世界各地で、政府や地域社会が高まる気候リスクに対応するため、自然の力を活かしたさまざまな取組みを進めています。高潮被害を軽減するマングローブの再生、洪水を吸収する湿地の回復、気温上昇を和らげる都市緑化、斜面の安定化や飲料水源の保護を目的とした高地の森林保全など、その取組みは多岐にわたります。
図1:気候レジリエンスを高めるNBS施策
ブラジル・フォルタレザにおける緑を活用した都市インフラ
出典:世界銀行
世界各地で、政府や地域社会が高まる気候リスクに対応するため、自然の力を活かしたさまざまな取組みを進めています。高潮被害を軽減するマングローブの再生、洪水を吸収する湿地の回復、気温上昇を和らげる都市緑化、斜面の安定化や飲料水源の保護を目的とした高地の森林保全など、その取組みは多岐にわたります。
図1:気候レジリエンスを高めるNBS施策
NBSが社会・経済・環境にもたらす幅広い利点、そして気候変動に強い経済社会を構築する上での革新的な役割については広く認識されるようになりました。しかし、見落とされがちな重要な要素が一つあります。それはNBSを実現するための「政策」です。
この課題に対応するため、世界銀行のGFDRRは新たな報告書『防災レジリエンスのための自然の活用:自然を活用した解決策(NBS)を可能にするための政策ガイド』を刊行しました。本ガイドは、各国政府および世界銀行チームがNBSの導入促進、拡大、および持続に向けた国・地域レベルの政策を策定するための実践的なロードマップを提供しています。
政策はなぜ重要か
NBSへの世界的な投資は拡大しています。2012年から2024年にかけて、世界銀行は気候レジリエンスを目的としたNBS投資プロジェクト約250件に総額120億ドルを融資しました。これらのプロジェクトを通じて、460万ヘクタールの生態系が回復し、2,800万人以上が恩恵を受けています。
しかし、NBSをパイロット事業の段階から発展させ、レジリエンス強化や国際的な気候変動目標の達成に向けてセクター全体に広く根付かせるには、官民双方の投資を大幅に拡大することが不可欠です。
ここで障壁となっているのが、時代にそぐわない規制、縦割りのセクター政策、インセンティブの不足、規制・基準の実効性の欠如、そして多くのセクターでグレーインフラがいまだ優先されている現状です。NBSの拡大に向けて、公共政策は資金調達や制度面の能力強化と並ぶ重要な手段です。しかし、実態を変えるために必要な政策の改革は、依然として大きく立ち遅れています。
本ガイドはパラダイムの転換を目指しています。具体的には、適切な政策設計がいかにNBSの導入を可能にし、個別のプロジェクトを体系的な変革へと結びつけられるかを示しています。政策の工夫により、以下のことが実現できます。
この柔軟な3段階アプローチを活用することで、各国は自国の状況に応じた改革を進めながら、想定されるトレードオフにも慎重に対処しつつ、NBSの拡大に向けた取組みをより高い水準へと引き上げることができます。
新たな政策アジェンダ
本ガイドは、政策改革に向けた実践的なツールとして、各国があらゆる行政レベルおよび主要セクターで活用できる重要な政策手段を体系的に整理しています。
図2:本政策ガイドで提示される政策レベルと政策手段の概要
各セクターにおいて、政策改革を通じたNBSの統合と拡大は可能です。本ガイドは、1. 防災、2. 気候変動、3. 環境・生物多様性、4. 水、5. 農業・林業、6. 建築・土地利用・都市計画という、防災および気候レジリエンスへの貢献度が特に高い、6つの政策分野に重点を置いています。また世界銀行の優先的な開発分野であり、NBSの役割拡大が期待される交通、観光、エネルギー、資源採掘の各セクターにおけるNBS導入の機会についても取り上げています。以下は、本ガイドで紹介される主なケーススタディと知見の抜粋です。
政策をレジリエンスへつなぐ
各国は今、岐路に立っています。従来のグレーインフラへの投資を続けるのか、それとも生態系の力を活かして強靭な社会と経済を築く政策へと転換するのか、その選択が求められています。
本ガイドは、各国政府、世界銀行チーム、および実務関係者が次なる一歩を踏み出すための道標となるものです。セクター、都市、国を越えて自然の力を活かし、レジリエンスを強化するための実践的な政策手段を提案しています。
詳細については、報告書全文(英文)をこちらからご覧いただくとともに、GFDRRが推進する自然を活用した解決策の取組みもぜひご確認ください。