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特集2022年11月4日

人事が語る~グローバルキャリア構築のための処方箋~ ブログシリーズ 第16回 世界銀行グループ 今後の採用動向 (戸崎智支 HRビジネスパートナー)

世界銀行グループでは、優秀な日本人の採用を積極的に行っており、2010年以降ほぼ毎年リクルートメントミッションを日本に派遣し、これまでに多く人材の採用に成功してきました。今月は、今年7月に新たに就任したディアリエトゥ・ゲイ人事担当副総裁が人事・採用担当チームを率いて来日し、様々なキャリアセミナーが開催されています。

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世界経済は、目下の複数の危機によって負の影響を受け続けています。そのような状況の中、クライアントである途上国を始め、世界銀行グループ職員による活躍への期待は高まる一方であり、最近纏められた3か年要員需給計画によれば、今後も採用ニーズは旺盛であると予想されています。

今回は、そのような国際開発情勢に対応すべく人事戦略、最新の採用動向、そして日本人候補者として世界銀行グループへの転職を実現するための準備について考察させていただきます。

現在の人事優先課題

ディアリエトゥ・ゲイ人事担当副総裁の紹介プロフィールにもあるように、人事総局ではまず、パンデミック後の新たな業務形態への転換が最優先課題となっており、これは、新たなスキル、そして課題解決能力を兼ね備えた日本人にとって活躍の場がより広がる機会であることを意味しています。2番目の優先課題として、世界銀行グループの世界各地における活動拠点の強化と脆弱・紛争・暴力(FCV)状況での業務確立が挙げられます。オペレーションや人事配置の現地化が進み、現在ワシントンDCをベースにするポストもますます地域拠点や現地事務所への移転が進むことが見込まれています。ここ数年の日本人リクルートメントミッションやその他採用プログラムでもこの傾向は続いており、東京事務所の採用プログラムページでも現地事務所の空席等を紹介させていただきました。こうした現地化ポストの空席に途上国勤務経験者を中心に毎回多数の応募があり、改めて日本人における開発人材の層の厚さを裏付ける格好になっています。そして第3の課題として、世界銀行グループ職員の健康維持促進・良好な職場環境の維持改善に向け、幹部のアカウンタビリティ強化、多様性・平等・包摂性アジェンダ促進(ダイバーシティ&インクルージョン)が掲げられています。具体的な取り組みとして、メンタルヘルス・タスクフォース、職場文化タスクフォース、反人種主義タスクフォースによる各種提言の実行が挙げられます。これらの取り組みは、世界銀行グループがより魅力的な職場であり続けるために必須であり、実現した暁には、求職者にとって、より魅力的な職場環境が提供されることを意味しています。

The World Bank
ディアリエトゥ・ゲイ
世界銀行グループ 人事担当副総裁

2022年7月着任。人事担当副総裁として、1)パンデミック後の新たな業務形態への転換、2)世界銀行グループの世界各地における活動拠点の強化と脆弱・紛争・暴力(FCV)状況での業務確立、3)健康的な職員・職場環境の実現に向け、幹部のアカウンタビリティ強化、多様性・平等・包摂性アジェンダ促進、メンタルヘルス・タスクフォース、職場文化タスクフォース、反人種主義タスクフォームによる提言の実行支援、の3点を統括。現職前は、副総裁兼世界銀行グループ官房長として、世界銀行グループのガバナンス枠組みのインテグリティ確立、総務会・理事会・幹部の間の効果的なやり取りと対話の主導、出資国間のコンセンサス構築の促進、理事会・幹部および関係者へのサポート提供を担当。開発に対して情熱を注ぐプロフェッショナルとして、エコノミストおよび様々な管理職の立場で25年以上の経験を有する。アフリカ地域総局戦略・業務担当局長として、多くの課題に直面する国々の開発と政策改革に従事。セネガル経済財務省に勤務した後、1996年、上級エコノミストとして世界銀行入行。ケニア・ルワンダ・エリトリア・ウガンダ担当局長、スリランカ・モルディブ担当局長、ベニン・トーゴ担当マネージャーを歴任。2007年から2010年まで、アフリカ開発銀行にて東アフリカ諸国担当地域局長。

(ディアリエトゥ・ゲイ人事担当副総裁の紹介プロフィール:東京事務所採用ウエブサイトから抜粋)

今後の採用動向

今回の日本人リクルートメントミッションは、日本とのパートナーシップの促進、日本人専門家の世界銀行グループでの活躍を通して日本の知見を各種分野に反映するというこれまで通りに目的と同時に、上記のような人事戦略や優先課題の達成に向けた具体的活動の一環としての意味合いもあります。そうした目的を達成するために、今回の日本人リクルートメントミッションでは新たな取り組みを取り入れています。その一つがタレントプール制度の創設です。

新たなスキル、そして課題解決能力を兼ね備えた人材の発掘という優先事項に鑑み、特定の専門分野に限定せずに、ビジネスニーズに応じて広く人材を募集する試みです。例えば、世界各地における活動拠点の強化と脆弱・紛争・暴力(FCV)状況での業務確立のためには、途上国の現場経験がある各種国際開発分野の専門家が必要になってきます。また第3の優先事項で述べたような組織内部の施策の実現には開発専門家のみならず、人事、法務、知識管理、監査などの管理部門の専門家の活躍も不可欠であり、こうした専門分野を通じて世界銀行グループで勤務する機会も増えてくるものと思われます。

