していなかった。災害対応の複雑さと関係者の多さを考慮すれば、平時にあらかじめ調整機能を整備してお くことが大切である。
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3-2: 災害時通信

東日本大震災では固定回線190万回線が利用できず、29,000カ所の携帯電話基地局が機能を停止するなど電話の通信インフラが多大な損害を被り、また、通信の輻輳が引き起こされた。同様に、防災行政無線にも重大な被害が生じた。初期対応では、家族や親族の安否確認に災害用伝言サービスが多用され、衛星電話が災害時における通信に重要な役割を担うこととなった。捜索・救援活動や義援金の募集では、ソーシャルメディアが大規模に使われた。
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3-3: 緊急物資輸送

東日本大震災では、県および市町村単位の集積所を介して救援物資が供給された。現場では、燃料の欠乏、通信の途絶、需給の不一致など複数の問題があり、物資 が集積所に滞留し必要とする人々の手元に届くのが遅れることとなった。事前に集積所施設を調査する、あらかじめ必要となる緊急物資の量を推定しておく、民間の物流専門家の支援を得る、被災していない地域で物流情報を管理するなど、いくつかの対策が考えられる。
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3-4: 自治体支援

大規模災害では地方自治体の庁舎が損壊し、職員も犠牲となる場合がある。東日本大震災では多くの自治体が庁舎に甚大な損害を被り、多数の職員を失ったため、 その後の災害対応に支障が生じた。それらの被災自治体を支援するため、被災自治体と被災していない自治体との間で様々な連携が生まれた。こういった自治体間の連携を制度化し、災害に対応する機能を構築することは、先進国と途上国のいずれにとっても円滑な災害対応を行うために重要である。
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3-5: 避難所運営

大規模災害が発生すると、膨大な人数の被災者が長期にわたって避難所で生活せざるを得なくなる。本項では、東日本大震災の際の避難所運営について解説してい る。物資やサービスの欠乏、被災者自身が導入した自発的な運営、自治体の用いた優れた運営手法、特殊なニーズを持つ多様な被災者たちの受け入れに求められる配慮など、運営上重要な課題について述べる。
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3-6: 災害弱者支援

あらゆる災害の例に漏れず、東日本大震災でも特定の社会集団は、より深刻な影響を受けた。例えば、死者の3分の2は60歳以上の高齢者であった。緊急対応において、ジェンダー問題も含めて既存の不平等性が表面化してしまったといえる。子ども、高齢者あるいは障害者はそれぞれ特殊なニーズを持つが、適切に応えられたとは言いがたい。より効果的・効率的な復興を促すためには、「災害弱者」が防災の立案や実施に関わる仕組みが必要である。こうした取り組みを通じて長期的に持続可能な災害に強い地域社会がつくられる。
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4. 復興計画

4-1: インフラ施設復旧

迅速かつ効果的な災害対応および復旧には、社会インフラおよびライフライン施設は不可欠である。東日本大震災ではインフラ施設の耐震補強を着実に実施してき たため被害が限定的であり、こうした施設の復旧に要する労力が大幅に削減された。さらに、復旧を優先すべきインフラ施設の特定、災害復旧の財源確保、事前の民間との災害協定により、迅速な復旧が可能となった。
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4-2: 復興政策・計画

東日本大震災による未曾有の被害は各地に影響を及ぼし、政府、地方自治体に様々な重要な課題をもたらした。政府は復興構想会議の助言を受け、迅速に行動し、4カ月以内に復旧・復興の包括的プロセスの土台となる基本方針や法律を公表した。本稿では、被災住民、専門家、ボランティアおよび民間団体が積極的に参加し、それぞれの行政レベルにおいて実施されている双方向の復興計画づくりについて説明する。
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4-3: 仮設住宅

仮設住宅は大規模災害後の住宅再建で重要な役割を果たす。恒久住宅の再建は、移転計画やがれき撤去など多数の複雑な問題が解決するまで始めることができない。計画が合意され復興が始まっても、恒久住宅の建設が完了するには数年かかることもある。このため、仮設住宅に被災者は長期間にわたり住むこととなり、住まいのみならず生計手段の復旧も含め復興全体に大きな影響を与えることになる。
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4-4: がれき処理

東日本大震災により約2,000万トンの災害廃棄物が発生した。岩手県では通常年の廃棄物の11倍、宮城県では19倍に相当する。廃棄物は、リサイクルも検討しつつ、その種類に応じて適切な処理や処分が決められる。行政は事前に廃棄物の仮置場や運搬経路を指定することで災害に備えるべきである。日本では、津波から発生する災害廃棄物の量を推定する方法と、それを処理する適切な施策を盛り込むため、従来の廃棄物処理計画の見直しを進めている。
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4-5: 生計と雇用の創出

生計と雇用の創出は、災害後の復興において常に重要な課題である。東日本大震災では、日本政府は先進的なキャッシュ・フォー・ワーク(CFW)プログラムを開始し、31,700人以上の失業者を雇用し、復興のみならず事務作業に被災者を従事させた。その結果、肉体労働中心のこれまでの支援プログラムでは対象外となっていた、女性、高齢者、災害弱者にも支援の手を差し伸べることができた。
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5. ハザードマップ、リスク情報と意思決定

