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災害への強靭性強化に向けて:途上国におけるジオハザード管理を活用した道路防災
第12回防災セミナー「災害への強靭性強化に向けて:途上国におけるジオハザード管理を活用した道路防災」
2016年7月21日東京


防災セミナーシリーズ:世界銀行東京事務所、世界銀行東京防災ハブ 共催

地すべりは自然要因による発生に留まらず、無秩序な開発や高いリスクの地域の開拓によっても引き起こされます。多くの開発途上国では、河川地域や山間部への道路建設が、地すべり、土壌の浸食、および土砂災害の誘因となっています。

国土の約70%が山地や丘陵地である日本は、台風や集中豪雨に起因する土砂災害が起こりやすいと言えます。同国は過去の幾多の経験を踏まえ、「上流地域における砂防堰堤」を含む総合的アプローチ、一般的に「砂防」として知られる一連の手法を開発し防災に活用してきました。

世界銀行東京防災ハブは、日本政府の支援と、公的機関、学術・研究機関、民間セクターのご協力をいただき、国内外の主だった事例や手法を取りまとめた「道路・ジオハザード管理ハンドブック」を作成しました。本ハンドブックは、国土交通省、国際協力機構 (JICA)、日本地すべり学会、国際砂防ネットワーク、砂防・地すべり技術センター等が国内外で適用してきた手法とその事例を基に、工学設計から利用可能な制度のオプションに至るまでをカバーし、世銀や途上国の実務者にとって適切な情報が利用しやすい形で参照できるようになっています。

本セミナーは、本ハンドブックの発表に先立ち、上記内容にふれながら、世界各地の道路網、公共の安全性、ならびに資産に対し地すべりがもたらす問題と、日本や途上国での解決策について議論します。

 

プログラム

開会挨拶

塚越 保祐
世界銀行グループ 駐日特別代表

基調講演

檜垣 大助
弘前大学農学生命科学部 教授 / 弘前大学大学院 農学生命科学研究科 教授 / 日本地すべり学会 元会長
「ジオハザード・リスク軽減:道路セクターにおけるリスクと管理オプションの理解」PDF (英語)

講演

森 幹尋
日本工営株式会社 コンサルタント海外事業部 地圏防災室 専門部長
「道路ジオハザード管理アプローチ」PDF (英語)

スヴェトラーナ・ブカノビッチ
世界銀行 交通・ICTグローバルプラクティス 交通専門官
「セルビア:より強靭な交通インフラ構築に向けて」PDF (英語)

ディスカッサント

石渡 幹夫
国際協力機構 国際協力専門員
「道路ジオハザード管理ハンドブックへの期待」PDF (英語)

牧野 由佳
世界銀行 社会・都市・農村開発・強靭性グローバルプラクティス 上級自然資源管理担当官

モデレーター

ジェームズ・ニューマン
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 東京防災ハブ 防災専門官

(敬称略)

 

❖ このセミナーは公開用に録画されます。

スピーカー紹介

セミナー報告

Image塚越 保祐
世界銀行グループ 駐日特別代表

2013年8月現職に就任。日本の政府、CSO、企業、研究機関等と世界銀行との協力関係強化を使命とする。就任以来、世界銀行東京事務所内に設置された東京防災ハブの設立にも参画。現職就任前、2008-2011年には米州開発銀行理事として同行の融資案件の審議と政策決定に関与。1988-1991年にはアフリカ開発銀行理事としてコートジボワールに駐在。また、1994-1998年には国際金融情報センター・ワシントン事務所長として米国の政策決定過程等につき調査。1980年4月大蔵省 (現:財務省) に入省。

 

