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特集 2020年8月5日

人事が語る~グローバルキャリア構築のための処方箋~ ブログシリーズ 第3回 空席情報を読み解く (戸崎智支 HRビジネスパートナー)

日本人が世界銀行に入行する入り口として一般的なのは、第一回の記事で報告させていただいたリクルートミッション、2020年は4月に募集が開始され現在選考中のジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)とミッドキャリアプログラム、世界的に国際開発人材の登竜門ともういうべきヤング・プロフェッショナル・プログラム(世界銀行グループYPP)などの採用プログラムです。リクルートミッション等日本人向け各種採用プログラムが開始された2010年以降は、日本人のうち、8割から多い年で9割以上がこうした特定の採用プログラムを通じて職員になっています。ただし、世界銀行全体で見ると、こうしたプログラムを通して採用される職員はむしろ少数派で、大多数は世界銀行の採用ウェブサイトに公告される空席補充を通じて採用されています。一方、日本人の応募は、残念ながら世界銀行グループのみならず国際機関の空席への割合的に極端に少ないのが現状です。今回、より多くの日本人に空席への応募に関心を持っていただきたく、空席公告にまつわる話をいくつかご紹介させていただきます。私も国際機関へは空席公募を通じて転職していますので、少しでも参考になればと思います。
 

空席は内部の候補者で埋まってしまうのか

空席に応募したいが、外部から応募して果たして採用される可能性はあるのかという質問を頻繁にいただきます。もちろん可能性はあります。世界銀行をはじめほとんどの国際機関では空席補充が必要な場合に、募集を内部のみに限るか、もしくは外部にも公募するか選択します。現役職員しか応募ができないポストは、内部のイントラネットにのみ掲示され、外部候補者の目に触れることはありません。つまり空席が一般公募されている場合は、外部候補者を選考の対象にしているということです。もちろん、それでも現役職員やコンサルタントなど組織内部からの候補者の応募や他の国際機関からの応募もありますが、外部に公募されているポストの選考では、その組織に属しているかどうかよりもTORで求められている要件を満たしていることが重要視されます。したがって、もしご自身の経験に合致した空席公募を見かけたら迷わず応募されることをおすすめします。

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(世界銀行の空席公告の例、世界銀行サイトhttps://www.worldbank.org/en/about/careersより)

 

世界銀行のキャリアポータルに加えLinkedInやエコノミスト誌面等のメディア媒体に公示されているような空席ポストは特に外部候補者をターゲットにしている求人です。例えば、私がこの記事を書いている今日現在、45のポストが世界銀行のLinkedIn求人ページに掲載されています。特に採用部署の職員が自らのLinkedInアカウントで空席情報を拡散しているケースもあります。こういったポストは外部候補者がショートリスト、そして採用に至る可能性の高いポストと言えるでしょう。私も昨年人事部内で空席が出た時に、世界銀行の外からも広く候補者を募る方針を聞いていたので、LinkedInで紹介したことがあります。実際にそのポストは世界銀行外で勤務していた人事専門家が採用されています。

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(写真:筆者のLinkedInプロファイル内の求人紹介ページから)

 

自分の経験にぴったりの空席を見つけるためには

空席公募では、自分の専門や経験のない分野に数だけ応募してもショートリストの確率が上がることはありません。ある程度時間をかけて志望する機関、部署の採用動向を分析し、自分の専門や経験レベルと合致したポストを見極めて応募することが第一歩です。職種や専門にもよりますが、各分野で専門家として活躍している方であれば、求人動向をモニタリングしているうちに「この空席はまるで自分のためにあるようだ」というポストと巡り会うことがあります。そうしたポストではショートリストされる可能性が高くなると言えるでしょう。

私は、空席公募を通じて前職の国連機関に採用されましたが、国際機関への転職を決意した頃は、国際機関の人事部のエントリーレベルのポストからマネジメントのポストまで、空席が出るごとにアプリケーションを提出していました。多国籍企業にアメリカ本部で採用され、本社内ポストをいくつか経験し現地事務所での駐在も経験していたので、国際機関にもショートリストされるはずと、たかを括っていましたが、一向にショートリストされることはありませんでした。自分なりにリサーチし国際機関の人事部ではより業務が細分化しており、単に人事専門家、というくくりから一歩進んで、例えば、採用担当、給与報酬担当、トレーニング担当など強みを明確にする必要性を感じました。私の場合は人事の中でも、人員計画策定、採用、HRアナリティクスのエリアが強かったので、そうした強みを活かせるようなポストが空席になるのを虎視淡々と狙いました。いざそういったポストが公告されたときには、アプリケーションもそういった強みを強調しました。このようなことを繰り返すうちに、人事の中でも特に自分の経験に合致したポストにショートリストされ面接に呼ばれるようになり、結果として国連機関の人事職に採用に至ったのです。
 

まとめ

国際機関の空席公募に関しては、選考前からポストが内部の職員で埋まっているという印象を持っている方も多いかもしれませんが、そういったことはありません。また非常に倍率が高く、応募しても書類すら見られていないのではないかという印象があるかもしれません。実際にポストによっては数百通のアプリケーションが提出されますが、TORが求める専門や経験にあてはまる候補者となると、数名しか候補者がいないことがあります。求人動向をモニタリング、分析していると「この空席はまるで自分のためにあるようだ」というポストに出会うことがあります。世界銀行グループをはじめ国際機関を目指される方はぜひ粘り強く、ご自身の専門にぴったりの求人を見つけてみてください。

 

筆者略歴

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戸崎智支 人事総局 HRビジネスパートナー
Satoshi Tozaki, HR Business Partner

早稲田大学政治経済学部卒業後、鉄道会社、外資系会社勤務。その後アジア経済研究所開発スクール(IDEAS)を経て、コーネル大学にて産業労働関係学修士号を取得。多国籍企業の人事マネージャーとして北アメリカ、東南アジア、日本法人等で勤務後、2014年に国連に移り、国連人口基金(UNFPA)ニューヨーク本部人事戦略および分析担当官を歴任。2016年に採用担当官として世銀に移籍。金融、保健、環境、およびインフラ関連の専門家、エコノミストの採用を担当。2018年よりHRビジネスパートナーとしてクライアントサービスチームに異動。日本人リクルートミッション事務局運営担当も歴任。世界銀行グループにおける様々なグローバル人事・ダイバーシティイニチアチブに携わる。



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