カブール、2025年10月23日 — 世界銀行グループが本日発表した報告書によれば、2025年8月31日にアフガニスタン東部で発生したマグニチュード6.0の地震において、建物およびインフラに対する直接的な物的被害は推定1億8,300万ドルに達した。同地震は、アフガニスタンにおいて1998年以来最も多くの犠牲者を出した災害であり、約2,000人が死亡し、推計50万から130万人が深刻な影響を受けた。
「アフガニスタン自然災害迅速被害推定報告書(Afghanistan Global Rapid Post-Disaster Damage Estimate Report)」 は、緊急対応、復旧計画および戦略的な災害リスク軽減のための重要な知見を提供するものである。本報告書では、物的資産に対する直接的な経済被害に焦点を当てた、迅速かつ遠隔で実施可能な、モデルベースの確立された推定手法が用いられた。災害による生産または所得の損失、ならびに復旧および再建に要する費用は、同報告書には含まれない。
直接経済被害総額は1億8,300万ドルと推計され、2023年度のアフガニスタンのGDPの1%強に相当する。最も影響を受けたのはクナル州とナンガルハル州であり、両州で被害総額の97%を占める(被害額はそれぞれ1億3,470万ドルと4,260万ドルと推計される)。
住宅が全被害の約35%を占め、最も甚大な被害を受けた。これに次いで、非住宅建築物および農業セクターの被害が大きかった。被災した多くの住宅は、日干し煉瓦および石造りの建築構造、重い屋根ならびに弱いモルタルを用いていたことから、倒壊の危険性が非常に高かった。農村部の特性上、穀物貯蔵施設および家畜小屋を筆頭に農業セクターの損失が特に顕著であった。保健医療および教育セクターも被害を受け、必要不可欠なサービスに影響が生じた。
今回の自然災害迅速被害推定(GRADE)に際し、社会的脆弱性の予備的把握を目的に「社会経済的脆弱性指標(Socio-economic Vulnerability Index)」が開発された。限定的な保健医療サービス、不十分な市場アクセス、ジェンダー不平等、紛争、水と衛生(WASH)システムの未整備など、社会に内在する脆弱性は地震による物的被害を深刻化させ、復旧を遅らせる可能性が高い。こうした脆弱性の重なりが災害の影響の増幅につながることからも、最もリスクの高い地域への重点的な支援の必要性が示唆された。
「世界銀行は、アフガニスタン東部で発生した壊滅的な地震の被害を受けたすべての人々に対し、深い連帯の意を表する」と、世界銀行アフガニスタン担当カントリー・ディレクターのファリス・ハダド=ゼルボスは述べた。「我々の優先事項はパートナーと緊密に連携し、緊急対応、復旧、そして長期的なレジリエンス向上を支援し、特に女性および子どもといった最も脆弱な人々に不可欠なサービスを届けることである。我々は、アフガニスタンの地域社会がより強く安全に再建され、強靭な未来へと歩むことを引き続き支援していく。」
同地震発生から数日以内に、世界銀行は既存のプロジェクトから最大1,500万ドルを確保し、被災地域への緊急支援を行った。例えば、世界銀行の「地域のレジリエンスおよび生計向上プロジェクト」では、(被災者を復旧事業に雇って賃金を支払う)キャッシュ・フォー・ワークの取組みが実施され、村道、灌漑用水路や貯水池、擁壁、飲料水供給施設等、基礎的なサービスの復旧が進められている。また、社会的補助金は貧困層や脆弱世帯の生活を支えている。さらに「アフガニスタン保健医療緊急対応プロジェクト」では、対象となる24の医療施設に対し、医療物資の供給および救命ケアの提供が実施されている。
復旧および再建に要する費用は、直接被害額を大幅に上回ると見込まれる。今回のGRADE報告書は、追加的な人道支援のニーズに対応し、ジェンダーと紛争の力学を考慮するとともに、広範な社会経済的混乱に対処できるような重点的な復旧戦略の重要性を強調している。
世界銀行と災害リスク管理
災害は貧困層や脆弱な立場にある人々に最も深刻な影響を及ぼす。世界銀行は10年以上にわたり、クライアント国が自然災害への曝露を評価し、災害リスクに対処し、自然災害に対するレジリエンスを強化することを支援してきた。「自然災害迅速被害推定(GRADE)」手法は、災害発生後2週間以内に、主要セクターの物的被害を初期的にかつ、迅速に推定するものである。今回のアフガニスタンに関するGRADE迅速被害推定は、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)および日本の財務省の支援を受け、「日本−世界銀行防災共同プログラム」の枠組みの下、世界銀行と連携して実施された。