特集2026年2月13日

Growth Academy Tokyo:アジアにおける生産性主導型成長に向けた改革の明確な優先課題とは

The World Bank

開会の辞を述べるGrowth Academy共同ディレクターのウフク・アクチギット シカゴ大学アーノルド・C・ハーバーガー経済学教授。 

「古い権力構造の上に新たな産業を築くことはできません」とGrowth Academy のウフク・アクシギト共同ディレクターは述べました。「大半の国では、まず何に取り組むべきかという優先順位が明確であり、提言された政策が体系的に実行される必要があります」

これは東京でのGrowth Academyの方向性を決めたメッセージです。

2日間にわたった同プログラムには、アジア12カ国から、政策担当者、研究者、実務家兼研究者等35名が登壇しました。その目標はシンプルで、アジア諸国がいかにして持続的な生産性主導型の成長を実現できるかを議論することでした。

世界銀行グループとベッカー・フリードマン経済研究所の共同主催により実現したGrowth Academyは、経済研究を現実世界での政策立案と結びつける取組みです。東京会合での議論は、「世界開発報告2024:中所得国の罠」をもとに進められ、各国がいかにして成長の鈍化を回避し高所得国へと前進できるかが検討されました。

一様でないアジアの成長

アジアにおける成長がたったひとつの道すじをたどっているわけではないとする点で、登壇者の見解は一致しています。各国はそれぞれ異なる課題に直面しています。 急速な高齢化が進行中の国もあれば、なおも新産業を育成中の国もあり、制度的能力も国ごとに大きく異なっています。

産業政策、強固な金融制度、グローバルバリューチェーンへの参画等、日本の戦後経済成長、が、重要な参照事例として取り上げられました。しかし同時に、日本の経験をそのまま適用できるものではないと登壇者らは警告しています。今日の政策は、現代の国際環境と各国固有の状況を踏まえたものでなければなりません。

「日本の高度経済成長期は、すでにかなり昔の話です。現在の新たな先進国と途上国は、グローバル化の力、そして世界経済を積極的に活用することが極めて重要です」

 

The World Bank

Growth Academy Tokyoで講演する木村福成アジア経済研究所所長

中所得国の罠:相互に関連する一連の課題

中心的なテーマとなったのは中所得国の罠です。ただし、単一のソリューションがある単一の問題として扱われたわけではありません。そうではなく、相互に関連する一連の課題であると登壇者らは説明しています。

マクロ経済の安定は必要条件ですが、それだけでは不十分です。成長は、企業がインセンティブにいかに反応するか、市場がどのように資源を配分するか、制度がいかに革新と競争を支えるか次第です。

再配分による生産性向上

当日の議論で重点的に取り上げられたのは、経済の中での資源の動きです。資本や人材がより生産性の高い企業へと移動することで、生産性は向上します。

ウフク・アクチギット ディレクターは次のように説明しました。

「経済における資源再配分とは、最も生産性の高い個人や企業へ資源を移すことを意味します。そうすることで経済全体の生産性が向上します。毎年、より生産性の低いところから高いところへと資源の移動を繰り返す必要があります」

Growth Academyの参加者は、このプロセスを慎重に管理することが規制当局の役割であるとする点で一致しました。安定した老舗企業には刷新が必要です。同時に、パフォーマンスの低い企業に資源が固定化されていてはなりません。

技術、人材、エネルギー

さらに、技術の導入、人材配分、エネルギー効率についても議論が行われました。繰り返し取り上げられたテーマは「順序付け」の必要性です。成長目標を達成するために、各国は適切な順序で改革を実施する必要があります。一つの改革を次の改革へとつなげていくわけです。

エネルギー効率に関するパネルディスカッションは、インダーミット・ギル世界銀行グループチーフエコノミストが進行役を務め、中所得国には手頃な価格で安定供給されるエネルギーが必要である一方、それを賢明に活用しなければならないと強く促しました。

「これらの国々は、まずエネルギー効率の改善に取り組むべきです」

東京でのプログラムにおけるメッセージは一貫しています。成長は偶然に起こるものではなく、明確な優先順位、着実な改革、そして生産的な企業を支える制度が必要だということです。時代遅れの制度の上に新たな産業を築くことはできません。まずは基盤を刷新する必要があるのです。

The World Bank
Indermit Gill, Chief Economist of the World Bank Group, speaking on a panel at the Growth Academy in Tokyo.

Growth Academy Tokyoで明確になった点

本イベントから得られた主なポイントは以下のとおりです。

  • 成長は多面的:技術、人材、エネルギーのいずれか一つだけでは持続的進展は実現できない。制度、市場、企業、人材への協調的な取組みが不可欠である
  • 状況に合わせた戦略:日本を含め、過去の事例は教訓を提供してくれるが、設計図ではない。政策は各国の人口動態、制度、経済構造に合わせて設計されて初めて成功する。
  • 成長エンジンとしての企業:生産性主導型の成長は、競争、革新、継続的な企業刷新にかかっている。効率的な企業が規模を拡大し、非効率な企業が退出または変革できるような政策が必要である。
  • 人材が解き放つ技術:技術の導入と創出には、それを活用し発展させる人材が不可欠である。そのため、人材配分は副次的な問題ではなく、生産性政策の要である。
  • エネルギーのインプットは生産性向上に必須:効率的で競争力のある持続可能なエネルギーシステムは、単なる環境目標ではなく、長期的成長の基盤である。

成長と生産性に関する地域的知識拠点としての日本

Growth Academy Tokyoでは、日本がエビデンスにもとづく政策立案において、地域のリーダー的存在としての役割を果たすようになってきていることも強調されました。日本は、グローバルな研究とアジアの多様な開発課題とを結びつけることで、状況に応じた政策協働の新しいモデルづくりに貢献しています。

本会合の主な参加者と成果は以下のとおりです。

  • アジア12カ国から35人の高位政策担当者と研究者が参加:地域における経済成長の分野で、地理的にも制度的にも極めて多様性の高い会合となった。
  • アジアの現実に生かされた最先端の研究:「世界開発報告2024」で取り上げられた「中所得国の罠」に関する洞察をもとに、アジア向けの政策助言が導かれ、グローバルな知見が地域の課題と可能性に当てはめる形で示された。
  • 地域を超えた組織の一体化:世界および地域の主要な機関が共通の成長アジェンダの下に結集し、画一的なモデルではなく、アジアが地域としてのソリューションを共同で生み出す機能を強化した。
  • 22の研究・政策機関が自国の経験を共有:共通の課題と生産性主導型の成長に向けたそれぞれの道すじを特定できた。
  • 世界各国からオンラインで230名以上と会場で110名が2日間にわたり参加し、Growth Academyの影響を東京をはるかに超えて広げ、生産性主導型の成長のための国際的な知識プラットフォームとしての役割を確かなものにした。

 

Growth Academy Tokyoの詳細については、以下をご覧ください。 
https://www.worldbank.org/en/events/2025/12/15/the-growth-academy-tokyo

>>>>1日目の写真をもっと見る : Growth Academy Tokyo: Clear Reform Priorities for Productivity-Led Growth in Asia

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