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特集2009年10月26日

今千春 世界銀行 南アジア地域総局 資金管理ユニット 資金管理担当官~第7回 世銀スタッフの横顔インタビュー

アラスカで鮭を獲っていたこと、スポーツでの全米トーナメント出場経験など、その静かで落ち着いた話しぶりからは想像もつかないようなエピソードを次々に披露してくれた今さん。『挫折を感じたことはない』との言葉や、大学からストレートに世銀への入行を果たしたそのキャリアから、一見ラッキーで何の苦労もない道のりだったかのように受け取られがちだが、お話を聞いているうちにスポーツで培ったポジティブシンキング、好奇心や向上心を忘れないまっすぐで魅力的な人柄が伝わってきた。苦労を苦労と思わず、常に新しいことへのチャレンジを恐れないところに、彼女の強さがあるのだろう。入行後も着実な努力を続け、現在のポストで奮闘する今さんに話を聞いた。

Chiharu Ima

The World Bank

神奈川県横浜市出身。中学、高校時代とアメリカのアラスカ州アンカレッジ市に滞在。上智大学外国語学部卒。1996年世界銀行グループ入行、世界銀行研究所に所属。2003年ジョンズホプキンズ大学でMBA取得。2008年より世銀の南アジア地域総局資金管理ユニットに移動し、アフガニスタン及びブータン担当チームの資金管理・運営を担当し、現在に至る。趣味はスポーツと音楽。

豊かな自然に囲まれたアラスカが、私の原点

いま私がこの仕事についているのは、多感な中学・高校時代をアラスカで過ごしたことが大きいかもしれません。家族の転勤で移り住んだアラスカ州アンカレッジ市は、とても自然が豊かなところ。「ひとり1日3匹まで」というように制限はあるんですが、自分たちで鮭を獲ることができるんです。現地では鮭のステーキやイクラを日常的に食べていました。テニスのラケットの上で薄い膜をはがしてイクラをバラしたりもしたんですよ。鮭にもいろんな種類があるって、皆さん知っていましたか?そんなわけで、鮭には今でもちょっとうるさいんです(笑)。釣りやハイキング、キャンプなど、日常的に行っていたことを通して自然の豊かさに触れ、同時にこの美しい自然を守ることに関わっていきたいな、というばく然とした思いを抱くようになりました。

The World Bank
また、高校時代に仲良くなったアフリカ系アメリカ人の友人たちには、本当に色々な影響を受けましたね。彼らと会話をしていると、人種差別や社会問題についての話題が自然に出てくるんです。友達の影響でレゲエが大好きになり、ボブ・マーリーの歌にもすごく影響を受けましたね。貧困や人種差別を歌ったものが多くて本当に考えさせられるんですよ。「War」は今でも大好きな歌なんです。一緒に出かけたときに、友達がタクシーを止めようとしてもまったく止まらないのに、私が同じようにするとすぐ止まったりと、些細な差別を感じることも多くて。日本では、よくも悪くもみんなが同じような環境のもとで生活している。けれど例えば片方しか親がいなかったりする友達も多くて、今まで当たり前と思っていたことが、実は当たり前ではないんだなぁ、ということに気づかされショックを受けました。それから、アラスカという土地柄、エスキモーの人たちに対する国の福祉政策の誤りや、差別というものも直に目にして、そんな経験から人々の役に立ちたい、特に社会的地位が低く「声」をあげにくい人々の「声」を皆に伝えたい、と強く思うになったんです。

留学、インターン、そして契約へ

上智大学の外国語学部に入ったのは、関心があった開発経済や国際関係を副専攻で取ることができたから。在学中にブラジルで開催された地球サミットについて調べたりしているうちに、国際開発関係の仕事がしたいという思いが段々固まっていき4年生のときに姉妹校のひとつ、ジョージタウン大学に留学しました。決め手は、外交関係や開発関係の授業が充実していたこと、ばく然と興味を持っていた世界銀行のそばという好立地。外交や開発、また、高校時代から興味のあった、公民権運動などに関する勉強をしました。

そんな中、世界銀行の方と知り合う機会があり、インターンのお誘いを受けたんです。会議の準備やリサーチのお手伝いなどをさせていただいたんですが、関わっていたのがまさに自分が勉強している分野だったこともあって、とても興味深い経験でした。そうしているうちに留学期間も終わり、帰国の準備をしているときに、ありがたいことに1年の短期契約のお話をもらったんです。すぐに日本に帰って2週間で卒業の手続きを済ませ、世界銀行に入行しました。大学を卒業してそのまま、というケースはあまり聞かないので、自分でも非常に運がよかったと思いますね。

