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2017年11月26日

世界銀行が仙台で開催された世界防災フォーラムに参加:災害に強いインフラ構築のための防災の主流化および災害リスクファイナンスに関するAPEC財務大臣プロセスの支援について語る

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オープニングセレモニーで防災対策の強化における世界銀行の役割について講演する宮崎成人氏


世界の国・自治体政府、研究者、民間セクター、国際組織、市民社会団体の関係者900人以上が2017年11月26~28日、仙台で開催された「世界防災フォーラム/防災ダボス会議」に集結しました。この会議は、スイスの防災ダボス会議(IDRC)との連携により隔年で開催される、世界防災フォーラムの1回目となります。

Bosai(防災)」は、「災害(sai: 災)」を「未然に防ぐ(bo:防)」ことを表す文字から成る日本語の単語です。しかし実際には、日本では「防災」の概念はもっと広いものとして広範囲に応用されており、災害リスク管理(DRM)の基本として単なる「災害予防」を超えた災害リスク軽減、事前の災害対策、発災後の緊急対応にまで及ぶ包括的な取り組みが行われています。

仙台は「防災」の重要性を広める活動において世界的なリーダーシップを発揮してきました。2011年の東日本大震災と津波による被害から目覚ましい復興を遂げた都市として、防災に関する国際協力と知識交換を促進する上でも大きな貢献を果たしています。また、2015年には第3回国連防災世界会議(WCDRR)が仙台で開催され、「仙台防災枠組 2015-2030」(仙台枠組)が採択されました。さらに仙台はさまざまな関係者と共に、日本と世界の関係者を集め、防災に関する知識と経験を共有する機会を作るべく活動を進めています。仙台において隔年での開催が予定されている世界防災フォーラムは、日本と世界における防災への取り組みを進め、こうした動きを主導するという、仙台の活動の上に実現したものです。

世界銀行(WB)はフォーラムで日本の主な防災関係者と共に討論を行い、世界銀行の活動の中での、ならびに災害リスクファイナンス(DRF)に関するアジア太平洋経済協力(APEC)財務大臣プロセスの支援を通じた「防災」の主流化に向けた共同の取り組みを紹介しました。

世界防災フォーラム オープニングセレモニー

宮崎成人世界銀行駐日特別代表は11月26日日曜日に行われた世界防災フォーラムのオープニングセレモニーに出席しました。セレモニーでは、1万5,000人以上が犠牲になり、未だに多くの人が行方不明のままとなっている2011年3月の大震災で被害を受けた地域の子どもたちと青少年が、マグニチュード9.0の地震と津波から得た教訓について語りました。岩手県の大槌高校の生徒は、定点観測写真撮影を通じて大槌町の復興の足取りを記録する活動について説明しました。

宮崎氏は、世界銀行のプロジェクトにおける仙台枠組の実践方法、災害リスク情報をオープンな情報として途上国が利用できるよう理解しやすく有益なものとするための分析と調査への投資、災害に強い交通インフラ災害に強い学校づくりに関するテーマ別の革新的なイニシアチブを通じた投資促進による災害リスク削減の取り組みの拡大に関する、世界銀行の活動を取り上げました。

持続可能な開発に向けた防災への事前投資に関するJICAセッション

ヨランタ・クリスピン・ワトソン世界銀行アジア太平洋地域担当主席防災専門官は「持続可能な開発に向けた防災への事前投資」と題した国際協力機構(JICA)主催のパネル討論会に参加しました。セッションの目的は、パネリストの経験を紹介し、世界各国における防災への投資拡大のために国、地域、地方レベルで応用できる実際的な解決策について討論を行うことです。クリスピン・ワトソン氏はフィリピン、エルサルバドル、モンゴルの政府高官と共に、世界銀行が政府に対して行なっている防災の主流化における広範囲にわたる支援を紹介しました。世界銀行は災害に強く質の高いインフラへの投資を支援し、またこうしたハード面への投資を、実行可能な政策環境の構築、ガバナンス能力の強化、関係者の意識向上、包摂的な計画立案と実施の促進などソフト面から補完することの重要性を強調しました。

