ワシントン、2025年6月2日 — 世界銀行理事会はこのほど、スーダンのガダーレフ州、カッサラ州、北部州、ナイル川州におけるエネルギー・アクセスとデジタル接続の拡充を図る持続可能なクリーンエネルギーとデジタル接続の推進加速プロジェクト(ASCENT-Sudan)を承認した。電力アクセスとデジタル接続の深刻な不足を解消する本プロジェクトは、緊急のニーズに対応するとともに、長期的な復旧と成長の基盤を築くものとなる。東部アフリカと南部アフリカでは、2030年までにアフリカで3億人に電力アクセスを提供するというミッション300の目標達成に向け各国を支援する、地域ASCENT多相プログラムアプローチ(ASCENTプログラム)が進められており、本プログラムはそのフェーズ11である。
スーダンでは、今も続く紛争が世界最大の難民危機を引き起こしており、ASCENT-Sudanは、こうした紛争に起因する緊急課題に取り組むことを目的に設計されている。本プロジェクトは特に、一般家庭の電力アクセスを拡大し、保健医療および教育システムの拡充にも取り組む。また、再生可能エネルギー分野の雇用促進、デジタルスキル向上のためのトレーニング、電力やデジタルサービスへのアクセス改善を通じた中小企業支援を 進める。こうした的を絞った取組みは、民間セクターが果たす役割を強化し、緊急支援を提供し、地域社会が困難を乗り越え、より明るく安定した未来へと歩むことができるよう設計されている。
「本プロジェクトにより、受入れコミュニティ、避難民、帰還者、難民は電力、電話サービス、インターネット、よりきめ細かい保健、教育、水道サービスにアクセスを得られるだろう。農家や小規模事業者は、太陽光発電による灌漑や食品加工ツールの恩恵を受け、干ばつや水不足への耐性が高まる。地元の太陽光発電企業は、新たな事業案件を獲得して雇用を創出し、スキルを高めて経済成長を支えることになるだろう」と、世界銀行の石原陽一郎スーダン担当カントリーマネージャーは述べた。
ASCENT-スーダンは国際開発協会(IDA*)から総額7,630万ドルの資金提供を受け、15万人を対象に電力を供給しインターネットアクセスを強化するとともに、公共スペース、農場、通信ネットワーク、小規模事業向けに500の再生可能エネルギーシステムを設置することを目指している。プロジェクトでは、より効率的なメンテナンスと、異常気象や運用課題への耐性を備えた太陽エネルギーシステムの長期的な持続可能性の強化に向け、民間セクター主導のビジネスモデルが試験的に導入される。
本プロジェクトは、東部南部アフリカ貿易開発銀行(TDB)が受領機関かつ実施機関となる。プロジェクトは、あらかじめ選ばれた場所と技術ニーズを対象に、民間部門によるエネルギーおよびデジタルサービスの提供を奨励する成果連動型融資(RBF)メカニズムを活用する。また、ステークホルダー間でのより効果的な連携を促進する場として東南部アフリカ(COMESA)事務局が設置した地域ASCENTエネルギーアクセスプラットフォームも活用される。
本プロジェクトは、強靭性強化、必要不可欠な機関の保護、基礎的サービスの提供、民間セクター開発の支援など、危機下での支援を重視する世界銀行の脆弱性・紛争・暴力(FCV)戦略2020-2025に沿った形で実施される。ASCENT-Sudanは、進行中のほかの世界銀行プロジェクトや農業、教育、保健セクターの開発パートナーが実施する取組みを補完し活用する。
世界銀行は、スーダンの人々に寄り添い、前例のない課題に直面している状況下でのエンパワーメントと強靭性の促進に注力している。
*世界銀行の国際開発協会(IDA)は1960年に設立され、経済成長の促進、貧困の削減、貧困層の生活改善のためのプロジェクトやプログラムに対し、無利子またはごく低金利の融資(「クレジット」)と贈与(「グラント」)を提供して世界の最貧国を支援している。IDAは、世界の最貧国78カ国(うち40カ国はアフリカに分布)に最大規模の資金援助を行っている。IDAの資金は、IDA支援対象国に住む13億人の人々にプラスの変化をもたらしてきた。IDAは1960年の設立からこれまでに116カ国に5,630億ドルを提供している。近年の年間誓約額は着実に増加しており、過去3年間(22-24年度)は平均約345億ドルに達し、うち約70%がアフリカに充てられている。#IDAの取組み