プレスリリース

世界銀行:2016~18年、東アジア・太平洋地域は安定成長の見通し

2016年10月4日


脆弱性緩和のための慎重なマクロ経済管理と
持続可能な包摂的成長の中期的持続を図る政策推進を、と報告書

2016年10月4日、ワシントン — 世界銀行は本日発表した「東アジア・太平洋地域 半期経済報告」の中で、東アジア・太平洋地域の途上国の経済成長は今後3年間も引き続き堅調だろうとしている。

ただし、同地域はなおも成長を阻む深刻なリスクを抱えており、各国が金融・財政面の脆弱性を緩和するための措置を講じる必要がある。長期的には、インフラ・ギャップの解消、栄養不良の解消、金融包摂の促進を図るなど、持続的かつ包摂的な成長を阻む制約に対処するよう同報告は提唱している。

同報告は、中国の成長率は、2016年は6.7%、2017年は6.5%、2018年は6.3%と、より小幅ながらこれまでよりも持続可能な成長へと徐々に移行を続けるであろうと見ている。中国を除いた域内の成長率は、2016年は4.8%、2017年は5%、2018年は5.1%と、安定して推移するであろう。東アジア地域の途上国全体としては、2016年が5.8%、2017~18年は5.7%と予測される。

「東アジア・太平洋地域の途上国では、グローバル経済と外需の低迷を、国内の順調な消費と投資が相殺する事から、見通しは明るい。長期的な課題は、成長を持続しつつより包摂的な成長を図る事だ。そのために、所得格差の是正および行政サービスへのアクセス促進(特に中国)、インフラ改善(中国を除く域内全体)に加え、慢性的な小児栄養不良の解消、金融包摂促進のための有望なテクノロジーの活用を図るとよいだろう。」と世界銀行のビクトリア・クワクワ副総裁(東アジア・太平洋地域総局)は述べた。

同報告は、先進国の低成長、多くの途上国についての暗い見通し、世界貿易の低迷など世界的に状況が厳しい中、東アジア・太平洋地域の見通しを包括的に分析している。また、域内全域で堅調な内需が続き、なおも続く一次産品価格の低迷が一次産品輸入国に恩恵をもたらし、ほぼ全域で低いインフレ率が続くと分析している。

中国では、消費・サービス主導で、付加価値の高い活動に向けて経済のリバランスが続き、過剰生産力が削減されるに連れ、成長のペースは緩やかになると見られる。それでも、労働市場の逼迫により、所得と個人消費の伸びは引き続き拡大するだろう。

その他の経済大国の見通しとしては、フィリピンが最も堅調で今年の成長率は6.4%に加速すると見られる。ベトナムでは、深刻な干ばつが今年の成長の足かせとなるだろうが、2017年は6.3%に回復すると予想される。インドネシアは、公共投資の拡大と、投資環境改善と収益拡大の努力が実を結ぶとの前提で、2015年の4.8%から2018年は5.5%へと着実に加速すると同報告書は分析する。しかしマレーシアの成長は、原油や工業製品の輸出に対する世界全体の需要低迷のため、昨年の5%から2016年は4.2%に落ち込むだろう。

域内のより経済の小規模な国々に目を向けると、一次産品輸出国の一部で大きく成長見通しが落ち込んでいる。2015年に2.3%だったモンゴルの成長率は、鉱物の輸出低迷と債務抑制の努力が不振のため、今年はわずか0.1%にとどまる見通しである。パプアニューギニアは、銅と液化天然ガスの価格下落と生産量減少により、2015年の6.8%から2016年は2.4%に大きく減速するだろう。対照的に、カンボジア、ラオス人民民主共和国、ミャンマーは堅調な成長を続けると見られる。

「見通しは明るいとは言え、東アジア・太平洋地域の成長は大きなリスクの影響を受けかねない。急激な世界的金融引き締め、グローバル経済のさらなる成長鈍化、中国経済の想定以上の減速ペースなどが起これば、東アジア・太平洋の強靭性が試されることになるだろう。こうした不確定要素への懸念から見ても、政策担当者は近年高まってきた金融・財政面の不均衡を是正しなければならない。」と、世界銀行のスディール・シェッティ東アジア・太平洋地域総局チーフ・エコノミストは述べた。

域内の喫緊の優先課題としては、中国における企業セクターの改革推進および与信制御、その他の経済大国で見られる国内外で蓄積された金融リスクの解消、域内全体での財政黒字の維持と一次産品生産者を中心とする幅広い収益源の確保、そしてモンゴルと東ティモールの財政安定への対応が挙げられる。

同報告は、長期的に、政策によって包摂的成長を推進できる4つの分野を特定している。1つ目として、中国が、過去の貧困削減の成功を活かして、農村部住民と、今も増加を続ける都市部への移住者に対して基礎的公共サービスへのアクセス改善を図る事である。

2つ目は、域内のその他の国々の、公共支出のリバランシング、官民協力の強化、より効率的な公共投資管理によるインフラ・ギャップ解消である。

3つ目として同報告は、域内に広がる栄養不良の解消を進めるよう政策担当者に強く求めている。小児の栄養不良は高い水準で推移しており、比較的豊かな国も含め多くの国に根強く残っている。このため、将来に影響が残るような健康や認知障害を招いている。同報告は、早期幼児開発プログラムや微量栄養素プログラムなど、幅広い分野での協調的な対応を提唱している。

4つ目として同報告は、各国がテクノロジーの可能性を活用する事で、金融サービスのあり方を大きく変え、金融包摂を推進する事を提唱している。同地域は、携帯電話の普及率が高いなど、先進的なテクノロジーを取り入れているが、金融サービスへのアクセスでは後れを取っている。金融イノベーションの恩恵を享受するためには、各国が、法律・規制面の枠組みを強化し、手厚い消費者保護を図らなければならないだろう。

「東アジア・太平洋地域 半期経済報告」は、世界銀行が同地域の経済を包括的にまとめた報告です。半年に一度発表され、ウェブ上で閲覧いただけます。
http://www.worldbank.org/eapupdate


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プレスリリース番号:
2017/EAP/046

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