Factsheet2025年6月5日

国際貧困ライン2025年6月の改定

世界銀行は2025年6月に国際貧困ラインを改定しました。この決定は、国際比較プログラム(ICP)による2024年5月の新しい購買力平価(PPP)の発表を受けたものです。PPPは、国による物価水準の違いを考慮し、異なる通貨を比較可能な共通の単位に換算するために使われる主要なデータです。今回の更新により、1日1人あたり3ドルの新たな国際貧困ラインが設定され、2017年のPPPにもとづく1日1人あたり2.15ドルのラインが置き換えられました。以下のQ&Aでは、国際貧困ラインの改定とその影響について情報を提供しています。詳細は、2025年6月の新着情報をご覧ください。

世界銀行は1990年以来、世界中で極度の貧困状態にある人々の数を推定し発表してきました。貧困の基準は、世界の最貧困国が貧困を定義する方法に基づいており、通常は衣食住といった基本的ニーズが満たされているかどうかで判断されます。こうした推定値はまた、持続可能な開発目標やそれ以前のミレニアム開発目標でも使われています。

世界銀行は極度の貧困を測定する国際貧困ラインに加え、いくつかの指標を用いて、世界各国の所得と消費の分布についてより詳細な説明を提供しています。極度の貧困ラインは、最貧困国が貧困を定義する方法に基づいていますが、これは中所得国に直接当てはまるものではありません。そこで世界銀行は、低所得国と高中所得国にそれぞれ当てはまるより高い貧困ラインも使用しています。さらに世界銀行は社会的貧困指標による測定も行い、結果を発表しています。これは、貧困のより相対的概念を反映したもので、国の所得水準に応じて改定されます。最後に、所得や消費等の金銭面以外の指標で貧困を測定する多次元貧困基準も導入しています。

これらの国際貧困指標は、世界銀行や国連、その他の開発パートナーが設定した各種グローバル目標の進展状況を追跡するために用いられています。また、国同士の比較やベンチマーキングにも有効です。ただし、それぞれに制約があることにも留意することが重要です。例えば、ある国の貧困レベルや貧困動向を評価する際には、その国の国別貧困ラインを用いるのが適切です。同様に、国別貧困ラインは、特定の状況における貧困の様相を捉えているため、政策対話や最貧困層向けプログラムの立案において有用な根拠になるはずです。

世界中の価格水準の差が変化するにつれ、世界銀行の貧困ラインはこれらの変化を反映するために定期的に更新されています。国際貧困ライン(および下位中間所得国と上位中間所得国のライン)は、世界の経済の購買力平価(PPP)を算出するために比較価格データを収集する国際比較プログラム(ICP)の価格データに依存しています。最新の価格データ(2021年に収集されたもの)は2024年5月に公表され、このデータは現在、世界銀行の貧困データに組み込まれ、世界貧困の最も正確な推計を提供しています。さらに、新たな国際貧困ラインには、低所得国における福祉の測定に関する最近の改善が反映されています。

現在の国際貧困ラインの更新は、1990年にドル1日貧困ラインが設定されて以来の過去の更新と同様の方法論に従っています。ただし、世界銀行はPPPの更新において、過去の更新よりも迅速にこれらの新たな価格水準を反映させることができました。

国際貧困ラインは、世界各地の物価変動を反映させるために定期的に改定されます。国際貧困ラインの引上げはまた、低所得国において衣食にかかる基本的費用のより正確なデータを反映するためにも行われます。なお、データは更新されてきましたが、国際貧困ラインを決定する方法は変わっていません。前回の国際貧困データの改定は2022年に行われ、2011年のPPPにもとづいた以前のラインが、2017年のPPPを基に改定されました。

値は更新されていますが、国際貧困ラインは1990年に初めて導入されたときと同じ方法で貧困を測定しています。つまり、世界の最貧国の基準をもとに、経済的な絶対貧困状態にある人の数を測定しているのです。

世界銀行は、主な報告書においては2021年のPPPにもとづいた貧困推定値を用いる予定ですが、「貧困と格差プラットフォーム(PIP)」では引き続き2017年のPPPが使用されます。そうすることで、ユーザーは異なるPPPを用いた貧困層の数を過去の値と比較することが可能になります。さらに、PIPではユーザーが独自の貧困ラインを設定することも可能です。

