BRIEF 2026年1月16日

アジアの循環型経済推進に向けた都市廃棄物問題への対応策ーASCC 2025における世界銀行TDLCセッション

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2025年11月25日から27日にかけて、世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)のパートナー都市である横浜市において、アジア・スマートシティ会議(ASCC 2025)が開催されました。本会議は「循環型社会に向けて」をテーマに、都市リーダー、各国政府、開発パートナー、民間セクターなどが一堂に会し、アジア有数の都市協力・知識共有の場として、気候変動、公衆衛生、都市の住みやすさといった課題に対応するための循環型都市への移行の重要性を改めて示しました。

TDLCは会期を通じて積極的にその役割を果たし、開会式ではTDLCプログラムマネージャーのクリストフ・プッシュが横浜市や都市リーダーらとともに登壇し、持続可能で住みやすい都市の実現に向けた循環経済アプローチの重要性について訴えました。

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都市廃棄物と循環型社会を議論したTDLCセッション

ASCCの多彩なプログラムの中で、TDLCは「アジアの循環型経済推進に向けた都市廃棄物問題への対応策」と題した専門セッションを開催し、アジア各地の都市がいかに従来の線形型廃棄物管理から脱却し、拡張可能で包摂的、かつデータに基づく循環型アプローチへ移行するかについて議論しました。

セッションのハイライトの一つとして、世界銀行の次期フラッグシップ報告書であり、世界で最も包括的な都市ごみ(MSW)データベースとなる『What a Waste 3.0』の先行公開が行われました。廃棄物管理・循環型経済のグローバルリードであるクレメナ・イオノコヴァが、急速に変化するアジアの都市環境に特に焦点を当て、報告書の要点を紹介しました。

『What a Waste 3.0』からの主要メッセージ

プレゼンテーションの中でイオノコヴァは、都市廃棄物問題の規模と緊急性を強調しました。抜本的な対策が講じられなければ、世界の都市ごみ発生量は2050年までに約50%増加すると予測されており、その増加の大部分は低・中所得国で起こるとされています。廃棄物収集や適正処分をめぐる地域間格差、食品廃棄物が占める高い割合、そして都市廃棄物の不適切な管理がもたらす環境・気候リスクの深刻化なども論点となりました。

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イオノコヴァはさらに、都市廃棄物は経済発展の最も目に見える副産物である一方で、都市と人類の将来に対する最も過小評価されてきた脅威の一つであると指摘。その上で、循環型社会の実現には、廃棄物発生抑制、分別収集、リサイクル・資源回収、持続可能な資金調達、適切な政策枠組みを結びつけた統合的な都市廃棄物システムが不可欠であり、都市リーダーによる迅速な行動が求められると訴えました。

ウズベキスタン、フィリピン、パキスタンからの都市事例

本セッションでは、報告書の紹介に加え、ウズベキスタン、フィリピン、パキスタンからの都市レベルの事例が紹介され、各国・各都市が異なる状況の中でどのように循環経済の原則を実践しているかが共有されました。

  • ウズベキスタン:地域のエコハブとデジタルプラットフォームを組み合わせ、分別収集の促進やインフォーマルセクターの統合を通じて、ボトル・トゥ・ボトルのPETリサイクルを実現するヤンギユル市のパイロット事業を紹介
  • フィリピン:分別遵守率の低さや高い収集・輸送コストといった課題に対し、集中型・分散型の資源回収施設、移動式回収ユニット、住民参加型プログラムを組み合わせたメトロ・マニラの取り組みを紹介
  • パキスタン:世界銀行が支援するカラチ市の「固形廃棄物緊急・効率化プロジェクト(SWEEP)」を通じて進めている、オープンダンプの閉鎖、中継施設や衛生埋立地の整備、官民連携やカーボンファイナンスを活用した廃棄物発電・バイオガス事業の基盤構築について共有

 

いずれの事例においても、制度的な連携、持続可能な資金調達、デジタル技術、そして市民参加が、急速に成長する都市における循環型ソリューションの拡大に不可欠です。

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政策・技術選択をめぐる活発な議論

セッションの最後には質疑応答が行われ、所得水準と廃棄物発生量の関係、電気自動車用バッテリーなど新たな廃棄物への対応、高い収集コストを抱える都市における廃棄物発電(WtE)の位置づけなどについて、多くの質問が寄せられました。

これに対し、WtEは単独の解決策ではなく、統合的な廃棄物管理システムの一部として検討されるべきであるという回答が共有されました。現在、世界銀行では、WtEの計画、資金調達、実施に関する実務的な指針を提供するテクニカルノートの策定を進めています。

アジアにおける循環型都市の推進に向けて

グローバルデータ、地域分析、都市事例を組み合わせた本TDLCセッションは、都市廃棄物管理をアジアにおける循環型社会推進のための重要な切り口として位置づけました。


『What a Waste 3.0』の先行公開を通じ、世界銀行は、都市がより強靭で包摂的、かつ循環型の未来へと移行していくために、エビデンスに基づく知見とスケーラブルな解決策を提供し続ける姿勢を改めて示しました。