「成長のための都市計画と土地活用」に関する都市開発実務者向け対話型研修(TDD)の実施報告: 効果的な土地利用と都市計画による持続可能な成長の促進

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「成長のための都市計画と土地活用」に関するTDDハイライトビデオ


世界人口の過半数がすでに都市で暮らし、この割合は2050年には68%に達すると予測されています。都市は世界のGDPの約70%を生み出す一方で、エネルギー消費や温室効果ガス排出の多くを占めています。特にアジアやアフリカでは都市域が2050年までに4倍に拡大すると見込まれており、急速かつ計画性に乏しい都市化は、インフラ不足、土地権利の不安定さ、インフォーマル居住地の増大、社会的不平等の深刻化を招いています。土地と都市をどのように管理していくかは、各国にとって避けて通れない課題となっています。

こうした背景のもと、世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)は2025年10月27日から31日にかけて、東京・京都・大阪を会場に「成長のための都市計画と土地活用」をテーマとした都市開発実務者向け対話型研修(テクニカル・ディープダイブ:TDD)を開催しました。本研修は世界銀行の都市・地域計画および土地に関するコミュニティ・オブ・プラクティスとの連携により実施され、バングラデシュ、インドネシア、ナイジェリア、パキスタン、セネガル、タンザニア、タイ、ウズベキスタン、ベトナムなど9か国から、都市計画、土地管理、持続可能な都市開発に携わる65名の政策担当者や専門家が一堂に会しました。

参加国が抱える課題には多くの共通点があります。非公式居住地の拡大や土地権利の不安定さ、更新が追いつかないマスタープランや硬直化した制度、行政間の連携不足、専門人材や技術の不足といった構造的な問題は、都市の成長と変化に制度や組織が追いついていない状況を反映しています。こうした課題に対し、本TDDでは日本および世界の経験を比較しながら、土地と都市計画を統合的に進める制度設計や実装手法について集中的な議論が行われました。

日本の都市計画制度と区画整理からの学び

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日本の行政体制および都市土地・都市計画分野における政策アプローチを学ぶ参加者たち

研修では、日本全体の都市計画制度と土地区画整理事業についての講義も行われ、日本の都市づくりを支えてきた制度的枠組みが紹介されました。日本では、都市計画法と土地区画整理法を基盤として、用途地域制度、建築規制、都市交通との連携など、都市の拡大と再開発を計画的に進めるための明確なルールが整備されています。これらの制度は、日本の都市が秩序を保ちながら成長してきた背景を説明するものであり、制度改革を進めたいと考える多くの参加国にとって重要な示唆となりました。

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日本における土地集約や都心部再開発における民間セクター参画の重要性を紹介

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日本の都市計画制度と土地区画整理手法の概要が共有された

続いて、日本の具体的な都市整備の取り組みが紹介されました。京都では、100年以上にわたり土地区画整理事業が土地の再編と道路整備を支え、計画的な都市拡大を実現してきました。参加者が視察した伏見西部地区では、土地所有者との合意形成や地域の将来像に関する調整がどのように進められたか、また産業集積と住宅地のバランスをどのようにとってきたかなど、現場での実践的な知見が共有されました。

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京都市で進められている土地区画整理事業の現地視察のようす

東京の六本木ヒルズや大阪のうめきた地区も、官民連携による都市再生の代表的な事例として紹介されました。六本木ヒルズでは複雑な権利関係を整理しながら数百の土地を再編し、17年をかけて大規模な再開発を実現しました。うめきたでは、公共交通と緑地を核にした開発が進められ、都市の価値を高める官民協働のあり方として多くの参加者が高い関心を寄せました。

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大阪・うめきた地区における土地区画整理・都市再生プロジェクトの現地視察のようす

世界の都市計画・土地管理における知見

また、世界の多様な都市計画・土地管理の取り組みも専門家によるセッションで共有されました。ルワンダではデジタル土地管理システムが台帳整備や行政手続きの効率化に大きく貢献しており、インド・ケララ州の地籍データ整備と統合プラットフォームも行政の透明性向上に寄与しています。マドリードやアマラヴァティでは、歩行者中心の都市デザインや公共空間の再構築が紹介され、住民目線での都市づくりの重要性が強調されました。さらに、カナダやサンパウロの公共土地管理や開発権販売による開発利益還元など、都市計画と財源確保を一体的に進める制度設計の事例も議論を深めるきっかけとなりました。

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都市土地利用の管理に関する世界的な課題、機会、アプローチの概要説明を受ける参加者たち

こうした日本と世界の事例を踏まえ、参加者は土地情報のデジタル化が透明性や包摂性を高め、気候リスク評価や都市計画の迅速な意思決定に不可欠であることを改めて認識しました。また、日本の都市計画法や土地区画整理法のように明確で安定した制度があることは、都市の成長に必要な公共投資や民間投資を支える基盤となることも強調されました。さらに、都市の拡大と高密度化を両立させるためには、幹線道路ネットワークの整備、土地の共同化や再編、用途地域の柔軟な見直しといった多面的なアプローチが求められることが共有されました。

各国行動計画と今後の展望

研修の最終日には、参加国が自国の状況に合わせて行動計画を策定しました。土地台帳のデジタル化、都市計画制度の見直し、区画整理の導入、民間資金の活用、気候レジリエンスの統合など、TDDで得た知見を実際の改革にどのように結びつけるかが議論されました。これらの計画は、自国での改善に向けた重要な第一歩として位置づけられています。

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インタラクティブ・セッションの様子

参加者の声

「日本からの学びは、都市の土地管理の課題に対応するための政策・計画づくりに大いに役立っており、私たちの事務所の使命にも沿うものです。」

アヌポーン・ワンウィサデ タイ 国家土地政策委員会事務局 上級専門官(政策・計画アナリスト)

「学びは、私たちの地域計画において人を中心に据えるべきだということです。私たちは、地域住民や民間セクターを計画の段階からより多く関与させるほど、計画の実現性が高まることに気づきました。」

デオグラティアス・カリメンゼ タンザニア 土地・住宅・人間居住省 人間居住開発局 局長

「現地視察では、先進的なガバナンス、長期的な都市計画、そして戦略的なステークホルダー連携の重要性が浮き彫りになりました。」

ウム・カルソム・クーレ・エプス・セック セネガル 国土計画庁 空間計画局 局長

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TDDで得た知見を本国に持ち帰り、各国・各プロジェクトに活用していく

研修の写真はこちらをご覧ください。