IPLは、低所得国用に設定された貧困ラインです。同様に、世界銀行は低中所得国および高中所得国向けにもそれぞれ適切な貧困ラインを設定しています。極度の貧困が以前ほど蔓延していない中所得国では、貧困測定にこれら2つの貧困ラインを用いることがより妥当です。これらの貧困ラインもまた、2017年のPPPではなく、2021年のPPPを用いて改定されています。

また、中所得国の貧困ラインについては、改定された国別貧困ラインも反映されています。改定後の各貧困ラインは、前回の改定以降に追加された60カ国を超える中所得国の最新の公式貧困ラインに基づいています。改定後の新貧困ラインは、貧困の定義自体が引き上げられたことも反映しています。世界の貧困をモニタリングするにあたり、我々は長期にわたり一貫したアプローチをとってきました。すなわち、世界の貧困基準を定義するにあたり、経済的貧困に関する各国の知識を集約・活用しているのです。

2030年までに極度の貧困を3%以下にまで削減するという世界銀行の目標は変わっていません。国際貧困ラインの改定は、世界的貧困測定方法を変えるものではなく、最新データを踏まえて更新されるものです。低所得国での家計調査の精度が向上すれば、それだけ人々の暮らしを正確に把握できるようになり、世界的な経済的貧困を把握するためにより適切な基準を設定することができるようになります。何をもって極度の貧困とするかの世界的な基準は、商品やサービスの最低限の価値をより正確に評価した上で決定されます。

他方で、低中所得国や高中所得国ではデータの質が比較的高いため、こうした国々の貧困ラインは、国が豊かになるに伴う基準の引上げを反映することがあります。その結果、データに変更がなくても国によっては「貧困層が増えた」と見なされる場合があります。とはいえ、世界の貧困を把握するためには、所得グループ別の基準は有益な手がかりとなることを強調しておくことが重要です。手法は異なっていても、国同士の比較は常にさまざまな経済指標を通じて行われています。

ICPは、国連統計委員会(UNSC)の後援を受け、世界銀行が運営する世界最大規模の統計プログラムです。同プログラムは、参加国および国際機関で構成されるグローバル・パートナーシップを通じ、厳格なガバナンス枠組みの下で実施されています。

2016年3月の第47回国連統計委員会会合において、ICPは世界統計プログラムの常設プログラムとして指定され、2017年以降は3年ごとのサイクルで実施されることとなりました。ところが、新型コロナ感染症のパンデミックによる混乱を受け、ICP理事会は、各地域の実施機関および技術諮問グループとの協議を経て、2020年のサイクルを2021年に延期しました。

パンデミックの影響は2021年に入っても続いていましたが、多くの国が衛生対策を緩和し、経済活動を再開したことから、2021年はサイクル再開ため最も早い適切なタイミングとされ、コロナ後初めて世界の物価が測定されました。ICPが各国を支援するためにコロナ期間中の物価データ収集に関する総合ガイドラインを作成したことで、データの品質と一貫性が維持されました。

世界銀行は、世界の貧困を把握するため、世界中の世帯調査のデータをまとめ、比較可能な状態にしています。集計結果の報告にあたっては、人口カバー率の指標を用いて、利用可能な調査データが対象地域の人口に対して十分な割合を占めているかを判断しています。地域別集計の場合、報告年から3年以内に収集された調査で、かつ地域人口の半数以上を占める調査データが必要です。世界全体の集計の場合、人口カバー率に関して同じ規則が適用されるとともに、世界の貧困層の大半が暮らす低所得国と低中所得国の人口の半数以上をカバーする必要があります。こうした基準が満たされない場合、トレンドラインは表示されないか、点線で表示されます。

2025年6月の改定では、サブサハラ・アフリカを除き、すべての地域について2023年までの推定値を報告するのに十分なカバー率が確保されました。エジプトの調査データが利用できるようになったことで、前回の2024年9月時点では対象外とされていた中東・北アフリカ地域のカバー率を達成できました。一方で、サブサハラ・アフリカ地域では、ナイジェリアの最新データがないため、西アフリカを中心にカバー率が限定的です。

国際貧困ラインは、世界全体の極度の貧困を測定するために設定されたものであり、世界銀行や国連をはじめとする開発パートナーによるグローバル目標の進捗を評価する際に使用されます。一方、国の政策対話の土台として、またその国の状況下で最貧困層向けのプログラム策定においては、引き続き国別貧困ラインの使用がはるかに適しています。

新しい貧困ラインを教えてください。また、この新基準を用いると、世界全体で極度の貧困層はどのぐらいの数になりますか?