このように、より広範な領域から、様々な専門家の求人が増えることが見込まれるので、現在空席になっているポストがご自身の専門と合わないような場合でも、こうしたタレントプールの制度を活用していただけると幸いです。なお、ご提出いただいた情報をもとに、ご紹介できるポジションが応募可能になった際にご案内するという流れになっています。

世界銀行については、ビズリーチ社のポータルを活用し10月24日までキャリア登録が可能になっていました。今後も同様の取り組みを定期的に実施し登録期間を設ける予定ですので、次回の応募準備の参考情報として今回の要件を記しておきます。

【必須要件】

  • 海外勤務可能
  • 英語で交渉、議論、プレゼンができる

 

【求める人物像】

  • 高度なコミュニケーション能力を持ち、政策分析・対話能力に長けている
  • 強い知的好奇心と優れた戦略的思考・行動力を有する
  • 強いリーダーシップを発揮しながら、チームワークを大切にした働き方ができる
  • 柔軟性を持ち、多様性を受け入れた仕事を行える
  • 専門性とトランスファラブルスキル(応用可能、どこでも使える、例:統計学)の両方を持っている

 

【その他】

  • フランス語、スペイン語、途上国での勤務経験は尚可 ・商社、メーカー、コンサルティング、金融、エンジニア、アカデミア(研究者)出身の日本人も活躍中 ・多くのポストは修士号(国内・海外大問わず)が必要

一方IFCでは、前回同様、TOR(空席)を元にした選考も実施されており、ワシントンDCを始め、世界各地の事務所ポストで現在選考が進められています。加えて、タレントプール制度も並行して実施しており、11月6日現在で複数のポスト群で登録可能となっています。詳しくはこちらのリンクを御覧ください。いずれも、ポジションにご応募いただいた方々は、IFCの候補者リストに登録、今後6カ月以内に随時、採用のためのご連絡をさせていただく予定です。
 

世界銀行グループへの転職を実現するために今できること

今月は世界銀行グループとして、ゲイ人事担当副総裁を始め、世界銀行・IFC両サイドから人事幹部や採用スタッフが来日し様々なワークショップやキャリアセミナーが開催される予定です。昨年まではオンライン開催が中心でしたが、今回は対面形式またはヴァーチャル併用形式で実施されるイベントも多く、ミッション団も人事副総裁、局長級に加え、数名の採用担当者が訪日し実用的な情報提供や、より職員目線に近いところで意見交換ができるのではと期待しております。よって近い将来世界銀行グループへの転職を検討されている方は、こういったセミナーにぜひ参加されることをお勧めします。

代表的なものとしては、11月15日にキャリアセミナー「世界銀行グループで働く」が世界銀行東京事務所で実施されます。こちらはハイブリッド(会場参加またはオンライン参加)で、遠方の方にもご参加いただけます。会場での参加者の方には、パネル・質疑応答終了後、その場でスピーカーと直接話すことができるネットワーキングのための時間を設けます。IFC主催の各種イベントのうち、ハイライトは、期間中数日にわたって行われる日本人現役職員によるリレー形式のキャリアトークです。また、11月10日(木)実施の「Linkedinプロフィールの改良方法」で、ルディ・マレーニョIFC人事部人事オフィサーが採用担当者を惹きつけるLinkedinプロフィールの書き方について、直々に伝授します。第14回の人事ブログ記事でデジタル・ネットワーキング~英語での情報発信のすすめと称して紹介させていただいたLinkedinの有用性についてもこちらのワークショップで議論される予定ですので、ご関心のある方はぜひ参加をご検討ください。なお、IFCの各種イベントについては、詳細や登録はIFCリクルートミッションのサイトをご覧ください。

*お知らせ

2020年から2年半にわたってワシントンDC本部人事総局で活躍する人事担当者が、採用動向と応募準備の心得や世銀の職場としての魅力をタイムリーに情報発信させていただいてきましたが、今回が当コーナーの最終回となります。長らくのご購読ありがとうございました。採用情報は引き続き東京事務所サイト内「採用情報」などで提供させていただきます。


筆者略歴

The World Bank
戸崎智支 人事総局 HRビジネスパートナー
Satoshi Tozaki, HR Business Partner

早稲田大学政治経済学部卒業後、鉄道会社、外資系会社勤務。その後アジア経済研究所開発スクール(IDEAS)を経て、コーネル大学にて産業労働関係学修士号を取得。多国籍企業の人事マネージャーとして北アメリカ、東南アジア、日本法人等で勤務後、2014年に国連に移り、国連人口基金(UNFPA)ニューヨーク本部人事戦略および分析担当官を歴任。2016年に採用担当官として世銀に移籍。金融、保健、環境、およびインフラ関連の専門家、エコノミストの採用を担当。2018年よりHRビジネスパートナーとしてクライアントサービスチームに異動。日本人リクルートミッション事務局運営担当も歴任。世界銀行グループにおける様々なグローバル人事・ダイバーシティイニチアチブに携わる。

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