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特集 2020年2月3日

第23回防災セミナー 世界銀行ナレッジノートシリーズ「日本における統合都市洪水リスク管理」の出版 日本の都市水害対策の教訓を途上国へ

2020年2月3日
東京

世界的にみて、自然災害の中でも洪水は最も発生率が高く、経済的・人的被害をもたらします。1998年から2017年の間には6,000億米ドルを超える経済的損害、20億人以上への影響と約142,000人の死者を出しました。特に、洪水リスクが高い都市部で人口が急増している途上国では、急速な都市化と気候変動によって状況が悪化し、洪水がもたらす社会的・経済的被害や損失が増加する可能性があります。こうした状況は、多くの国にとって深刻な開発課題であり、貧困削減や富の共有に向けた取り組みへの脅威となります。洪水が人や経済に与える影響への対処として、世界銀行は世界中のさまざまな国や都市に対し技術支援、助言サービス、および財政支援を提供しています。

日本でも、気候や災害の危険性、地形、都市開発と経済発展の影響により、都市部では洪水のリスクが高くなっています。東京、大阪、名古屋など大都市の多くはリスクの高い低地にあり、アスファルトの舗装道路や密集するコンクリートの建物によって地表面に浸透できる雨水量が減少し、局地的な豪雨にも脆弱になっています。ミュンヘン再保険(Munich Reinsurance Company、Munich Re)によると、日本は2019年に大型台風「ハギビス」と「ファクサイ」合わせて年間最大の損害(260億米ドル)を出し、2年連続で熱帯低気圧による記録的損害を受けました。日本の都市はこのような深刻な洪水リスクに直面しながら、モニタリングと洪水リスク軽減のための投資評価を実施し、過去の大災害から学ぶことにより、引き続き包括的な取り組みを通して洪水に対する強靭性を強化・刷新しています。統合都市洪水リスク管理の取り組みでは、洪水のあらゆる原因に焦点を当て、構造的および非構造的なリスク管理策を、ステークホルダーの目標や環境状況に応じてバランス良く組み合わせています。多種多様な洪水リスクを管理することで得られた日本の経験や教訓は、統合都市洪水リスク管理の導入や推進を望む諸外国にとって特に知見共有のための機会を提供しており、「日本における統合都市洪水リスク管理」ナレッジノートシリーズでは、日本の統合都市洪水リスク管理の取り組みから学んだ重要な教訓をまとめました。

世界銀行ナレッジノートシリーズの出版を記念し、第23回防災セミナー「日本における統合都市洪水リスク管理」が、都市洪水コミュニティーオブ・プラクティス(UFCOP)および東京防災(DRM)ハブの主催により世界銀行東京開発ラーニングセンターで2月3日に開催されました。ナレッジノート作成に貢献した日本の専門家の方々に多数ご出席いただき、本セミナーでは、都市洪水リスクの近年の傾向および都市部での洪水に対する強靱性強化に特有の課題や機会を理解し、日本の内外で統合都市洪水リスク管理の取り組みを実施したことで得られた経験と教訓を紹介。この経験をどのように開発途上国の強靱性強化に活用するかを議論する貴重な機会となりました。

最初に、世界銀行のの宮崎成人駐日特別代表が歓迎の言葉を述べ、続いて財務省国際局開発機関課長の米山泰揚氏が開会の挨拶を行いました。米山氏は、ナレッジノートには日本の都市洪水リスク管理の概要が包括的にまとめられていることを注目点として挙げ、さらにナレッジノート1について言及しながら洪水リスクへの理解と評価の重要性を訴え、これらが目的に見合った洪水リスク管理計画の設計、および良質な投資設計において極めて重要な第一歩となるとしました。

開会の挨拶に続いて3つの基調講演が行われ、国土交通省水管理・国土保全局国際河川技術調整官の古本一司氏、東京大学東京大学大学院工学系研究科教授の古米弘明氏、および世界銀行主席防災専門官兼東アジア・太平洋担当災害リスク管理調整官のヨランタ・クリスピン・ワトソン氏が登壇しました。