新しい国際貧困ラインは、2021年のPPPに基づいて1日あたり3.00ドルに設定されています。つまり、1日3ドル未満で暮らす人々が極度の貧困層と見なされます。この基準に照らすと、2022年には約8億3,800万人が極度の貧困状態にあると推定されます。これは、2017年のPPPを用いて2024年9月に設定された2.15ドルの貧困ラインを使用した場合の7億1,300万人を約1億2,500万人上回る数です。

新しい国際貧困ラインは、2021年のPPPに基づいて1日あたり3.00ドルに設定されています。つまり、1日3ドル未満で暮らす人々が極度の貧困層と見なされます。この基準に照らすと、2022年には約8億3,800万人が極度の貧困状態にあると推定されます。これは、2017年のPPPを用いて2024年9月に設定された2.15ドルの貧困ラインを使用した場合の7億1,300万人を約1億2,500万人上回る数です。

2025年6月の貧困ライン改定に伴い、以前に発表された貧困層の推定値が大きく3つの理由から変更になりました。第一に、2021年のPPPを使用していることです。第二に、国際貧困ラインの改定です。これはPPPの更新に加え、根拠となる国別貧困ラインの見直しによるものです。第三に、裏付けとなる世帯調査のデータの更新(特にインド)です。

これら3つの要因、すなわち新PPP、新貧困ライン、そして世帯調査の新データが組み合わさった結果、2022年の極度の貧困層は、以前の推定よりも約1億2,500万人多くなりました。南アジア地域の極度の貧困層は推定4,500万人減少しましたが、ほかのすべての地域では国際貧困ライン以下で暮らす人の数が増えています。前回との差が最も大きかったのはサブサハラ・アフリカ地域で、現在の極度の貧困層は推定1億1,100万人増加しました。

 

LMICの貧困ラインは以前の3.65ドルから4.20ドルに、UMIC貧困ラインは6.85ドルから8.30ドルに、それぞれ改定されました。

割合にすると、LMICとUMICの貧困ラインはそれぞれ15%と21%の引き上げとなります。

2024年9月の推定値と比較した場合、新PPP、新貧困ライン、世帯調査の新データを組み合わせた結果、2022年におけるLMICの貧困層の数は1億8,000万人減少しました。これは主に、インドの2022/23年の新しい世帯調査データが下方修正されたことにによるものです。PPPの更新や4.20ドルへの貧困ライン改定も、減少に寄与しました。

一方で、UMICの貧困ラインでは、改定の結果、2022年に貧困ライン以下だった人の数が2億5,800万人増加しました。UMICでの結果は多くの面で、LMICの貧困ライン改定による変化とは反対です。その主な理由は、PPPの更新や相対的な貧困ラインの引上げです。インドを中心に世帯調査の新データが反映されたことも9,500万人の増加をもたらしました。  

LMICとUMICの貧困ラインの改定が過去のデータに与える影響はそれほど大きくありません。LMIC貧困ラインにもとづくこれまでの貧困率に事実上、変更はありませんが、より最近(2013年以降)の推定値は引き下げられています。UMIC貧困ラインを用いた場合の貧困率は、2022年に約3%上昇していますが、これまでの推定値への影響は軽微です。その結果、2022年にUMICにおける貧困ラインを下回る人の数は約38億人で、1990年の推定値である37億人をわずかに上回りました。

