要点:
- 日本社会開発基金(JSDF)は2025年で設立25周年
- JSDFは、2000年以来、地域社会と直接協働し、90か国以上で約800件のプロジェクトに資金を提供し、数百万人の人々の暮らしと生計を改善
- 2024年には、日本政府と共同で、業務効率の向上とインパクト拡大を目指しグラント承認手続きを簡素化
- 2025年1月、日本政府と世界銀行は年次協議にて、25年にわたる地域社会主導の取組み支援を省察
2025年、日本社会開発基金(JSDF)は設立25周年を迎えました。同基金は、日本政府と世界銀行のパートナーシップのもと、1990年代後半の東アジア金融危機がもたらした社会的・経済的影響を緩和することを目的に設立されました。設立後ほどなくして、支援対象を途上国の最も脆弱な人々へと広げ、革新的な草の根活動に対し、グラントという形で直接資金を提供しています。2000年以来、JSDFは90か国以上で約800件のプロジェクトに資金を提供し、数千万人の人々の生活向上に貢献しています。
「我々は人々の生活を向上させ、危機に見舞われた人々を助けたいと考えました。そして、困難なときにこそ人々が強靭性を発揮できるように、状況を変える力になりたかったのです。」
―日本財務省 藤井大輔 副財務官
地球規模の様々な危機が世界中の脆弱な地域社会を脅かす今日、設立当時の我々の志は25年を経た今もなお、強い意義を持ち続けています。
コミュニティを中心に
JSDFは設立以来、開発支援のための資金提供に革新的なアプローチを採用してきました。多くの世界銀行のプロジェクトが主に中央政府との連携で進められるのに対し、JSDFは小規模な地域社会プロジェクトに直接グラントを提供するという独自の手法を用いています。
「我々の目標は、最も脆弱な地域社会の中で、特に貧しい人々に直接インパクトをもたらすことでした。地域社会主導の開発をプログラムに組み込むアプローチが重要だと考えたのです。」
ーアリフ・ズルフィカール元信託基金・協調融資局長(JSDF創立メンバー)
今日に至るまで、JSDFが資金提供する取組みは現地で設計・実施されることが多く、地域社会がプロセスの全段階で主体的に主導することが可能です。
JSDFプロジェクトは、現地のパートナーと直接連携することで、地域特有の課題への対応が可能です。例えば、アルメニアでは、ソーシャルワーカー協会とのパートナーシップにより、取り残されていた人々が社会サービスに簡単にアクセスできるようになりました。キルギス共和国では、JSDFが農村開発財団を通じて活動し、脆弱な若者が自営業を立ち上げられるよう支援しました。ベトナムでは、JSDFが現地の非政府組織(NGO)と連携することで、草の根レベルでのパンデミックへの備えを強化しています。最後に、インドでは、現地の非政府組織(NGO)と連携して、インフォーマルセクターの女性のデジタル金融包摂を強化しました。
社会的包摂の強化に向けて
JSDFは、社会から取り残された人々を支援し、誰一人取り残さない開発支援を実現する上で重要な役割を果たしています。ホンジュラスでは、現地のNGOが運営するプロジェクトが、先住民族と連携して、農業、漁業、畜産における地域社会の社会経済活動を支援し、世帯収入を増やしました。カンボジアでは、縫製工場で働く低所得者への保育サービスの提供を支援しました。ソロモン諸島では、JSDFグラントにより、大規模なインフラプロジェクトの恩恵を地域社会と共有する仕組みを試験的に導入しました。
JSDFの特徴の一つに、現地のイノベーションと柔軟性を重視している点があります。
「JSDFプロジェクトは柔軟で適応性に富んでいます。将来を見越した設計であることから、我々の開発ソリューションはより大規模なプロジェクトで採用されることが少なくありません。地域社会主導の革新的なプロジェクトを重視している点が、25年経った今でもJSDFをほかに類をみない、今日的意味合いのある持続可能なプログラムにしています。」
―マイトレイ・ボルディア・ダス 世界銀行開発金融総局 信託基金・パートナーシップ局長」
変化を取り込み、インパクトを拡大
2024年、JSDFは日本政府と協力し、グラント承認プロセスの簡素化と効率性向上を図りました。この取組みは、より迅速で効果的な組織となるために世界銀行が進めている改革と歩調を合わせたものです。JSDFはまた、成果重視の姿勢も強化しています。2024年には、プロジェクト指標を世界銀行グループのコーポレートスコアカードと整合性を持たせるため、結果フレームワークを更新しました。これにより、成果のより適切なマッピング、追跡、比較が可能になり、より効果的で反応性の高い支援設計につながっています。
設立25周年を迎えたJSDFは今後も、効果が実証された地域社会主導型の開発モデルを活用し、世界の連帯に対する日本のコミットメントを基盤に、地域社会が強靱性を高め、今日的課題に応える開発ソリューションを試験的に実施できるよう支援を続けていきます。