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要点
- ロシアによるウクライナ侵攻により、国内の中小・小規模企業は従業員の避難や施設の破壊、資金繰りの悪化に直面し、事業活動が大きく混乱
- 世界銀行グループの支援を受け、ウクライナ政府が進める「5-7-9融資プログラム」は、これまでに国内2万社以上の企業の借入コストを軽減
- プログラムに支えられて事業を継続できた企業は、合計で5万人分以上の新たな雇用を創出し、3億1,800万ドルを上回る輸出を実現
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2022年にロシアの侵攻が始まったとき、テティャーナ・ビツィは小さな会社を営んでいました。戦争終結まで会社を一旦たたまざるを得なかったのは、2度目のことでした。
テティャーナは、化粧品と家庭用化学製品をつくる会社UNIKSの共同経営者です。2001年にウクライナ東部ルハンシク州で立ち上げられたUNIKSは、2014年にロシアによる同地域の占領に伴い、閉鎖を余儀なくされました。テティャーナはもうひとりの共同経営者とともにキーウへと逃れましたが、2年後、4人の仲間で今度はマカリウでゼロから会社を再開しました。
2022年までに、33人の従業員を擁するまでに事業を拡大していましたが、侵攻が始まると、マカリウはほかのいくつかの町とともに真っ先に占領され、UNIKSの工場のフェンスのすぐ外が最前線となりました。
「従業員はみな、町を離れざるを得なくなり、生産は完全に止まってしまいました」とテティャーナは言います。
3カ月後、マカリウは解放されましたが、工場の建物は被害を受けていました。「無傷の窓は一枚も残っていませんでした。屋根は壊れ、穴があいた壁もありました」とテティャーナは振り返ります。それでも、設備機器のほとんどは無事だったといいます。「クリーム製造用の装置は機能していました。それを見て、これなら続けられる、きっと大丈夫だ、また元どおりになると思えました」
クリーム製造用装置は、テティャーナが以前、ウクライナの低金利融資制度「5-7-9融資プログラム」の融資を使って調達したものでした。プログラムは、中小・小規模企業の借入コストを軽減するための政府の取組みです。ウクライナ経済・環境・農業省が運営し、市場金利と、借り手が実際に支払う優遇金利(5%、7%、または9%)との差額を、銀行に補填するというものです。
この5-7-9融資プログラムは、戦時下のウクライナの民間セクター支援を目的に、世界銀行グループの「強靭で包摂的かつ持続可能な企業支援プログラム」の一環として資金を受けています。同企業支援プログラムの目標は、企業が事業活動を継続し、労働者が雇用を維持し、製品が世界各国に輸出されるよう支援しつつ、復興・復興、そしてEU加盟に向けた基盤づくりを進めることです。融資、改革、制度強化を組み合わせることで、すでに17億ドルの民間資本を呼び込み、約2万1,000社の中小企業を支え、5万人分を超える雇用を創出・維持し、3億1,800万ドルの輸出を実現してきました。
UNIKSが5-7-9融資プログラムを通じて受け取った38万5,000ドルの資金は、運転資金に充てられたほか、2024年には50リットルのクリーム製造用装置と梱包機の新たな調達資金として役立てられました。
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Promo-Texの躍進
レーシャ・マリュータが2011年に創業したPromo-Texは当初、作業用の手袋やシンプルな衣類の縫製を手がけていました。いまでは、企業向け・販促用・作業用の衣類に特化し、銀行、薬局、小売店、ガソリンスタンド、配送会社など、ウクライナで数多くの大企業に製品を納めるまでになっています。
2022年に侵攻が始まると、従業員の多くが同社所在地のキーウ州を離れていきました。女性の割合が多かったPromo-Texの従業員154人のうち、残ったのはわずか54人でした。
「戦争が始まった頃、私たちはまるで取り残されたブリキの兵隊のようでした。仕事はなく、あるのは恐怖と、麻痺したような感覚ばかりでした。この先どうやって生計を立てればいいのか、見当もつきませんでした」とレーシャは振り返ります。
資金繰りは、たちまち悪化しました。仕入先が代金の全額前払いを求める一方で、顧客の側は支払いを先延ばしにしていったからです。手元の資金が底をつきかけたとき、レーシャが銀行に相談すると、勧められたのが5-7-9融資プログラムを通じた融資でした。そこで1,300万フリヴニャ(約29万5,000ドル)を借り入れて仕入先への支払いを期日までに済ませ、回収できた資金は、マリウポリやハルキウなどウクライナ東部の町から逃れてきた国内避難民で新しく従業員となった人たちの給与や研修に充てました。
5-7-9融資プログラムに加えて、政府はPromo-Texに、設備を刷新するための補助金も提供しました。これが新たな働き手を呼び込み、生産性を押し上げることになりました。
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ウクライナの民間セクターに対するインパクト
10億ドル規模のパートナーシップである「強靭で包摂的かつ持続可能な企業支援プログラム」は、2024年と2025年、それぞれに割り当てられた資金のうち97%を拠出しました。同プログラムの内訳は、日本が支援する「ADVANCEウクライナ信託基金」から7億ドル、世界銀行の「ウクライナ・モルドバ復興特別プログラム(SPUR)」から3億ドル、「ウクライナ復旧・復興支援基金 (URTF)」から1,000万ドルです。
強靭で包摂的かつ持続可能な企業支援プログラムは融資と政策改革、制度強化を組み合わせ、中小企業支援プログラムの効率向上、ビジネス環境の整備と政府から企業へのデジタルサービス拡大、企業による輸出市場アクセスの支援に力を注いでいます。同プログラムは、資金拠出を、効果が実証された改革や成果に直接連動させることで、説明責任を果たしながら、大きな成果を着実に生み出しています。紛争の影響を受ける脆弱な状況下でも目に見える成果を上げられることを示すとともに、危機に直面する国々で民間セクターを支援するうえで、他にも応用できるモデル例となっています。
2025年度末までに達成された主な成果
- 割り当てられた資金の97%を、成果に連動する形で拠出済み
- 17億ドルの民間資本を動員。うち20%は、女性が経営する中小企業に提供
- 「強靭で包摂的かつ持続可能な企業支援プログラム」の企業支援を通じて2万1,746社を支援。
- 同プログラム下で支援を受けた企業が5万222人分の雇用を新たに創出
- 同プログラム下で支援を受けた企業が3億1,800万ドルの輸出を実現
- Diia.Business 2.0プラットフォームを立ち上げ、50万回以上のアクセス数と9万件の中小企業アカウントを獲得。政府と企業のやり取りを簡素化
- 3,000社の中小企業を、各社の状況に合わせた助言サービスで支援
- 戦争リスクへの備えを含む、新たな輸出信用機関戦略を採択
- 輸出志向の中小企業プロジェクト10件を支援
- ウクライナの国家開発機関が環境・社会・ガバナンス(ESG)政策を採択
- ESGの枠組みを導入した銀行は20行以上にのぼり、「5-7-9融資プログラム」の90%をカバー
関連項目
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