各国の貧困率の推定値変更の背景には、いくつかの要因があります。PPPが暗示する物価に関する新しい情報が直接的に改定につながる場合もあります。例えば、新しいPPPを使うと、物価水準がこれまで考えられていたよりも高くなる(つまり現地通貨の購買力が以前よりも下がっている)ことがあり、その結果、他の条件がすべて同じでも貧困率は高くなります。さらに、新しいPPPに基づく国際貧困ラインは、PPPだけでなく、裏付けとなる国別貧困ラインにも基づいて改定されます。例えば、極度の貧困を測定する国際貧困ラインは、2021年のPPPを使い2025年6月に改定されました。約40%の引上げとなったわけですが、これは純粋な物価変動上昇だけでは説明できない大幅な見直しです。

PPPの更新とそれに伴う貧困ラインの改定は、各国の貧困レベルの変更につながりますが、全体としての傾向に大きな影響はありません。つまり、こうした改定は通常、傾向全体が上下する形になります。

また、貧困推定値の変更につながるもうひとつの要因は、以前の推定値を書き換える世帯調査の新データです。例えば、2025年6月の貧困ラインの改定は、インドの新しい世帯調査データを反映しているため、この国の推定値更新につながりました。 

貧困ラインの改定そのものは、貧困層の人々の日々の生活を変えるわけではありません。とは言え、より実態に即した貧困ラインを正確に把握することで、より効果的でインパクトの大きな政策立案が可能になります。これは、詳細な情報と優れたツールを備えた医者の方が、正確な診断と治療ができるのと同じことです。  

最後に、ある国の傾向を分析するには、国別貧困ラインが適切な基準であることを強調しておく必要があります。その国の状況を最も適切に踏まえる形で貧困を定義した指標であり、調査方法の変化やニーズの変化にも対応できる指標だからです。

国別貧困ラインは、人々が貧困に陥らないために必要な資源の量を、各国独自に設定し、それを反映しています。このラインは、国レベルでの新しい世帯調査や物価データを反映させるため、定期的に見直されます。今回の改定では、国際貧困ラインの基礎となる国別貧困ラインの引上げが、特に大きな意味を持ちます。 

多くの低所得国では、人々の生活状況を測定する家計調査の方法が改善され、基本的ニーズを満たすのに必要な支出を反映した新しい国別貧困ラインが導入されました。具体的には、国民の実際の食習慣を反映した食費と、家計消費に占める食費以外の項目の推定値を計算しています。調査方法の改善により、家計消費が増加するのにともない、国別貧困ラインの推定値も増加しています。このように国別貧困ラインは、収集された具体的なデータに基づいて設計されています。 

新しいPPPが採用されると、これまでの貧困推定値がすべて修正されます。このため、世界銀行は、世界の極度の貧困撲滅の進捗状況についての概観を修正します。1990年以降の傾向に変わりはありませんが、極度の貧困は以前の推定値よりも多かったと修正されました。特に初期の推定値は大幅に増加したため、貧困削減の進展は従来の認識以上に顕著であったことが分かりました。1990年時点の極度の貧困率は6%ポイント上方修正されましたが、2022年は1.5%ポイントの上方修正にとどまりました。この修正により、1990年から2022年の間に極度の貧困を脱した人の数は、以前の推定13億人から推定15億人に引き上げられました。今回の修正は、主に中国を中心とした東アジア・太平洋地域における動向によるものです。

改定後の国際貧困ラインは、現在の極度の貧困レベルに影響を与えるものの、最近の世界的な傾向や今後の予測には基本的に影響しません。したがって、「貧困・繁栄・地球2024」報告書の主な結論は引き続き有効です。むしろ、一部の調査結果や提言はこれまで以上に重要性を増しています。具体的には、世界の貧困は以前の推定値よりもさらに高い水準にあり、貧困削減は停滞に近いほど鈍化しています。また、2020年代は失われた10年になる見通しであり、特にサブサハラ・アフリカにおける極度の貧困率はより深刻で根深いものとなっています。

今回の貧困ライン改定の結果、世界銀行は2030年になっても世界人口の9%が依然として極度の貧困状態にあると見込んでいます。これにより、極度の貧困を撲滅するという持続可能な開発目標(SDGs)や、2030年までに極度の貧困を3%以下にするという世界銀行の目標の達成は、今まで以上に困難になると見られています。

