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特集 2021年1月18日

途上国の持続可能な開発を実現するためのスマートテクノロジーの活用

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途上国の都市では、都市開発の課題に対処するため、低コストで大きなインパクトをもたらすことのできるスマートソリューションの導入が進んでいます。しかし、そのようなスマートソリューションの導入に伴い、多くの課題も浮き彫りとなっています。たとえば、リソースの不足や計画の不備、都市の運営に携わる人々の能力開発の機会のなさ、市民間の情報格差などです。

都市が社会経済的な結果を改善し、新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックにおける脆弱性を軽減するためには、このような不平等に取り組むことが重要です。横浜市と世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)の共催で2021年1月18日に行われた第9回アジア・スマートシティ会議(ASCC)では、これらのギャップを埋めるためのソリューションについて議論が行われました。
 

ワンストップのデータインフラ:途上国におけるスマートシティ構築の鍵

多くの都市(特に途上国におけるもの)にとって最も難しい課題の一つは、住みやすい都市環境を実現するために必要な、根拠に基づいた計画や意思決定の欠如です。世界銀行の都市・防災・強靭性・土地グローバルプラクティス(GPURL)のグローバルディレクターであるサメー・ワーバは、ASCCにおける基調講演で、「テクノロジーを活用して都市計画やサービスの提供を効率化し、ガバナンスを強化させ、効果的な都市管理を実現するスマートシティは、自然豊かで、回復力があり、持続可能な未来を築くための鍵となります。」と述べました。

この問題に取り組むため、世界銀行は、「インドネシアの持続可能な都市化のための信託基金(IDSUN)」の下、都市開発ラボ(CPL)イニシアティブを通じて、インドネシア政府を支援してきました。IDSUNは、地方自治体のデータ基盤を強化し、既存の都市システムにおけるデジタル情報を活用することを目指す基金です。

インドネシアのCPLを率いる世界銀行のガヤトリ・シン上級都市専門官は、ASCCにおけるパネルディスカッションに登壇し、「多くのスマートシティの取り組みは、ポテンシャルがあるにもかかわらず、根拠に基づいた計画や都市管理よりもスマートアプリに着目してきました。」と述べました。

CPLは長年にわたり、いくつかの都市の政府機関と協力して、「自治体空間データインフラ(MSDI)」の開発に取り組んできました。MSDIは、機関、人、データ、制度という4つの柱に基づいた枠組みの下、多様な都市計画や管理のツール、知識、アクションプランを統合してきたエコシステムです。このエコシステムにおいて、データは、道路と同じように、規制、検証、維持管理が必要となるインフラとして扱われます。その結果、これらのデータはきちんと統合され、根拠に基づいた都市計画と管理を加速させる強力なツールとなります。

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都市計画ラボが作成した「自治体空間データインフラ」の構想図(第9回アジア・スマートシティ会議での発表に使われた画像)

現在、インドネシアにおける3つのCPL都市(バリクパパン、デンパサール、スマラン)はすべて、データガバナンスの正式な枠組みを導入しています。この枠組みは、「ワン・データ」の下、これまで縦割りになってきたデータを一つにまとめ、省庁間の連携とデータ共有を促進するための制度的な取り決めにより運営されています。

シン氏は、「これまで私たちは、各都市とともに、当初の予想を超える多くのことを達成してきました。」と述べ、成功を収められたのは都市の政府機関の連携を促進したからだと説明しました。 「今は互いに競争するのではなく、連携する時です。」とシン氏は強調し、互いに協力してデータに基づいた都市管理を推進するよう、ドナー機関、大学、民間企業と政府に呼びかけました。

プロデューサーとしての都市:開発をめぐる経験を共有する横浜市

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再開発の成功例であり、市民の誇りでもある横浜市のベイサイド地区(第9回アジア・スマートシティ会議での発表に使われた画像)

横浜市は今やスマートシティ開発において日本を代表する都市の一つですが、1960年代には、現在のダッカやインドネシアと似たような問題を抱えていました。1964年当時、横浜市は大気汚染、ひどい交通渋滞、校舎の未整備に悩まされ、市営の下水道に接続されている市のトイレはわずか1.2%でした。

横浜市は、「管理・事業・設計」のスローガンの下、限られた資源とノウハウの中で、民間企業や市民と連携し、6つの大規模な再開発事業を実施しました。その結果、横浜市は今や、新しいシティセンター、工業団地、洗練された住宅街、高速道路や地下鉄の他、横浜ベイブリッジをはじめとする数々のランドマークを誇る都市となっています。

横浜市は、同じような問題に直面している途上国に同市の知識や経験を共有すべく、TDLCとの協力の下、同市の発展を記録した「横浜ソースブック(仮訳)」を作成しました。

横浜市の成功の鍵となったのは、官民パートナーシップ(PPP)を促進する環境を整えたことです。ASCCに登壇した横浜市国際局の橋本徹氏は、「地方自治体は、自らの役割を再定義し、プロデューサーとなるべきです。」と述べました。都市がプロデューサーとなれば、民間部門のアクターと市民が連携しやすくなります。横浜市がもたらしたイノベーションは、街をよりスマートにし、すべての市民にとってより住みやすい場所に変えていっています。このように、横浜や日本の他のスマートシティは、都市の課題に対処するためのスマートソリューションを模索し続ける途上国に対し、貴重な洞察や教訓を提供することができます。




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