天然資源の保護が一部のセクターにもたらす大きな恩恵
ワシントン、2025年9月1日— 世界銀行は新報告書「開発の抜本的見直し:居住可能な地球の経済学」を発表し、世界人口の90%が土壌劣化、大気汚染、水不足のいずれかに直面しているが、自然システムの復元は可能であり、大きな恩恵をもたらし得る、との見解を示した。
低所得国だけでも、10人に8人が、きれいな空気、清潔な水、劣化していない土地のすべてを欠いた状態で生活している、と報告書は述べている。これは経済成長と機会創出にとって深刻な制約となっている。新しいエビデンスによれば、森林消失は降雨量を減らして土壌を乾燥させ、干ばつを悪化させることで、数十億ドルの損害を招いている。報告書はまた、肥料が収量を増やす一方で、一部の地域では過剰使用が作物や生態系に害となり、年間3兆4,000億ドルもの損害を生む窒素パラドックスを明らかにしている。さらに、大気と水質の汚染は、健康、生産性、認知力を静かに損ない、人々の潜在能力をむしばんでいる。
しかし、適切に管理されれば、自然は雇用を創出し、経済成長を促進し、強靱性を強化することが可能である。天然資源の有効利用を進めれば、汚染を50%削減できる可能性がある。窒素肥料の使用をめぐり農場レベルで慣行を改善すれば、作物収量を増やしながら、コストの 25 倍の便益をもたらすことが可能である。水と衛生サービスの改善は人々の命を助けることにつながる。使用時に水を塩素処理することで、水関連の問題で幼くして亡くなる子どもの4人に1人を救える可能性があるからだ。排出量を取引する「汚染市場」は大気汚染を減らすだけでなく、費用対効果が極めて大きく、1ドルを費やすごとに約26~215ドルの利益をもたらす。
「世界中の人々や地域社会は、環境危機だけでなく、経済危機にも直面している。とはいえ、朗報がある。ソリューションは存在するのである。各国がただちに適切な投資を行えば、自然システムを回復し、成長と雇用に大きな恩恵をもたらすことが可能である」と、世界銀行のアクセル・ヴァン・トロッツェンバーグ上級専務理事は述べた。「報告書は、環境課題を制約としてではなく、よりスマートな開発の機会としてとらえるという新しい視点を提供している」
各国は、これ以上の環境悪化なしに経済を成長させることが可能であることを実証してきた。そうした国々の経験から得られた教訓は、次の 3 つの重要な分野の重要性を示している。
情報:大気汚染モニターから衛星画像まで、リアルタイムデータは政府による課題特定、国民のエンパワーメント、説明責任の遂行に役立つ。
調整:政策は連携して機能させるときに最大の効果を発揮する。システムアプローチは、セクター間での取組みを調整できる。また、ある地域で汚染を削減しつつ他の地域では汚染を増加させるなど、意図しない結果を回避し、効率性と公平性の間でバランスをとるためにも役立つ。
評価:推測より学習が重要である。定期的な評価により、政策を軌道に乗せ、効果的な取組みの規模を拡大し、改革が変化する現実に適応できることが確実になる。
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