過去数十年間にわたり、インドは消費データの収集方法を変更してきました。これまでの調査では、回答者に過去30日間の消費について尋ねる同一調査期間(URP)方式を用いて消費データを収集していました。2011-12年の全国サンプル調査(NSS)では、URP方式に加えて混合調査期間(MMRP)方式が導入され、回答者には生鮮食品の過去7日間の消費量、5点の低頻度消費品目の過去365日間の消費量、残りの品目の過去30日間の消費量が問われました。

以前のデータと引き続き比較できるよう、世界銀行の貧困・格差ポータルにおけるインドの貧困層の数はこれまでのURP方式を用いた消費指標に基づいて推定されてきました。しかし、2022-23年の家計消費支出調査(HCES)による新しいミクロデータは、MMRP方式を用いたデータのみを収集したもので、これが2025年6月改定の国際貧困ラインに反映されています。そのため、今回の改定では、対象期間全体にわたってインドのデータが調整されました。

2011-12年の調査には、URP方式とMMRP方式の両方が使われており、両方式に基づいて貧困を比較することが可能です。比較のため、2011/12年度のPIP推計値はMMRP方式に置き換えられ、方法についていくつもの改善が施されました。名目支出の集計は、生活費の差を考慮するなどの方法論上の改善を踏まえた福祉集計に置き換えられました。その結果、2011-12年と2022-23年の両期間における傾向が修正されています。

こうした調整の結果、MMRP方式の福祉集計を用いた極度の貧困率は、2011-12年には推定16.2%でしたが、2022-23年には2.3%にまで低下しました。インドの貧困率の推定値は大きく見直されたことになりますが、これは前例がないことではありません。世界中の多くの国で、より正確な消費測定が行われるようになっており、その結果として、インドと同様に、測定された消費額が上昇しています(世界銀行による2024年発表資料の第1章付録を参照)。

2011年以前の推定値も、これら両方の変更を反映するように調整されました。また、以前貧困と格差ポータルに掲載されていた2015-16年から2021-22年までの比較不可能な推定値は削除されました。インドのデータに関する変更の詳細は、こちらおよび方法論に関する資料をご覧ください 。

PPPは、通貨換算係数であるとともに、空間物価指数でもあります。これは、異なる国の物価水準を取り除き、共通の通貨価値に換算し、購買力が等しくなるように使用されます。PPPとは、基準国国で特定の価格で購入できる代表的な商品とサービスの組み合わせが、他の国ではいくらで購入できるかを示す換算レートです。

PPPは、国際比較プログラム(ICP)の責任において決定されます。ICPは独立した統計プログラムであり、世界銀行の開発データグループの中に設置されたグローバル・オフィスが運営し、国連統計委員会(UNSC)の後援を受けています。

ICPは、PPPを用いてGDPおよびその費用の構成要素を比較可能な数値に換算します。そのために、ICPは参加国間で比較可能な物価データと国民経済計算の支出額データの収集を行います。物価データは、代表的な商品やサービスの組み合わせについて収集され、詳細な現地通貨での支出額データは、各国の国民経済計算から集められます。

ICPは、公式統計の標準に従い、厳格なガバナンス構造のもとで運営されています。そのため、PPPおよびICPによって導き出された結果は、共通で健全かつ透明性のある方法論に基づいて、独自に生成されます。これらの方法は、技術専門家によって開発されたもので、この分野の著名な専門家によって検証されています。導かれたすべての結果は公表前に、ICP技術的助言グループによって方法論の健全性が厳しく評価されます。 

本ウェブサイト上のよくある質問のセクションは、プログラムの目的、主要方針、データソース、方法論、応用方法を理解したい人に有益な情報を提供しています。

次回のICP2024サイクルの結果は2027年に発表予定で、発表内容には2024 年の新しい基準PPP、2021 年に改定された基準 PPP、2022 年および 2023 年の補間 PPP が含まれます。

世界銀行が貧困ラインを推定する際には、各国が定義する国別貧困ラインを用います。これは通常、その国で最低限の衣食住のニーズを満たすことができなくなるレベルとして設定されています。したがって、国全体の所得レベルが高くなれば、それにともない国別貧困ラインも上昇します。

