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実施報告:都市財政の基本と改革に関する都市開発実務者向け対話型研修(TDD)


急速な都市化が進む時代において、都市はグローバルな発展の要となっています。現在、世界の人口の過半数が都市部に居住しており、この割合は2050年までに70%に達すると予測されています。この成長の大部分は開発途上国で起こると見込まれています。都市化によりさまざまな機能が都市に集中し、イノベーションを加速させ、社会的・経済的な相互作用を生み出し、富をより公平な分配し、経済発展を促します。

しかし、こうした都市化は同時に大きな課題も生み出します。都市サービスの需要の増加、インフラ不足の慢性化が、地方自治体のシステムに大きな圧力をかけています。公的な資金だけではこれらの解決には不十分です。国家は財政難に直面する    中、自治体レベルでの財源を確保し、都市が利用可能な資金調達メカニズムの多様化する必要があります。都市のこうした課題への効果的な対応のために、包括的かつ革新的な財務戦略が不可欠となっているのです。

こうした背景をふまえ、世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)は2025年4月、国際金融公社(IFC)と共同で「都市財政の基本と改革」をテーマとしたテクニカルディープダイブ(TDD)を開催し、都市インフラとサービス提供のための財源確保とと管理に関するグローバルなベストプラクティスを探りました。このTDDには、世界銀行とIFCのクライアント国から地方自治体にかかわる14の代表団が参加し、以下の4つの主要テーマについて議論しました。

  • 都市財政の枠組みと歳出管理
  • 政府間財政移転
  • 自主財源(土地を活用した財源確保や土地開発利益還元(LVC)を含む)
  • 民間・商業資金の活用

 

課題の抽出

1週間にわたるTDDプログラムの初日には、参加者たちが各自治体が直面する財政上の課題を共有しました。共通の課題として、公共サービスへの資金不足、税収管理の脆弱性、中央集権的で古い規制や枠組み、税収創出計画の欠如、低い信用力、債務管理の非効率性、地方自治体職員の能力不足などが挙げられました。

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いくつか共通の課題が浮き彫りになった

 

TDDの主なプログラム

このTDDで参加者たちは主に、日本の先進的な地方財政システムについて学びました。日本には、強固な官民パートナーシップ、強靭な借入れ市場、強力な財政監視システムがあります。主なハイライトは以下の通りです:

夕張市の事例:日本の地方財政ガバナンス改革の契機となった、2007年の夕張市の財政破綻の事例を学びました。日本ではその後、地方自治体の財政健全性を守るための全国的な監視システムが設立されました。

横浜市の事例:横浜市における固定資産税と都市計画税の課税評価について学び、南区役所を訪れ日本の統合型「ワンストップサービス」を視察しました。

クリーンプラザふじみ:調布市と三鷹市の広域自治体連合が運営する廃棄物処理施設の視察を通じ、自治体間の協力と官民連携の効果的なモデルについて学びました。

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横浜市による具体的で実用的な固定資産税に関するプレゼンテーション

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民間活用のベストプラクティスとしてクリーンプラザふじみを視察

 

さらに、IFCによるグローバルな借入市場と公共部門の投資枠組みについてプレゼンテーションも行われ、参加者たちは商業ローンや官民連携(PPP)実施に至る前の、厳格な信用評価と健全な財政計画の重要性について学びました。インフラプロジェクトの資金調達手段として、優遇貸付、保証、補助金を含むブレンデッド・ファイナンスのアプローチも議論されました。

 

主な学び

参加者たちは今回のTDDでは以下の重要な学びが得られました。

都市化は両刃の剣:都市化は経済成長とイノベーションを促進する一方で、支出の増加とサービス需要の高まりを引き起こし、収入と支出のバランスを崩す要因となります。

財政ギャップの解消:都市は持続可能な地方財政を実現するため、多角的なアプローチを採用する必要があります。これには以下の内容が含まれます:

  1. 効果的な地方政府間財政移転システムの確立
  2. 土地ベースの融資などによる地方税収の強化
  3. PPPを通じた民間の投資活用
  4. ガバナンス、信用力、コスト回収メカニズムの強化

日本のモデル:日本の地方財政システムは、中央政府の強力な監督と地方自治のバランスを特徴としています。地方自治体は国家税収の約40%を徴収し、地方自治体金融公庫(JFM)などの機関を通じて長期低金利の融資を活用できます。夕張市の危機を契機に、地方レベルでの財政健全性と責任を重視した全国的な改革が実施されました。

 

実施に向けた具体的な戦略

参加者は、各国で実施する具体的な計画を立てました:

  1. 地方財政の多様化戦略の策定
  2. 税収の効率化と自主財源の拡大
  3. 成果連動型補助金管理能力の強化
  4. 予測可能性と公平性を確保するための公式に基づく資本投資配分の実施
  5. 包括的な債務管理枠組みの確立

これらの措置を実施することで、都市は財政基盤を強化し、不可欠なインフラとサービスの提供を確保し、より住みやすく回復力のある都市環境の実現に貢献できます。

 

参加者の感想

「私たちは、地方自治体が自主財源の活用と価値の最大化を可能にし、民間融資やPPPを最大限活用してより多くのリソースを確保し、住民へのサービス提供を実現するための2つの政策を推進したいと考えています。」

    ベイアニ・アガビン(フィリピン財務省次官)

「このTDDは、世界各国で実施された成果連動型補助金や収入増強戦略から学び、理解する非常に良いプラットフォームを提供してくれました。私たちが持ち帰る教訓は、成果評価に基づく補助金が、成果の指標を明確に定義する点で非常に重要であるということです。」

    シボンギレ・マジブコ(プログラムマネージャー、都市支援プログラム、南アフリカ共和国財務省)

 

今回のTDDで紹介された横浜市の固定資産税のケーススタディは、TDLCの出版物となっています。ぜひ合わせてご覧ください。

 

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各自の行動計画を自国に持ち帰った参加者たち

 

このTDDの写真はこちらよりご確認いただけます。