保健医療システムのレジリエンス強化は、パンデミックや自然災害、その他の重大なショック発生時に、命を救う医療サービスを提供する上で不可欠です。
COVID-19パンデミックにおいては、ほぼ全ての国がかつてない規模の課題への対応に苦慮しました。しかし、平時から高品質な医療へのアクセスが確保されている国々は、感染者数の急増にも柔軟に対応でき、罹患者と非罹患者の双方に必要不可欠な医療サービスを提供することができました。
同様に、日本のように総合的な危機への備えを持つ国では、地震、台風、洪水などの自然災害発生後においても、インフラの損傷やサプライチェーンの混乱といった困難に直面しながらも、緊急医療や公衆衛生支援を含む重要な医療サービスを継続的に提供する能力を発揮しています。
世界銀行は、気候変動および災害リスクに対する保健医療システムのレジリエンスを強化することを重要な課題と位置づけ、堅牢な知識基盤の構築とグローバルな知見の共有促進に取り組んでいます。こうした取り組みの一環として、世界銀行が支援する防災グローバル・ファシリティ(GFDRR) は、日本政府のご支援のもと、日本−世界銀行グローバル・レジリエンスのための防災共同プログラムを通じて新たな報告書「ショックに備えた保健医療システムの強化:保健医療システムのレジリエンス向上における日本の経験」を公表しました。本報告書は、保健医療システムのレジリエンスに特化した知見の蓄積に新たな一石を投じるものであり、これまでに公表された報告書「フロントライン:災害からパンデミックに至るあらゆるショックに備えた保健医療システム」および「フロントラインスコアカード: 保健医療システムにおける気候変動と災害リスク管理のための評価ツール」とあわせて、各国が自国の保健医療システムの強靭性を初期段階で評価するための重要なツールを提供しています。
今回発表された報告書では、日本がこれまで危機への備え、対応、そして復興を着実に強化してきた過程に注目しています。大規模な地震、洪水、感染症の流行など数々の危機から得た教訓をもとに、保健医療システム、災害リスク管理、質の高いインフラを連携させる日本独自のアプローチを紹介しています。さらに本報告書では、さまざまなショックに耐えうる保健医療システムを構築すべく、規制改革、ガバナンス向上、能力構築を通じた上記セクター(保健医療システム、災害リスク管理、質の高いインフラ)の統合の重要性も強調されています。例えば本報告書では「災害医療」——すなわち、疫病および自然災害時における疾病者への緊急保健医療サービスの提供——という概念が定義され、日本におけるその実践の在り方が紹介されています(下図参照)。