Image檜垣 大助
弘前大学農学生命科学部 教授 / 弘前大学大学院 農学生命科学研究科 教授 / 日本地すべり学会 元会長

地形学、砂防学の専門家として、山地の自然環境を踏まえた地すべり・斜面崩壊などの災害軽減に関する研究を行う。また防災を通して、山岳発展途上国を貧困や環境悪化から救済するための取り組みを推進する。
1983年、建設省 (現:国土交通省) 入省後、岐阜県庁、建設大学校 (現:国土交通大学校)、土木研究所、JICAネパール治水砂防センター、神奈川県庁等で勤務。1998年、弘前大学農学生命科学部助教授。2003年、弘前大学農学生命科学部教授。東北大学大学院 理学研究科修了、理学博士。近年の研究論文に『ネパールおよびブータンのヒマラヤ地方における氷河決壊洪水に起因する浸食および堆積』(Global Environmental Research, 2012年3月)、『岩手・宮城内陸地震により引き起こされた地すべりの分布と特性』(Landslides, 2009年10月) などがある。

 

Image森 幹尋
日本工営株式会社 コンサルタント海外事業部 地圏防災室 専門部長

地質工学、応用地質学、道路災害管理の専門家。日本工営株式会社の知見防災室 専門部長を務め、道路災害に対する技術的ソリューションを提供している。インドネシア、カンボジア、アルメニア、ネパール、フィリピン、ヨルダン、ブラジル、ホンジュラス、ニカラグアを含め、豊富な道路災害管理と技術共有プロジェクト経験を有する。1994年以降、上記各国で国際協力機構 (JICA) の道路防災および技術プロジェクトを主導する。2000-2003年は、道路保全技術センターの一部として設立された道路保全技術研究所の主席研究員として、道路災害管理技術の開発に従事。2013-2014年は、プロジェクト・マネージャーとしてネパールにおけるシンズリ道路の斜面崩壊の進行防止に取り組む。また、2012-2015年は、JICAの専門家として、同道路の運用および保守に関する技術支援プロジェクトを推進。応用地質学、道路災害管理および総合技術管理 理学士。IPEA国際エンジニア、およびAPECエンジニアを保持。

 

Imageスヴェトラーナ・ブカノビッチ
世界銀行 交通・ICTグローバルプラクティス 交通専門官

世界銀行 セルビア事務所 交通・ICTグローバルプラクティス 交通専門官として、セルビアのポートフォリオを担当するほか、交通復旧プロジェクトを主導。また、アゼルバイジャン、モンテネグロ、ベラルーシ、ロシアの国家プロジェクト支援、ならびにエネルギー、ガバナンス、災害リスク管理各チーム間にまたがるプロジェクトを実施。1998年に情報システム・エンジニアとして就業後、PPTセルビアおよびミュンヘン工科大学でビジネス・アソシエイトとして従事。2002-2006年、ドイツのTRANSVER GmbHでコンサルタントとして活躍。2006年以降はシーメンスの技術部門マネージャーを務める。2008年、世界銀行入行。ベオグラード大学にて情報システム学士号および修士号取得、ならびにミュンヘン工科大学にて交通工学博士号取得。

 

Image石渡 幹夫
国際協力機構 国際協力専門員

気候変動適応策、防災、水資源管理分野のODAについて、援助アプローチや案件形成・管理を担当している。世界銀行にて上席防災専門官として「大規模災害から学ぶ:東日本大震災からの教訓」プロジェクトを担当。国土交通省において浜田河川国道事務所長、河川計画課企画専門官等として河川行政に関わる。アジア開発銀行都市開発専門官、英国クランフィールド大学防災センター研究員等を歴任。論文に『災害管理に関する日本の知見』(Asian Journal of Environment and Disaster Management, 編著2010)、『国家レベルでの災害リスク管理』(ADBI Working Paper, 2013) 他。国際協力学博士。

 

Image牧野 由佳
世界銀行 社会・都市・農村開発・強靭性グローバルプラクティス 上級自然資源管理担当官

20年以上にわたり自然資源管理、土地管理、災害リスク管理、気候変動適応プログラムの開発、管理、運用に携わる自然資源管理の専門家。東アジア、南アジア、アフリカにおける豊富な経験を有し、開発途上国政府と日本の関連各機関との連携を構築する。2014-2015年は、日本‐世界銀行防災共同プログラム発足メンバーとして新規プログラムや知見共有プロジェクトを形成他、東京防災ハブの管理全般に携わる。世界銀行入行前は、2001年から国連開発計画 (UNDP) カンボジア事務所のプログラム・オフィサーとして赴任。2年半の勤務後、国際協力事業団 (現:国際協力機構JICA) 派遣専門家としてネパールにおける地域密着型の災害リスク管理を担当。国際基督教大学にて学士号取得後、ミシガン大学にて陸上生態系管理修士号および博士号取得。