5-1: リスク評価とハザードマップ

災害リスクを管理するにあたっては、まずは起こりうる災害とリスクを評価することが重要であり、これは災害対策を検討する基礎情報となる。地震や津波の災害評価には、常に限界と不確実性があることを認識しつつ、考えうる限りの規模の災害と最悪のシナリオを想定しなければならない。日本では、災害情報と避難経路や避難所を記載したハザードマップが、避難手順とリスクへの認識を住民たちに浸透させる有効な手段となっている。しかし、東日本大震災では、事前につくられていたハザードマップは、実際より小さな災害を対象にしていたことで、住民に誤った安心感を与えてしまった可能性がある。ハザードマップはどんな災害に対しても迅速な避難を促すよう作成されなければならない。そして、分かりやすく、すぐに使えるものとすべきである。
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5-2: リスク・被害情報管理

日本では、市町村は洪水、高潮、火山噴火、津波、内水、土砂災害に備えてハザードマップを作成している。被災後は、衛星画像や航空写真を組み合わせることにより、被害をかなり正確に評価することが可能である。2011年3月の震災では、被災についての包括的なデータを使って被害評価を迅速に進め、補償金や保険金の支払いに必要な時間が短縮できた。
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5-3: リスクコミュニケーション

リスクコミュニケーションは、災害リスクを管理するために重要である。災害のリスクについてコミュニケーションをとることで人々はリスクの内容や大きさを理解し、災害への備えと災害発生時の対応の行動を決めることになる。また防災サイクルの一連の対策にも影響する。情報源の信頼性は長い時間をかけて築いてお かねばならない。福島第一原子力発電所の事故対応では、政府などの公的なコミュニケーションの信頼度は著しく低下した。
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6. 災害・防災の経済、財政

6-1: 災害リスク管理の費用対効果

災害リスク管理への投資は対策を誤りさえしなければ費用に見合う成果を挙げられると、日本の経験は示している。1960年代に、日本政府は国家予算の 7~8%を防災に振り向け、これは災害による死者の低減に大きく寄与したと考えられる。日本では、国と自治体のそれぞれのレベルで、防災事業の効率性を検討するため費用便益分析が広く実施されてきた。分析にあたっては、事業の形式、種類、行政機関ごとに異なった手順が用いられている。日本での経験は、費用便益分析が防災事業に適用可能であり、様々な選択肢の取捨選択と事業の有効性を評価するのに効果的な手段であると示している。
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6-2: 地震保険

2011年3月に日本の東北地方を襲った地震は世界の記録史上4番目の大きさで、多くの人的損害をもたらし経済的にも大打撃を引き起こした。被害は16兆9,000億円と推定されており、史上もっとも被害額の大きい災害となった。それでも、民間の損害保険会社は重大な損失を被ることなく立ち直ると予想されている。これは、ひとえに(保険契約の構成と再保険によって)保険責任が慎重に規定されており、(民間の損害保険会社と共済組合の)二種類からなる地震損害補償制度が充分に発達しているためである。しかし、日本の住宅の過半数は依然として無保険であり、地震が起きれば政府に大きな財政負担をかける可能性が ある。
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6-3: 経済への影響

東日本大震災の後、日本政府は迅速に市場を安定させ、速やかな復興に努めてきた。その後、膨大な復興需要に支えられ、経済状況は好転しつつある。しかし、電力供給の構造の再編と国内外の経済状況の不安定要素は、依然払拭されてはいない。2011年は震災とタイの大洪水により、グローバルサプライチェーン(供給網)に大きな問題が生じた年として記録に留められることとなろう。ネットワーク化された生産システムに重要な役割を果たす途上国も、国際協力の推進により、レジリエントな(復元力に富んだ)サプライチェーンを構築する責任を負う。
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6-4: 財政への影響

東日本大震災が日本を襲った時、経済はリーマンショックの影響から立ち直る途上で、また、財政は高齢化など構造的な問題を抱えるという厳しい状況にあった。 災害への緊急対応、復興には膨大な財政資金が必要となり、日本は財政運営上、極めて困難な課題を背負うこととなった。政府は国主導の対応を宣言し、速やかな財政出動を行ったものの、国債発行と増税による復興財源については長期的な観点から課題が残った。ここでは震災の財政資金と復興財源について財政運営の観点から検証する。さらに、教訓とそれに基づく途上国への提言を抽出する。
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6-5: 低頻度・巨大災害への防災戦略

すべての国が自国だけでなく全世界の経験を蓄積し反映した低頻度・巨大災害への戦略を策定すべきである。こうした戦略は、構造物対策と非構造物対策を統合し、地域の状況に応じて適用することとなる。予報と警報、土地利用の計画と規制、ハザードマップ、教育および避難訓練はいずれも重要である。東日本大震災を含め、日本が多くの自然災害を経験する中で、試行錯誤により獲得してきた教訓は、こうした構造物・非構造物対策を改善するのに役立てることができる。国際社会は、各国が低頻度で巨大な災害に備えるため、知識を共有する機能を開発すべきである。
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