GEFが取組む課題
生物多様性
2010年に愛知県名古屋市で開催された、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)において、生物多様性保全に向け世界各国が取り組む「愛知目標」が決議されました。GEFは、その目標達成のための大きな原動力となっています。特に自然保護地域の保全の分野では、これまでに世界各地2800ヶ所、計708万km2以上の地域を支援し、目標達成に大きく貢献しています
GEFは、絶滅危惧種の保全に取り組んでいます。インドやネパールのトラの保全、またロシア・中央アジア地域に跨る鶴の保全活動などはその一例です。日本政府やNGOと協力しクリティカル・エコシステム・パートナーシップ基金を設立し、民間企業とともに絶滅危惧種保全のためのSOS基金も立ち上げました。今後も、早急な支援を必要としている、アフリカ象やサイの密猟および違法取引の問題に取組む予定です。
生物多様性にやさしい生産活動を地域レベルで推進していくモデルとして、日本や他国の里山や里海の経験が注目されています。GEFは、日本の環境省と「SATOYAMAイニシアテイブに関する協力覚書」を締結し、COP10において発足したこのイニシアテイブの国際的推進・実施のための協力活動を進めています。
名古屋議定書の早期発効と実施を促進するために、GEFは日本政府と協力し、名古屋議定書実施基金を設立しました。パナマの案件では、日本の製薬会社も参画し、ガン等に対して治療効果のある化合物の発見、技術移転、関連国内制度の構築等を支援しています。
生物多様性分野でのGEFの取組み (英語)
気候変動
気候変動問題に対応するためには、先進国だけでなく、急増する途上国からの温室効果ガス排出量を抑制する必要があります。GEFは、革新的な低炭素技術の実証・普及・移転や再生可能エネルギーの普及、省エネルギーの実施など、途上国の削減対策を支援しています。また、海水面の上昇や干ばつなど気候変動による影響に適応するため、最貧国基金(LDCF)と特別気候変動基金(SCCF)を通して、途上国の適応対策を支援しています。
GEFによる支援の一例として、エジプト・カイロの郊外で、太陽光を集光して得られた熱で発電する集光型太陽熱発電を導入しました。このプロジェクトは、旧国際協力銀行(現JICA)から円借款を通じて支援を受けており、日本ODA支
援との連携の一例でもあります。途上国は、隔年で排出実態や削減対策をまとめた報告書を提出することが求められており、GEFはこうした取組も支援しています。この隔年報告書は、2015年に合意予定の次期枠組みを構築する上での基盤となるものです。
微小粒子状物質(PM2.5)による日本への越境汚染が懸念されています。微小粒子状物質の発生源は、工場や自動車等から排出される大気汚染物質です。GEFは中国でのエネルギー効率改善や再生可能エネルギー推進の支援を通じて、温室効果ガス排出量を削減してきました。これらの取組は、微小粒子状物質の原因物質の削減にも貢献しています。
気候変動分野でのGEFの取組み(英語)
国際水域
水は、人の生活に必要不可欠な自然資源です。世界の河川のほとんどは国境を越えて流れており、しばしば水利用をめぐる紛争が生じています。GEFは、河川を共有する流域諸国間の協力体制を強化し、持続的な水利用や水質汚染を防止する活動を支援しています。また、世界の主要な海洋生態系では、多国間協定に基づく生態系の保全や持続的な漁業を推進しています。
GEFが他機関と協力して実施したナイル川流域イニシアティブは、水問題が食糧供給や貧困に与える影響を浮き彫りにし、環境セクターだけでなく農業や産業セクターも関わり、多角的に地域間の水管理を改善した一例です。GEFは、東アジアの海域で日本も含め14カ国と協力し、包括的な沿岸管理を推進しています。水質汚染を抑え、沿岸そして海洋生態系を保全していくことで、地域全体の環境保全をすすめ、地域の経済活性化にも貢献しています。
メコン川流域保全プロジェクトを通じ、GEFはアジア開発銀行や日本の研究機関とともに、流域国の環境戦略づくりを支援しました。この取組は、環境配慮を踏まえた流域の経済発展を進める上で、重要な役割を果たしています。
国際水域分野でのGEFの取組み(英語)
土地劣化
GEFは、砂漠化や森林伐採による土地劣化に対応するため、アフリカをはじめ多くの途上国で、持続的な土地管理を支援しています。環境保全型な農業や森林保全を通じた土地の有効な利用を通じ、水・土壌・生物多様性の保全や、気候変動への適応など、包括的な事業を進めています。世界の人口が急増するなか、農地や森林の持続的な管理は、食糧の安定供給のためにも重要な課題です。
中央アジア諸国では、旧体制の崩壊後、森林の伐採や過放牧が進み、多くの農地や放牧地が荒廃しました。GEFは、放牧地や森林の管理改善のための政策や組織の構築、また地域間の情報共有や技術移転を支援し、土壌の回復および効果的な土地の管理を進めています。