この基調講演では国土交通省(MLIT)古本技術調整官より、2019年10月の台風第19号「ハギビス」によって直面した最新の課題と、この台風に対して実施された対策について説明がありました。古本氏は、洪水に対する強靱性を強化する河川計画と都市計画に気候変動リスクを統合することの重要性、および洪水リスク軽減策の実施における官民連携の重要性について言及しました。

古米教授は、都市部での洪水に関する特有のリスクと傾向について概要を述べ、さらに都市が直面する多様な洪水リスクや、都市開発と構造的および非構造的なリスク管理への投資とのバランスを保つ必要性を強調しました。また同教授は、様々なステークホルダーを巻き込むことで洪水に対する強靱性強化への重要な機会が得られると実例を挙げて説明し、東京都庁の統合都市洪水リスク管理の取り組みを紹介しました。この東京都の統合都市洪水リスク管理では、様々な部門とステークホルダーが各々の取り組みを自らの責任範囲内で実施しながらも、洪水リスク管理目標を共有・連携しています。

クリスピン・ワトソン氏は基調講演の中で、4編のナレッジノートシリーズで強調された重要な教訓とベストプラクティス、および世界銀行が支援する進行中のプロジェクトへの適用方法、さらに都市部の洪水に対する強靱性強化の取り組みとして、ヤンゴン(ミャンマー)やマニラ(フィリピン)、イバダン(ナイジェリア)、バンガロール(インド)、サイ郡(ラオス)、タラワ(キリバス)の事例を紹介しました。ナレッジノートによって、援助受入国が得た実践的かつ重要な見識が提供されていると同氏は強調、特に次の点を挙げました。1)洪水管理の分析と実施を連携させ、優先順位付けのプロセスをよりエビデンスに基づいたものにする、2)都市部の洪水強靱性強化に向けた投資の設計・実施において、多様かつ独自の役割を考察する様々なステークホルダーを参加させる、3)インフラ投資の実施とともに政策と制度面での能力を向上する。

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基調講演を行う古本氏(左)、古米教授(中央)、クリスピン・ワトソン氏(右)

基調講演に続いてパネルディスカッションが実施され、日本の内外で都市部の洪水強靱性構築に従事した日本の実務担当者が参加しました。パネリストは、国土交通省関東地方整備局河川部広域水管理官の早川潤氏、東京大学客員教授兼JICAアドバイザーの石渡幹夫氏、八千代エンジニヤリング株式会社事業統括本部海外事業部水資源部水資源・防災課専門課長の豊田高士氏。

パネルディスカッションでは、日本やインドネシア、フィリピンの都市部における洪水強靱性の経験をもとに、最近の変化と傾向を含めた都市洪水リスクの課題について、また開発途上国の各都市が洪水強靱性強化に取り組む際に活用し得る日本の教訓・取り組みについて意見交換がなされ、主に次のような点が取り上げられました:(i)気候変動によって洪水リスクは急速に増加・多様化しているため、都市開発の戦略と投資に洪水リスクを統合させることの必要性、(ii)洪水リスクの基礎データと分析は、リスク軽減やエビデンスに基づいた計画・投資設計・優先順位付けにおいて極めて重要であるが、このような要素は多くの国で度々みられるもので、日本の経験と技術面の連携が価値を有し得ること、(iii)都市部の洪水はもはや「技術面の問題」ではなく、より統合的で多様な解決策が求められ、これらを実施するにはリスク評価・計画・投資設計、および運用と保守におけるステークホルダーの参加と連携が極めて重要である。日本から得られる教訓は、官民と地域社会の連携で実施された多目的なグリーンインフラの推進など、開発途上国に知見とインスピレーションを提供できるものです。

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(左から)パネルディスカッションの司会進行役竹本氏、統合都市洪水リスク管理の課題と機会について議論する早川氏、石渡氏、豊田氏

世界銀行のUFCOPおよび東京防災ハブは、ナレッジノートに反映されている通り、日本が得た知見と教訓が他国に適用されるよう後押しすること、さらには知見の共有と発信を通じ、様々な援助受入国において都市の洪水強靱性対策を設計・実施する実務担当者の支援を目指しています。



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