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特集2025年5月20日

教室から道路まで:ザンビアとケニアの住民が実現した変革

概要

  • ザンビアとケニアで、日本社会開発基金(JSDF)と世界銀行の支援を受けた2件のイニシアティブが進められ、草の根レベルの人々の参加と現地の能力強化というコミュニティ主導のアプローチが、インフラ投資のインパクトを高めることを実証。
  • ザンビアでは、コミュニティ主導の社会的説明責任プロジェクトが、学校のガバナンス改善、出席率の向上、学習環境の安全性と包摂性を促進。
  • ケニアでは、日本の道路補修技術により、農村部の接続性が向上し、若者と女性を中心とする住民が中小企業を立ち上げ、地域開発への参加を促進。

ザンビア農村部の保護者たちはもはや傍観者ではありません。学校の指導者に説明責任を求め、予算の執行状況を追跡し、自ら校舎の建設まで手がけるようになっています。一方、ケニアでは、日本の道路補修技術が道路の穴の補修にとどまらず、事業の立ち上げ、子どもたちの登校、失業中だった若者の起業につながっています。

2つの国の抱える課題は大きく異なっていますが、1つの力強い真実があります。それは、コミュニティが主導権を握れば、真の変化が起こるということです。

日本社会開発基金(JSDF)と世界銀行の支援を受けたこれらの取組みは、草の根の活動と賢明な投資を組み合わせると持続的なインパクトを生み出すことを証明しています。

ザンビア:監視役から変革の担い手へ、保護者が教育改革を牽引

ザンビアの辺境地域では、静かながらも力強い変革が始まっています。保護者や地域住民が、子どもたちが登校するだけでなく、学校で確実に成長できるよう取り組んでいます。そのために支出を監視し、欠勤や欠席を減らし、さらには改善のために自分たちの資金を持ち寄っています。

成功を可能にしたのは、「発言力と説明責任:地域の行政サービス向上のためのコミュニティ・エンパワーメント」プロジェクトです。このプロジェクトにより、8万4,000人以上の住民(半数は女性)が、コミュニティ・スコアカードや公共支出追跡などの社会的説明責任ツールのスキルを身につけました。

トレーニングを受けたコミュニティの社会的説明責任委員会が、学校のグラントと予算を追跡し、教科書と机の配布を確認し、教師と生徒の常習的欠勤や欠席を減らし、学校建設プロジェクトの監督まで行っています。

「コミュニティが関与を深めたことで、学校の施設とリソースが改善されました」と、タフェラジコ小学校のウィリアム・バンダ校長は話します。「地域社会の参加によってトイレが3つ作られ、今では300以上の机があります。学校はとても大きな恩恵を受けています」 

コミュニティの参画は、以下の通り目に見える成果を上げています。

  • 学校の在籍者数が増加:女子を中心に中退者が減少。
  • 10代の妊娠が減少:学校の安全性が高まったことで中退者が減少。
  • 地域社会がステップアップ:人々が遊び場をつくり貯蓄グループを組織。

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ザンビアのカテテにあるカフンカ全日制中学校の生徒たち © Brad Simmons /世界銀行

生徒と教師の欠勤や欠席の減少、在籍者数の増加、10代の妊娠の減少といった改善は、教師の説明責任の強化、保護者と学校の間のコミュニケーション強化、女児を中心に子どもを学校に通わせることの重要性に対する地域社会の理解の高まりによるものです。

ただし、その恩恵は教育分野にとどまりません。地域社会が主体性をもって取り組んだことが、より広範な市民参加を促進し、有意義な方法で女性のエンパワーメントに貢献しています。例えば、カフンカでは、社会的説明責任委員会の女性たちが、地域社会の取組みに資金を提供し、委員会活動の長期的な持続可能性を強化するため貯蓄グループを設立しています。地域社会は、自らの資金で遊び場や寮を建設するなど、安全性の向上、若年妊娠の減少、定期的な登校に役立っています。

ケニア:一つひとつの道路の舗装で将来への道を切りひらく日本古来の技術

ケニアのメル郡では、雨季になると道路が通行不能になり、農家は孤立し、子どもたちは登校できなくなります。劣悪な道路状況は、長年にわたり開発の進展を妨げ、コミュニティは基礎的サービスや経済的機会から孤立していました。しかし今、低コストで日本古来の技術である「土のう」が、この状況を好転させようとしています。土を詰めた袋で道路を補強する技術です。