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写真:防災への投資拡大に向けた解決策に関するパネル討論会に参加したヨランタ・クリスピン・ワトソン氏

強靭なインフラに関する世界銀行東京防災ハブセッション

世界銀行東京防災ハブはセッション「防災の主流化に向けて:強靭なインフラと持続可能な開発」を主催しました。このセッションを通じて、フランシス・ゲスキエール世界銀行防災グローバル・ファシリティ事務局長、ヨランタ・クリスピン・ワトソン世界銀行主席防災専門官、村上清 陸前高田市参与は、インフラの強靭化において防災の主流化が重要である理由、およびこれまでの取り組みでのベストプラクティスと学んだ教訓について討論を行ないました。

討論会においてゲスキエール氏は現在、世界銀行は途上国の災害に対する強靭化の支援に年間50億米ドル以上を投じていると指摘しました。インフラの強靭化の一環として、世界銀行のより安全な学校のためのグローバルプログラムは研究者、市民社会団体、開発関係者と幅広く協力し、何百万人もの生徒のために、より安全な学習環境を構築し、教育サービスの中断を最小限に抑える取り組みを進めています。またゲスキエール氏は、世界銀行が東アジアと太平洋地域、および南アジアにおいて、ダムの安全性と災害に対する強靭化のベストプラクティスの向上、ならびに道路鉄道を含む他の質が高く災害に強いインフラへの投資拡大について、日本政府と緊密に協力していることを強調しました。

さらにクリスピン・ワトソン氏は東アジアと太平洋地域での金融の回復力の強化、複合災害評価の実施、域内における建築規制枠組の強化を行うために世界銀行が推進した具体的な取り組みなど、域内インフラ投資における災害と気候変動に対する強靭性の主流化の主な課題と機会について、自身の携わる世銀の投資案件からの経験を語りました。

村上氏は2人の発言に加えて、大きな被害を与えた2011年の東日本大震災と津波に対する陸前高田市の災害対応と被害からの復興について説明しました。発言の中で村上氏は、国と地方政府の異なる役割と、災害発生後の緊急の社会的支援における相互の協力体制の大切さを訴えました。災害対応から得た教訓は今、将来の災害に備える防災対策として陸前高田市の基本計画に盛り込まれています。 

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写真:セッションのパネリスト(左から) - ゲスキエール氏(世界銀行)、クリスピン・ワトソン氏(世界銀行)、村上氏(陸前高田市参与)

セッションでは世界銀行と日本の共同による取り組みを紹介し、日本-世界銀行防災共同プログラムと東京防災ハブを通じた資金・技術面での支援により、インフラ投資の強靭化を進める世界の途上国を支える活動に今後も力を入れていくことを表明しました。

APEC関連セッション:「アジア太平洋地域における災害に負けない社会づくり~科学と保険の力」

世界銀行災害リスクファイナンス・保険プログラム(DRFIP)上級金融セクター専門官の濵田秀明氏は、太平洋自然災害リスク評価および資金援助イニシアチブ(PCRAFI)東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF)など、近年世界銀行が支援を行っている、地域レベルでの自然災害リスク保険プールの構築に関する取り組みを紹介しました。「アジア太平洋地域における災害に負けない社会づくり~ 科学と保険の力」と題されたこのセッションは東京海上日動火災保険、アジア太平洋金融フォーラム(APFF)、東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)の共催により行われました。

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写真:セッションパネリスト(左から) - 濵田氏(世界銀行)、藤井氏(財務省)、今村博士(東北大学災害科学国際研究所)、パレーニャス博士(アジア太平洋金融フォーラム、みずほ銀行)、長村氏(東京海上日動火災保険) (写真クレジット:東京海上日動火災保険)

濵田氏は、科学的データに基づくリスク評価ツールを活用したパラメータモデルによって裏付けを行う、各地域での自然災害リスクプールなど、災害リスクファイナンス手段の構築と実行によるソブリンリスクの管理において、世界銀行が支援を行っている太平洋・東南アジアでの活動事例を用いて、視点や経験を共有しました。

