2025年6月26日、パリ - 世界銀行グループと国際原子力機関(IAEA)は本日、途上国における安全で、確実かつ責任ある原子力エネルギーの活用を支援するための協力に関する合意を締結した。このパートナーシップ協定は、アジェイ・バンガ世界銀行グループ総裁とラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA 事務局長によって署名され、過去1年間にわたる両機関の複数の連携を正式な形にしたものであり、数十年ぶりとなる世界銀行グループの原子力発電分野への関与を再開する最初の具体的な一歩となる。
この合意は、電化に対する世界銀行グループの新たな包括的アプローチを反映するもので、エネルギーのアクセス可能性、手頃な価格、信頼性を優先し、排出量の責任ある管理を図ることを重視している。途上国においては、2035年までに電力需要が2倍以上に増加すると予想されているため、本アプローチは各国の状況、開発目標、国が決定する貢献(NDC)に最も適した道筋を示すことで、人々に必要なエネルギーを届けることを目指している。
原子力エネルギーは継続的なベースロード電源を提供し、グリッドの安定性と強靭性を高める。信頼性の高いベースロード電源は、インフラ、アグリビジネス、医療、観光、製造業といった雇用創出の重要な分野にとって不可欠である。また、原子力は高い技能を要する雇用を生み出し、広範な経済への投資を促進する。さらに、電力需要の変化に対応し、周波数調整を通じて、変動性の高い再生可能エネルギー源の統合をより柔軟に進めることが可能になる。
「工場、病院、学校、水道システムと同様に、雇用には電力が必要である。そして、需要が急増する中で、AIの進展と開発の両方において、各国が信頼できる手頃な価格の電力を供給できるように私たちは支援しなければならない。そのため、私たちは解決策の一つとして再び原子力エネルギーを選択肢に加え、途上国がその意欲的な目標を実現するために、世界銀行グループが提供できる一つの手段として活用していく。重要なのは、原子力がベースロード電源を提供するものであり、現代の経済を構築する上で不可欠であるということだ」とアジェイ・バンガ世界銀行グループ総裁は述べた。「IAEAとの今回のパートナーシップは大きな一歩であり、これを実現させたラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長の献身的な取り組みとリーダーシップに心から感謝する。私たちは共に専門知識を深め、原子力を選択する国々が、安全性、セキュリティ、持続可能性を確保しながら前進できるよう支援していく」
「本日の合意は画期的なものであり、昨年の6月にアジェイ・バンガ世界銀行総裁が私をワシントンDCの世界銀行グループの理事会に招待してくださってから1年間にわたる共同作業の成果である」とラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は述べた。「この画期的なパートナーシップは、原子力に関する現実的な姿勢への世界的な回帰を示すもう一つの兆しであり、他の国際開発金融機関や民間投資家が、原子力をエネルギー安全保障および持続可能な繁栄のための有望な選択肢として検討する道を開くものである。私たちは共に、より多くの人々がより良い未来を築くための支援ができる」
本日署名された覚書に基づき、IAEAは世界銀行グループと以下の3つの重要分野において協力を進めていく。
- 原子力分野に関連する知識の構築:世界銀行グループが、原子力の安全性、セキュリティ、保障、エネルギー計画、新技術、燃料サイクル、原子炉ライフサイクル、廃棄物管理に関する理解を深める。
- 既存の原子力発電所の寿命延長:多くの原子炉が40年間の設計寿命の終わりに近づいているため、途上国が既存の原子炉の寿命を安全に延ばすことを支援する。
- 小型モジュール炉(SMR)の推進:柔軟な導入が可能で、初期コストも低く、途上国における広範な活用が見込まれる小型モジュール炉(SMR)の開発を加速する。
現在、31カ国が原子力発電所を運営しており、世界の電力の約9%を生産している。これは世界の低炭素電力のほぼ4分の1を占める。さらに途上国を中心に、30カ国以上が原子力の導入を検討しているか、あるいはすでに取り組みを開始しており、安全で安心、かつ持続可能な方法で導入を進めるため、IAEAと連携して必要なインフラの整備を進めている。
「SMRは、クリーンで信頼性の高い電力を供給し、貧困と闘う上で大きな可能性を秘めているが、資金調達が課題となっている」とグロッシー事務局長は述べた。「本日の合意は、その道を切りひらくための重要な第一歩である」