アフリカにおける固形廃棄物の課題:持続可能な解決への道
東京開発ラーニングセンター(TDLC)の支援のもと、2018年に世界銀行がグローバルの固形廃棄物処理についてとりまとめたレポート「What A WASTE 2.0」によると、世界の廃棄物発生量は2016年の21億トンから2050年までの約10年間でおよそ年間37億6千トンに倍増すると予想されています。この驚くべき数字は単なる統計ではなく、都市衛生、環境衛生、気候変動に深刻な影響を及ぼす、迫り来る危機と言えます。最近の経済成長により、今後25年間で廃棄物発生量が3倍になると予測されているアフリカでは特に深刻です。人口増加、急速な都市化、急増する中産階級、消費パターンの変化といった要因がこの状況を生み出しています。
アフリカは地域特有の廃棄物管理の困難に直面しています。現在、アフリカで発生する廃棄物の90%以上が不適切に処理されており、地域のゴミ処理場は世界最大級です。固形廃棄物管理(SWM)は不可欠であるにも関わらず、自治体予算の20%以上を消費することも頻繁で、財政を逼迫します。さらに、廃棄物の回収率が低く適切な処理が行われていないため、環境にも悪影響を及ぼしています。
世界銀行は持続可能な廃棄物管理を優先課題とし、地域の国々と緊密に協力し、インフラ、ガバナンス、資金調達、セクターの開発に関する支援を提供しています。そしてそのパートナーであるTDLCはアフリカ諸国に対して、SWMの普及において培ってきた知見を提供してきました。
課題解決に向けた知見の共有:TDLCのアプローチ
TDLCは2024年5月27日から31日までコートジボワールのアビジャンで初の地域型テクニカル・ディープ・ダイブ(TDD)を開催しました。地域内の11カ国から参加者が集い、SWMの「基本に立ち返る」をコンセプトに、実践に重きを置いて実施しました。このTDDは現地視察やケースに基づいた相互学習を中心とした構成で、SWMにおける世界銀行都市チームや日本の知見、世界のベストプラクテスなどを提供しました。
今回の議論は、培ってきたSWMのアプローチをアフリカの状況に適応させるための戦略が中心となりました。日本の福岡市による「福岡方式」は埋立地管理における説得力のあるモデルとして、特に注目を集めました。福岡方式はコミュニティを巻き込み、地域で入手可能な資材の利用を重視しており、エチオピア、ケニア、モザンビークの参加者の共感を呼びました。
地域型TDDは、アフリカ独自のニーズに合わせた持続可能な廃棄物管理ソリューションの育成に向けた重要な一歩です。協業やイノベーション、共通学習を通じて、廃棄物管理の複雑さを克服することで、すべての人にとってよりクリーンで健康的な未来を築くことが可能となるのです。
主な課題と対応策
TDDでは参加した国々の貴重なインサイトとそれに対する対応策を生み出しました。
現地視察による具体的な学び
今回の現地視察では、固形廃棄物処理プロセスのそれぞれの段階にある施設を訪問し、参加者はSWMの全体像と同時に、各施設の役割や技術について理解を深めました。訪問したのはアビジャンの以下の施設です。
次なる発展に向けて
TDDで知識を得たことにより、参加者は以下をSWM課題解決に向けて正面から取り組むことにしました。
参加者の声
参加者たちは、政策実行のための具体的な知見が得られたTDDの成果に満足しました。
「TDDの経験で、事前回収センターと持続可能な収益モデルの必要性について認識しました。」
ー ウガンダ政府カンパラ市首都省次官 モニカ・エデマチュ氏
「アビジャンの埋立地の管理から得た洞察は、ダルエスサラームの廃棄物問題に取り組む上で貴重なものとなるでしょう。私たちは、これらの学びを必ず実行に移します。」
ー タンザニア、ダルエスサラーム市議会 固形廃棄物・天然資源・環境保全担当 エノック・タンボ氏