東北大学災害科学国際研究所長で世界防災フォーラム実行委員長の今村文彦博士は基調講演において、2011年の東日本大震災および津波を受けて開発された津波予測の最新技術について発表を行いました。財務省国際局調査課長の藤井大輔氏は、災害前の包括的な防災対策による、災害に対する強靭性の構築の重要性を強調しました。その例として、日本の地震保険会社が行なっている耐震住宅への地震保険料の優遇制度や、東日本大震災後の被害からの速やかな復旧に対する地震保険会社の貢献などを紹介しました。アジア太平洋金融フォーラム・コーディネーターのジュリアス・シーザー・パレーニャス博士は、先ごろフィリピンで実施した画期的なプログラムを紹介しながら、災害リスクファイナンス・保険のリスク・レイヤー手法について説明しました。東京海上日動火災保険CSR室長の長村政明氏は、災害リスクの軽減など、災害後の保険金支払いにとどまらない民間保険会社が担えるさまざまな役割について述べました。

セッションの終わりには、パネリストが世界の地域社会に向けて次の4つの行動を呼びかける提言が採択されました。

  1. 科学的で実践的な知識と、受け継がれてきた経験を最大限に活用し、災害に強い地域社会の構築を目指して、災害リスクに対する市民の関心を高める
  2. 官民学連携により、効果的な災害リスク管理システムの開発と災害に強い地域社会作りを推進する
  3. 独創的で持続可能な災害リスクファイナンス・保険メカニズム(DRFI)の策定に、科学的で実践的な知識と経験を生かすよう奨励する
  4. セブ行動計画で立てた目標を達成するために、多様な関係者を関与させるプラットフォームとしてアジア太平洋金融フォーラム(APFF)のサポートを得ながら、アジア太平洋経済協力(APEC)財務大臣プロセス(FMP)で、災害リスクファイナンス・保険に関する討論を活発にし、また持続可能な開発目標や仙台防災枠組 2015-2030などの関連する世界的イニシアチブに貢献する

このセッションの成果は、日本の財務省やアジア太平洋経済協力(APEC)での災害リスクファイナンス・保険の民間セクターと世界銀行との現在進行中の連携に基き、これらの連携に貢献するため、非常に重要かつ時宜にかなったものとなりました。自然災害リスクが高いことを考慮すると、災害に対する包括的な金融リスク管理を進めることは、APEC加盟国の財務省に共通する喫緊の課題です。フィリピンと日本が共同で議長を務める災害リスクファイナンス・保険APEC作業部会は2018年に、社会的保護体制を通じた災害対応に向け国内災害リスク保険プログラムと資金援助の仕組みへの国家的制度の導入方法を模索する研究会の設立を計画しています。世界銀行災害リスクファイナンス・保険プログラムと東京防災ハブの支援の下、日本の東京などAPEC加盟国の都市で、研究会の開催が見込まれています。

世界銀行グループの災害リスクファイナンス・保険プログラムについて

災害リスクファイナンス・保険プログラム(DRFIP)は災害や気候変動の影響による支出の高騰に取り組む途上国を支援します。DRFIPは気候変動と災害リスクに対する包括的な金融保護戦略の策定と実行を支援するために、世界の50か国以上に分析・助言サービス、介入サービス、金融サービスを提供しています。こちらをクリックして、災害リスクファイナンスの紹介動画をご覧ください。詳しい情報については、https://www.worldbank.org/drfiをご覧ください。

日本-世界銀行防災共同プログラムと東京防災ハブについて

日本政府と世界銀行が2014年に設立した日本-世界銀行防災共同プログラムは、仙台レポートに記されたDRM枠組みの4つの重点項目に従い、技術援助、パイロット事業、テーマ別のイニシアチブ、知見の普及、能力整備の支援を行っています。プログラムは世界銀行防災グローバルファシリティ(GFDRR)による管理の下、東京防災ハブが運営しています。

日本の世界的リーダーとしての役割を紹介する東京防災ハブ活動の例には、自然災害からの文化遺産の保護東京や日本の多くの都市で顕著に見られる地震リスクの軽減対策の拡大、あらゆる関係者が理解し実行できる、包括的な防災対策の徹底などがあります。



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