黄砂に対応するため、GEFは日中韓・モンゴルの政府と協力して、黄砂の防止と抑制の地域協力メカニズムを確立し、黄砂緩和のためのマスタープランを作成しました。この活動は、その後各国が黄砂モニタリングや早期警報ネットワークを確立する基盤となりました。
土地劣化分野でのGEFの取組み(英語)
水銀
環境中に残留する化学物質や重金属は、人の健康や生態系にさまざまな影響を及ぼします。メチル水銀を原因物質とする水俣病は、その健康被害の深刻さに加え、一旦環境が汚染されるとその修復には多くの時間と費用を要することを世界に教えました。GEFは、環境の中に放出されるポリ塩化ビフェニル(PCB)やダイオキシンなど有害化学物質や水銀を削減するために途上国を支援しています。
水銀汚染に国際的に対応するため、2013年10月に熊本市及び水俣市で開催された外交会議で「水銀に関する水俣条約」が採択され、署名が開始されました。GEFは、同条約の中で途上国に資金支援を行うための資金メカニズムとして指定されました。
途上国での手掘り金採掘鉱山では、金鉱から金を抽出するときに使用される水銀が、大気、土壌、水質を汚染し、人間の健康や生態系に悪影響を与えています。GEFは、金採掘から放出される水銀を実用的な方法と技術により削減し、ブラジルでは1700㎏以上の水銀排出量を削減しました。
日本に漂着する廃棄物の中には、使用済の注射針や薬瓶などの医療廃棄物も散見されています。GEFは、中国において医療廃棄物の適正処理に関する法的枠組みを整備するとともに、焼却処理や化学処理等の適正処理技術の普及促進を行っています。
化学物質分野でのGEFの取組み(英語)
オゾン層保護
オゾン層を保護するため、国際社会は「オゾン層破壊物質に関するモントリオール議定書」に基づき、フロンガスの削減に取り組んできました。GEFは、旧ソ連・東欧諸国がモントリオール議定書の規制を守ることができるよう、代替物質の利用や工場施設の転換を支援してきました。また、フロン以外のオゾン層破壊物質である、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)や臭化メチルの削減も支援しています。国際社会の取組が功を奏して、オゾン層が回復しつつあることが報告されています。
オゾン層破壊物質は、強力な温室効果ガスとしても知られており、オゾン層破壊物質の削減は気候変動の緩和にも貢献します。GEFは、オゾン層保護のプロジェクトを通じて、これまで1億500万トン(CO2換算)の温室効果ガスを削減しました。
日本は、フロン回収・破壊法やリサイクル関連法により、冷蔵庫やエアコンに入っているフロン類の回収・破壊を進めてきました。こうした日本の優れた制度や技術、経験は、GEFのプロジェクトの先行事例となるものです。
オゾン層保護分野でのGEFの取組み(英語)
森林管理
熱帯雨林をはじめとする貴重な森林が、世界中で急速に失われています。森林は人々の生活に欠かせない多くの自然資源を与えてくれます。土地の生産を高め、水を供給するだけでなく、生物多様性を守り、気候変動を抑制する緩和策にもなります。GEFは、多くの地球環境問題に取組む立場をいかし、森林の持続的管理に力を入れています。
ブラジルのアマゾンは、世界に知られる森林資源の宝庫です。GEFは、ブラジル政府や他の機関とともに、その保全のために多大な貢献をしています。アマゾン保全のための基金を設立し、保護地区を二倍に拡大する原動力となりました。
近年違法伐採が深刻化しているアフリカのコンゴ盆地では、日本政府も含め多数のパートナーともに、森林破壊の抑制や温室効果ガスの排出削減、そして生物多様性の劣化を防ぐ様々な活動を支援しています。これらの活動は、先住民族を含めた地域の人々の生活向上にも貢献することが期待されています。
森林管理分野でのGEFの取組み(英語)
今後の重点分野
複雑さと深刻さを増す地球環境問題。GEFはこうした問題に対し、複数の分野を担当する強みを活かして、分野横断的でコスト効率的な対策を実施できるユニークな立場にあります。特に、重要かつ迅速な対応が必要な課題として、森林保全、環境保全型農業、都市環境が挙げられます。
GEFは、複数の環境利益が得られる森林保全活動をさらに進めていきます。その減少の大きな要因となっている、大豆やアブラヤシなど農産物のサプライチェーンについて、環境に配慮した新しい開発モデルを実施支援していきます。
途上国では急速に都市化が進み、温室効果ガスの排出や大気汚染、水不足、交通渋滞、廃棄物処理などの問題が生じています。GEFは、低炭素型で気候変動への影響にも強く、生態系を考慮した緑豊かな都市づくりを自治体と協力して推進していきます。
その他、アフリカにおける食料安全保障への取組などにも貢献していく予定です。
お問合せ
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