 

Imageジェームズ・ニューマン
世界銀行 防災グローバル・ファシリティ 東京防災ハブ 防災専門官

2013年世界銀行入行。以降、防災グローバル・ファシリティ (GFDRR) の業務計画全般に携わるとともに、南アジア地域および東アジア・大洋州地域における強靭な都市づくりや地域ポートフォリオ業務を担当。また、世界銀行の都市強靭性診断や、強靭な都市づくりに関するメデジン・コラボレーションの開発に貢献する。インド、ネパール、南アフリカ、ベトナムにおける災害後リスク評価を含む世界銀行のプロジェクトや技術支援にも従事。入行前は、ボルチモア市の10か年財務計画、リスク管理、シティスタット業績管理、オープン・データ業務に携わるともに、副調達官代理を務める。チリ共和国の市場調査組織では、ラテンアメリカ・カリブ海地域の金融と保険を担当。経済学と公共政策学を専門とし、ワシントン大学にて学士号取得後、ジョージタウン大学大学院と、チリ共和国サンティアゴ市にあるアルベルト・ウルタド大学大学院修了。非常勤教授としてボルチモア大学大学院 行政学修士プログラムの公共政策学および統計学の教鞭をとる。

(講演順、敬称略)

 

セミナー概要

セミナー報告

 

世界銀行東京防災ハブは、日本政府のご支援と、公的機関、学術・研究機関、民間セクター等のご協力のもと、国内外の主だった事例や手法を取りまとめた「道路・ジオハザード管理ハンドブック」を作成しました。本ハンドブックは、工学設計から利用可能な制度のオプションに至るまでをカバーしたものです。

第12回防災セミナーは、同ハンドブックの発表に先立ち、世界各地の道路網、公共の安全性、ならびに資産に対し地すべりがもたらす課題と、日本や途上国での解決策について議論しました。

セミナーでは、檜垣 大助 弘前大学 農学生命科学部 教授 / 弘前大学大学院 農学生命科学研究科 教授 / 日本地すべり学会 元会長より、開発に対し、ジオハザード (地すべりや地震といった、災害リスクにつながる地質上および環境上の諸条件) がもたらす様々な影響について基調講演をしていただきました。

また、森 幹尋 日本工営株式会社 コンサルタント海外事業部 地圏防災室 専門部長から、ジオハザード・リスク削減を含めた、道路に関するジオハザード・リスク管理フレームワークの概要と適用方法についてご紹介いただきました。

セルビアで政府関係者と連携しプロジェクト実施に携わるスヴェトラーナ・ブカノビッチ 世界銀行 交通・ICTグローバルプラクティス 交通専門官は、2014年にヨーロッパ南東部で発生した洪水がどのように地すべりを引き起こし、道路資産を損なったかについて述べました。また、それにより交通インフラ構築および防災の再検討が喚起され、日本の経験を活用しつつ強靭なインフラへの投資が進むことが期待されると紹介しました。

石渡 幹夫 国際協力機構 国際協力専門員からは、ハンドブックから得られる重要な教訓として、メンテナンスの重要性、他機関との連携、および早期復旧システムなどについてお話いただきました。

生命、資産、および交通ネットワークを保護するため、ジオハザード・リスク管理に関する日本の取り組みの多くは途上国にも大変参考になり、また、道路周辺の地形が引き起こす自然災害への対応については、技術的検討を道路そのものから、より一層広げて行うことの重要性などについて、参加者間で活発な意見交換がされました。


イベント詳細
  • 日時: 2016年7月21日 (木) 午後4時30分~午後6時
  • 場所: 世界銀行東京事務所 東京都千代田区内幸町2-2-2 富国生命ビル10階
  • 言語: 英語・日本語 (同時通訳付)
  • お問合せ: 世界銀行東京防災ハブ TEL: 03-3597-1320
  • drmhubtokyo@worldbank.org

日本-世界銀行防災共同プログラム






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