フルタイムで勤務しながらMBAを取得

キャリアをスタートさせたのはよかったんですが、やはり短期契約ということで不安がないわけではなかったし、会計やファイナンスにも興味があったので、MBAを取得するため近くのジョンズ・ホプキンス大学に働きながら通いました。もちろん仕事のほうも忙しかったので大変でしたし、ほぼ仕事と勉強だけの生活という感じでしたが、その分やりがいがありましたね。「遊ぶのは後でいくらでもできる!」と思ってました(笑)。その間も短期契約を更新するという形で勤務を続けていたのですが、MBAを取得して、直後に正職員のお話をいただきました。

少しでも発展途上国の役に立てることが喜び

The World Bank
入行してからはしばらく世界銀行研究所(World Bank Institute: WBI)で、日本またその他の国の拠出金管理を担当していました。世界銀行のプライオリティーとドナーのプライオリティーが合うような資金配分をするのに気を遣いましたね。また副総裁がドナー諸国に出張に行くときの資料を作成したり、拠出金運営に関する枠組みや規定の取り決めなどにも関わっていました。2008年11月から南アジア地域総局に異動し、現在はアフガニスタン及びブータン担当チームの資金管理を担当しています。それぞれの国のプログラムに予算を配分、プロジェクトの進み具合のモニタリング、アフガニスタンにある世銀事務所の予算管理、また、運営に関わったりしています。例えば現在治安面が心配されるアフガニスタンでは、スタッフの安全を考えて防弾車を購入したり、セキュリティを雇ったり、とにかくお金が動くことに関してはすべて関わっていますね。ブータンでは、世銀事務所を開くための準備などのお手伝いもしています。いわゆる裏方的な仕事で、前に出たり注目を浴びたりといった華やかなタイプの仕事ではありませんが、自分のスキルを活かせるし、少しでも発展途上国の開発に貢献できているという実感があるので、自分にはすごく合っている仕事だと思っています。また、世界銀行で働いているとやはり色々なバックグラウンドや人種の人たちと一緒に働くことになるので、そういった面で刺激を受けているというメリットはすごく感じますね。今後の仕事の目標としては、もっと現地で、クライアントと直に携わっていく仕事もしていきたいというところでしょうか。

全米トーナメントにも出場した無類のスポーツ好き

器械体操に始まって、水泳、バドミントン、バスケ、陸上、テニス、サッカー、競技スキー、と小さい頃から色々なスポーツをやってきました。高校時代にはバスケで奨学金を受けて大学に進みたいとまでも思っていました。諸事情で日本に帰りましたが、実現していたら違う人生があったかもしれませんね(笑)。好奇心旺盛なので、いろんなスポーツをやってみたくなってしまうんです。アルティメットフリスビーというバスケとアメフトを合わせたような競技では、全米トーナメントに進んだことも。最近は、サーフィンにはまっています。

スポーツを通して学ぶことは多くありますね。忍耐力、戦力的に考える力、チームワークなど。振り返ってみると、私は今までストレスや挫折をあまり感じたことがないんですが、それというのもなにか大きな決断をする前には徹底的に下調べをする性格と、スポーツのおかげなんじゃないかな、とつくづく思います。仕事においても、スポーツで学んだことがとても役に立ちました。あとは、特にアラスカ時代はスポーツを通して友人が増えていくことが多かったですね。言語や人種を超えて人をつなげてくれる、そういう力がスポーツにはあるんじゃないでしょうか。

必要なのは「パッションと専門分野」

今の若い人たちには、人生においてパッションを大切に、と言いたいですね。自分は何に興味があるのか、何がやりたいのかをきちんと見据えて、情熱を持ってそれを追求してください。日本の社会や教育システムというのは、ジェネラリストを育てるのは上手だけれど、専門家が育ちにくい傾向があるように思います。やはり世界銀行のような組織に興味を持っているなら、自分の興味がある分野に的をしぼって、専門性を高める勉強をするべきではないでしょうか。自分の専門分野を持ち、世界の専門家に勝るものを身につけられるかどうかが非常に重要だと思います。頑張ってください!

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