しかし、こうした国別貧困ラインは国によってそれぞれ異なるため、世界全体の極度の貧困層の数を把握するためには、単に各国の貧困層の数を合計するだけでは不十分です。なぜなら、各国で貧困層を定義する基準が異なるからです。そのため、全ての国の貧困層を共通の基準で測定する貧困ラインが必要となります。

1990年、ある研究者グループが、世界の最貧困国数カ国の国別貧困ラインを検証し、購買力平価(PPP)の換算レートを用いて共通通貨価値に換算しました。PPP換算レートは、同じ質の商品やサービスを各国で購入する際に必要な費用を示すものです。共通の通貨に転換すると、1980年代にはこれらの最貧困国の6カ国において、国別貧困ラインが1人あたり1日約1ドル(1985年の物価で)であることが分かり、これが最初の国際貧困ラインである1日1ドルの根拠となりました。

2022年に改定された2.15ドルという国際貧困ラインは、低所得国に分類される28カ国の国別貧困ラインの中央値(2017年のPPPベース)として割り出されたものです。今回の改定でも同様のアプローチが用いられています。国別貧困ラインの最新版が発表された時点で低所得国に分類されていた23カ国を特定し、それぞれの国別貧困ラインを2021年に発表された最新のPPPを用いて国際ドルに転換しました。そのうえで、これら23カ国の国別貧困ラインの中央値を算出したところ、2022年のブルキナファソの国別貧困ライン(2021年のPPPベース)に相当する3.04ドルとなりました。既存の慣行に従い、これを10セント単位で四捨五入し、2021年PPPに基づく新しい国際貧困ラインは3.00ドルとなりました。

IPLの算出および改定方法の詳細についてはブログワーキング・ペーパーをご覧ください。また、IPLのこれまでの改定の経緯についてはFerreira et al. (2016)およびRavallion et al. (2009)をご覧ください。

極度の貧困を定義する国際貧困ラインは、PPPに基づき国際ドル(USD)で表されます。これは、各国が自国通貨で設定した国別貧困ラインをICPが発表したPPPを用いて転換したもので、世界各国での比較が可能です。

最新の改定には、以下のようないくつかの要因が反映されています。

  1. PPPの更新:2017年のPPPが2021年に更新されたことで、名目上の所得または消費が平均で13%増加した。これは、同期間の米国のインフレ率(11%)をわずかに上回る水準。低所得国では、増加はさらに大幅で、約21%となっている。
  2. 国別貧困ラインの改定:2017年のPPPに基づく前回の改定以降、いくつかの低所得国が、国別貧困ラインを引き上げた。これらの国々では、過去数年間にわたり家計データの収集方法が改善され、その結果として消費総計が上方修正された。ただし、これはそれらの国々が突然豊かになったということを意味するものではない。実際には、引上げ後の消費総計は、例えば、外食費がより正確に把握されたことにより、実際の消費をより正確に表すことになった。こうした消費総計の更新により、各国は貧困の基準値も見直す必要が生じる。多くの低所得国では、こうした基準値は通常、基本的ニーズを満たすのに必要なコストに基づいて設定されているため、国別貧困ラインが引き上げられると、国際貧困ラインにも影響を与える。
  3. その他の要因:各国の所得水準別分類の変更やデータが入手しやすくなったことも改定に影響している。

こうした要因すべてが国際貧困ラインの引上げにつながっています。更新された PPP を適用するだけで、約0.35ドルの増加 (2.15ドル→ 2.50ドル) となり、残りの0.50ドルの増加(合計で3.00ドル)は、主に低所得国の国別貧困ラインの改定によるものです。

改定に用いられた方法論の詳細については、ワーキングペーパーをご覧ください。

金銭面以外にも、教育、保健、衛生、水、電気など、数多くの指標が存在します。これらはすべて、貧困層が直面している現実の多くの側面を理解する上で極めて重要です。多様な指標は互いに補完し合い、より広い視点を持つことが、最も貧しい人々の暮らしを効果的に改善するために重要な意味を持ちます。

世界銀行は、金銭面と金銭面以外の両方の指標で貧困を測定する多次元貧困基準(MPM)も活用しています。