世界銀行の各地域担当チーフエコノミスト室は、毎年春と秋の2回、各地域の経済概況と展望をまとめた地域経済報告書を発表しています。このうち、ヨーロッパ・中央アジア地域については2024年10月17日、「ヨーロッパ・中央アジア地域経済報告2024年10月秋版―より力強い成長に向けた教育の向上」(Europe and Central Asia Economic Update, Fall 2024 – Better Education for Stronger Growth)を発表しました。
同地域の途上国の経済成長は、一連の危機の後、安定しつつも、2000年代初頭を大きく下回る水準にある、と同報告書では指摘しています。同地域の成長率は、2023年の3.5%から今年は3.3%に鈍化し、2025年にはさらに2.6%へと減速するとみられます。これは、2000~09年の平均成長率である5.1%を大幅に下回る水準であり、域内の中所得国が一世代か二世代の間に高所得国の仲間入りを果たすという強い目標を達成するために必要な水準を満たしていません。インフレ率の低下により、一部の中央銀行では今年、政策金利引下げへの機運が高まっています。ただし、持続的な物価圧力が懸念される中、政策面で慎重な姿勢が広がっています。同報告書は、経済成長を再び活性化し、高所得国との収斂促進に必要な人材を確保するためには、地域全体での教育制度、特に高等教育の大幅な見直しが必要だとしています。
今回のモーニングセミナー(第200回)では、同報告書をとりまとめたチームのイヴァン・トーレ 世界銀行ヨーロッパ・中央アジア地域担当チーフエコノミスト室上級エコノミストと、セルギー・カシヤネンコ 世界銀行 ヨーロッパ・中央アジア地域担当チーフエコノミスト室エコノミストが、同報告書の主なポイントを日本の皆様に向けてオンラインでご紹介しました。
スピーカー
イヴァン・トーレ
世界銀行 ヨーロッパ・中央アジア地域担当チーフエコノミスト室 上級エコノミスト
2016年、世界銀行入行。それ以前は、米州開発銀行コンサルタント、ハーバード大学経済学研究科客員研究員。パリ政治学院(Sciences-Po)で経済学博士号、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで経済学修士号を取得。
セルギー・カシヤネンコ
世界銀行 ヨーロッパ・中央アジア地域担当チーフエコノミスト室エコノミスト
発表資料
Better Education for Stronger Growth - Europe and Central Asia Economic Update Fall 2024(英語、PDF)