日本のNGOである道普請人(CORE)が実施する「生計機会の向上と十分なサービスを受けていない都市部地域社会のアクセス向上」プロジェクトを通じて、住民は低コストで労働集約型の道路補強技術である「土のう」の研修を受けています。

プロジェクトにより、全長26kmの生活道路が整備され、当初の目標である50kmを上回る60km以上のルートを6万人以上が通行できるようになりました。これにより、6万3,000人以上にとって市場、学校、医療施設へのアクセスが劇的に改善され、今では63%の人が基礎的サービスへのアクセスが向上したとしています。

フェイス・カリミさんのような地元住民にとって、その変化は個人的に大きな恩恵となりました。

「この先の道は、これまでひどい状態でした」と彼女は振り返ります。「歩くことさえできませんでした。雨が降ると滑りやすくなり、丘や谷があるので通ることができませんでした。でも今では、みなさんのおかげで道が整備され、通れるようになったので、とても感謝しています」

インパクトは地域社会に活力を与えています。

  • アクセスの改善:道路が整備されたおかげで、今では6万3,000人以上の住民が市場、学校、医療施設に通行可能。
  • 雇用が増加:女性や若者にとっては、ビジネスやトレーニングの新しい機会が仕事の増加に直結。
  • 学校の出席率が上昇:より多くの子どもが雨季でも定期的に登校。

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ケニアのメル郡で土のうを使う建設現場での作業員 © Brad Simmons /世界銀行

プロジェクトのおかげで、道路沿いに165の新規事業が生まれ、400人以上の研修生がバイクタクシーから畜産ベンチャーまで、小規模事業を立ち上げました。道路が整備されたことで移動時間が短縮され、現在では住民の37%が基礎的サービスとメルバイパスに15分以内でアクセスできるようになりました。学校の出席率は、特に雨季に増加し、リスクの高い若者の関与を通じて治安が向上しました。

注目すべきことに、この取組みの下で、1,250人の地域住民(595人が女性)がトレーニングを受け、50以上の零細・小規模企業が立ち上げられるなど、当初の目標を大幅に上回る機会が創出されています。

プロジェクトは、日本の支援と世界銀行の専門知識が互いに補完し合い、永続的な影響を与える持続可能で地域に根ざしたリューションを生み出せることを示す明確な例です。

共通する教訓:現地でのソリューションとグローバルな支援

ザンビアとケニアのプロジェクトは異なる開発課題に取り組むものですが、どちらも市民参加の力を示しています。どちらの国でも、JSDFが支援する取組みが、より大規模な国際開発協会(IDA)の活動を補完してきました。世界銀行の低所得国向け基金であるIDAが、学校や迂回道路の建設に資金を提供する一方、JSDFの投資は、インフラ投資が永続的で包摂的な成果につながるよう役立てられています。

ケニアでは、IDA資金によるメルバイパス・プロジェクトにより、主要な交通回廊が整備されました。JSDFが支援するこの取組みは、地域の生活道路を整備し、住民がより大きな交通網に接続できるようにすることで、脆弱なコミュニティの格差を埋める役割を果たしました。

ザンビアでは、JSDFが支援する活動の一部が、ザンビア教育強化プロジェクトの支援の下で建設された学校において展開されています。IDAの投資がインフラと物資を提供する一方、JSDFの支援により「需要サイド」が強化され、学校インフラが学習成果の向上につながるよう透明性、参加、説明責任が促進されています。

より大きな教訓:受益者「のための」ではなく、受益者「と共に進める」開発

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ザンビアのブブウィにあるタフェラジコ小学校の生徒たち © Brad Simmons /世界銀行

ザンビアとケニアでの事例は、持続可能な開発成果を導く上でのコミュニティの関与の重要性を浮き彫りにしています。しかし、この教訓はザンビアやケニアにとどまりません。援助の未来への青写真です。

  • コンクリートだけでなく、人にも投資を。
  • コミュニティを信頼しつつ確認もしながら、賢明に支出する。住民は、自らのコミュニティで何がうまくいくかをよく理解している。必要な変更を認める。
  • 成功測定の目安は、投入した資金の額ではなく、人々の暮らしにもたらされた変化。

メル郡のある受益者は、この道は彼らのために作られたのではなく、彼らと共に築かれ、前進するためのツールを与えてくれたのだと非常に雄弁に語りました。

日本社会開発基金(JSDF)と世界銀行の支援を受けたこうしたプロジェクトは、開発がコミュニティのオーナーシップと包摂的な参加を土台としている場合、より効果的であるだけでなく、より強靭で持続的なものになることを証明しています。

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