2014年5月22日、東京　－　日本貿易振興機構（ジェトロ）と世界銀行は、途上国・新興国を中心とする世界のインフラ開発への需要がますます増大する中、質の高いインフラ投資に向け、投資環境をどのように整備していくのか紹介するセミナーを開催しました。

冒頭、開会挨拶として、ジェトロ宮本聡副理事長から、途上国や新興国では産業の基盤となるインフラ整備がいまだ立ち遅れている中、先進国の役割が重要であり、優れた技術力、環境配慮などの点で、日本企業による貢献の可能性を強調しました。また、ジェトロとして、対象国のインフラ・プロジェクトをまとめたインフラマップの作成、現地のインフラ･コーディネーターによる個別支援など、日本企業に向けた支援ツールを紹介しました。世界銀行の塚越保祐駐日特別代表からは、世界銀行グループが掲げる貧困撲滅と繁栄の共有という2つの目標のもと、昨年度の世界銀行のインフラ支援実績が融資承認総額の37パーセントを占める最大事業分野であることを概説しました。

基調講演を行った世界銀行グループのスリ・ムリヤニ・インドラワティ専務理事兼最高執行責任者（COO）は、途上国と新興国が持続的経済成長を確保するためには、インフラ投資を拡大する必要があり、民間投資が不可欠であると説明しました。また、インフラにおける官民セクターの連携のために、世界銀行のグループ機関で民間セクターを支援する国際金融公社（IFC）と、民間企業に政治リスク保証を提供する多数国間投資保証機関（MIGA）を有効な手段として挙げ、開発融資、民間セクター支援、リスク保険を盛り込んだ、状況を一変させるようなプロジェクトの例として、ミャンマーの例を挙げました。

大阪商業大学総合経営学部の美原融教授は、官民連携が有効になるという政策的認識は共有されているが、実際の案件形成は容易ではなく、制度と実務が整合し、実務をサポートするツールがあることが必須であると説明しました。また、日本の高い技術水準、ライフサイクル・コストの優位性などを強みとして挙げ、日本にとってPPPは大きなチャンスであると強調しました。

官民連携の個別事例紹介では、株式会社三井住友銀行のラジーブ・カナンプロジェクトファイナンス営業部長から、インドネシア・インフラストラクチャー・ファイナンス社に関して、三井住友銀行の資本参加と同社の業務について説明、三菱商事株式会社の小畑耕一新エネルギー・電力事業本部アジア・大洋州電力事業部部長代理から、メキシコの民間発電案件としてのトゥクスパン発電プロジェクトの成功理由とメキシコ電力投資事情、北九州市上下水道局の田中文彦海外事業・下水道担当理事から、民間企業と共同で展開するカンボジア、ベトナム、インドネシアの国際技術協力を紹介しました。

質疑応答では、200名を超えるご参加者との間で活発な議論が交わされました。今回のセミナーが、今後のインフラ開発、官民連携の促進に繋がることが期待されます。

プログラム・当日の資料

開会挨拶

宮本聡 ジェトロ副理事長
塚越保祐 世界銀行駐日特別代表

基調講演

スリ・ムリヤニ・インドラワティ 世界銀行グループ専務理事/最高執行責任者（COO）
「インフラを通じた貧困撲滅と繁栄の共有－民間セクターが果たせる役割とは？」 
スピーチ

講演

美原融 大阪商業大学総合経営学部 教授
「PPP: インフラ開発の効果的ツール～日本の可能性とチャレンジ～」
発表資料 (PDF, 1.2MB)

プレゼンテーション（個別ケース紹介）

ラジーブ・カナン 株式会社三井住友銀行 プロジェクトファイナンス営業部長
「インドネシア政府系金融会社・インドネシア インフラストラクチャー ファイナンスとの資本・業務提携」
発表資料 (PDF, 1.3MB)

小畑耕一 三菱商事株式会社 新エネルギー・電力事業本部アジア・大洋州電力事業部 部長代理
「トゥクスパン発電プロジェクト（メキシコ民間発電事業）」
発表資料 (PDF, 669KB) 

田中文彦 北九州市 上下水道局 海外事業・下水道担当理事
「北九州市の海外水ビジネス展開」
発表資料 (PDF, 2.1MB)

質疑応答

進行： 山田安秀 ジェトロ機械・環境産業部長